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第四章 西からの迷い人
75 少食のくま 成人
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「広末、いいもの持ってきてあげたわよー!」
着物から普段着に着替えた赤璃さまが、夕食時間に突入してきた。厨房に入っていくのが見える。
「また、連絡なしで食べに来たんじゃないでしょうね?」
広末が非難の声を上げても、赤璃さまのご機嫌な声は止まらない。
「違うの。広末が味見したいかなあって思って、持ってきてあげたの。」
「へええ。じゃ、夕食はお城で食べられるんですね?」
「あ、それはここで食べるけど。」
「じゃ、何が違うんすか?」
「違うのよ、今日は本当にいいものなの。」
「ちゃんと三人前持ってきたからね。」
「朱実殿下まで?なんすか、この大荷物は?」
厨房が楽しそうなので、様子を見に行く。
使用人が抱えてきた大きなバッグの中身を、どんどん厨房の机に並べているところだった。
あ、披露宴の料理だ。
「焼き海老!」
「あ、なる。やーん、可愛い。どうしたの、その服。私のあげたぬいぐるみの兄弟みたいよ。」
赤璃さまが、がばっと俺に抱きついた。んー、ちょっとだけお酒臭いよ?
抱きつかれて脱げたパーカーの帽子を、赤璃さまがまた被せてくる。俺は今、くまなのだ。がおー。
「これはまた、可愛い服だね。」
朱実殿下も、いつもより、にこにこだね。ほんの少しお酒の匂いがする。
「さっきもらった。生松がお城で預かってきてくれたんだって。」
「似合ってるよ。」
ふふっ。そう?
乙羽にも見せに行かなきゃ。
そう言えば、と静かになった広末を見れば、嬉しそうに並んだご馳走を眺めている。村次も真剣だ。
「でね、広末。今夜二人分の夕食が欲しいんだけど。」
「うっ、くっ……。ど、どうぞ食べてってください……。」
「俺、壱臣さん、呼んできますね。」
「おう、頼む。」
赤璃さまが俺に抱きついたままお願いしてる。広末は悔しそうに頷いた。
「で?なる坊は焼き海老が好きだったのか?」
うん。
もちろん茶碗蒸しも。
どれを食べた?と聞かれて、指を差していく。やっぱりすごい量だ。
だって俺、まだお腹いっぱいだもん。
「夕食、どんくらいなら食えるんだよ?」
デザートを冷蔵庫に入れながら広末に聞かれる。
「え?あの、いらな……。」
「食わないのは無しな。」
「…………。」
むう。
これは困ったぞ。
「じゃ、私たちは食堂にいるね。赤璃、おいで。」
朱実殿下は、俺から赤璃さまを引き剥がすと、行ってしまった。いつの間にか、ご馳走を運んだ使用人たちはいなくなっている。
困った俺が広末と見つめあってると、今日はのんびり休んでた壱臣が、村次に呼ばれてやって来て、うわあ、と並んだ料理に歓喜の声を上げた。
着物から普段着に着替えた赤璃さまが、夕食時間に突入してきた。厨房に入っていくのが見える。
「また、連絡なしで食べに来たんじゃないでしょうね?」
広末が非難の声を上げても、赤璃さまのご機嫌な声は止まらない。
「違うの。広末が味見したいかなあって思って、持ってきてあげたの。」
「へええ。じゃ、夕食はお城で食べられるんですね?」
「あ、それはここで食べるけど。」
「じゃ、何が違うんすか?」
「違うのよ、今日は本当にいいものなの。」
「ちゃんと三人前持ってきたからね。」
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厨房が楽しそうなので、様子を見に行く。
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あ、披露宴の料理だ。
「焼き海老!」
「あ、なる。やーん、可愛い。どうしたの、その服。私のあげたぬいぐるみの兄弟みたいよ。」
赤璃さまが、がばっと俺に抱きついた。んー、ちょっとだけお酒臭いよ?
抱きつかれて脱げたパーカーの帽子を、赤璃さまがまた被せてくる。俺は今、くまなのだ。がおー。
「これはまた、可愛い服だね。」
朱実殿下も、いつもより、にこにこだね。ほんの少しお酒の匂いがする。
「さっきもらった。生松がお城で預かってきてくれたんだって。」
「似合ってるよ。」
ふふっ。そう?
乙羽にも見せに行かなきゃ。
そう言えば、と静かになった広末を見れば、嬉しそうに並んだご馳走を眺めている。村次も真剣だ。
「でね、広末。今夜二人分の夕食が欲しいんだけど。」
「うっ、くっ……。ど、どうぞ食べてってください……。」
「俺、壱臣さん、呼んできますね。」
「おう、頼む。」
赤璃さまが俺に抱きついたままお願いしてる。広末は悔しそうに頷いた。
「で?なる坊は焼き海老が好きだったのか?」
うん。
もちろん茶碗蒸しも。
どれを食べた?と聞かれて、指を差していく。やっぱりすごい量だ。
だって俺、まだお腹いっぱいだもん。
「夕食、どんくらいなら食えるんだよ?」
デザートを冷蔵庫に入れながら広末に聞かれる。
「え?あの、いらな……。」
「食わないのは無しな。」
「…………。」
むう。
これは困ったぞ。
「じゃ、私たちは食堂にいるね。赤璃、おいで。」
朱実殿下は、俺から赤璃さまを引き剥がすと、行ってしまった。いつの間にか、ご馳走を運んだ使用人たちはいなくなっている。
困った俺が広末と見つめあってると、今日はのんびり休んでた壱臣が、村次に呼ばれてやって来て、うわあ、と並んだ料理に歓喜の声を上げた。
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