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第四章 西からの迷い人
69 御前会議 4 赤璃
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「は?」
間抜けな三条当主の顔。
六条の跡取りが隣の五条当主の方を向くと、臣籍降下した赤虎の身柄を引き受けて養父となった男は、当然と言うように頷いた。
「そもそもうちの……いや、失礼、陛下。」
「何を言う。赤虎はもう、そなたの息子でもある。何の遠慮もいらぬ。折角のめでたい宴のあとにすまぬな。疲れておろう。」
「いえ。準備は色々ありましたが、今はもう、安堵の気持ちで一杯です。良き伴侶に恵まれました。」
そう言うと、隣の寧子ちゃんの兄に笑いかける。五条と六条は、この度の婚姻を通してとても良い関係を築けているようだ。
「すべては、三条と縁を繋げたくないための緋色殿下の狂言だろう?それが、皇家の思惑と一致していたから、城ぐるみでお遊びに付き合っておるのだ。」
「それは、どのようなことからそうお思いで?」
そう三条当主に尋ねた四条も、今日は跡取りの長男が出席している。四条家は、長男が三十歳になったら代替わりするつもりとのことだったから、そろそろ代替わりだろう。今日は五条の跡取りとなった赤虎の結婚式だから、どの家も次代の交流を重視して同じ年代の者が出席していた。属国も、西の各地の領主も次期当主を送ってきている者が多い。
だから、晩餐会も朱実と私が主催で招待したのだ。
国全体としての代替わりは近い。本来なら、三条も跡取り息子を出席させて、同世代の者と顔を合わせ会話を交わす機会を与えてやれば、後々、息子の財産となったことだろう。
「ど、どのような、だと?」
三条当主の視線の先では、なるが机の上の水を飲もうと手を伸ばすのを抱き止めて、緋色がコップを掴んでなるの右手に持たせている。なるは一口飲んで緋色に返して、ぬるい、と言った。
くくっと緋色が笑う。
これにするか?と言いながらコップの横にあった湯呑みの蓋を外して、一口飲む。冷めてるぞ、と渡すとそれでもなるは、ふーふーと息をかけてから飲んだ。
温かいお茶が冷めてるんなら、やっぱりぬるいんじゃない?と思うと笑えてくる。
お茶はそれでいいらしく、こくこくと二口ほど飲んだ。
ふと視線が集まっていることに気付いて、びっくりと目を見開く。
「あ、えと、何?」
「気にすんな。」
「俺、お話聞いてなかった。」
「いいんじゃないか。ここから聞いておけば。」
「うん。でも、トイレ。」
ぶはっ、と緋色だけじゃなく、温かく見守っていた人々からも笑いが上がる。
くすくす笑いながら、当たり前のようになるを抱き上げて緋色が立ち上がった。
「トイレ、連れて行ってくる。」
二人が部屋を出ると、すっかり和んだ空気の中で陛下が聞いた。
「して、三条。あれが狂言であるか。」
披露宴の時にも、他の誰より近くで二人の食事風景を見ていた筈だ。
各家独自の情報網で、情報も集めている筈だ。
だからこそ六条は、緋色殿下の伴侶が成人さまであることは、城の者も城下の者も知っていますよ?と三条に伝えた。六条の家で集めた情報に基づいて。
あの二人は、何も遠慮しない。どこでも二人で仲良くしているし、城下でデートもする。
普通に情報を集めていれば、分かることだ。
なるが纏う赤の意味も。
いつだって、三条に情報は届いている。
ただ彼が、自分の知りたい言葉しか聞かず、自分の都合の良いようにしか解釈しないだけ。
間抜けな三条当主の顔。
六条の跡取りが隣の五条当主の方を向くと、臣籍降下した赤虎の身柄を引き受けて養父となった男は、当然と言うように頷いた。
「そもそもうちの……いや、失礼、陛下。」
「何を言う。赤虎はもう、そなたの息子でもある。何の遠慮もいらぬ。折角のめでたい宴のあとにすまぬな。疲れておろう。」
「いえ。準備は色々ありましたが、今はもう、安堵の気持ちで一杯です。良き伴侶に恵まれました。」
そう言うと、隣の寧子ちゃんの兄に笑いかける。五条と六条は、この度の婚姻を通してとても良い関係を築けているようだ。
「すべては、三条と縁を繋げたくないための緋色殿下の狂言だろう?それが、皇家の思惑と一致していたから、城ぐるみでお遊びに付き合っておるのだ。」
「それは、どのようなことからそうお思いで?」
そう三条当主に尋ねた四条も、今日は跡取りの長男が出席している。四条家は、長男が三十歳になったら代替わりするつもりとのことだったから、そろそろ代替わりだろう。今日は五条の跡取りとなった赤虎の結婚式だから、どの家も次代の交流を重視して同じ年代の者が出席していた。属国も、西の各地の領主も次期当主を送ってきている者が多い。
だから、晩餐会も朱実と私が主催で招待したのだ。
国全体としての代替わりは近い。本来なら、三条も跡取り息子を出席させて、同世代の者と顔を合わせ会話を交わす機会を与えてやれば、後々、息子の財産となったことだろう。
「ど、どのような、だと?」
三条当主の視線の先では、なるが机の上の水を飲もうと手を伸ばすのを抱き止めて、緋色がコップを掴んでなるの右手に持たせている。なるは一口飲んで緋色に返して、ぬるい、と言った。
くくっと緋色が笑う。
これにするか?と言いながらコップの横にあった湯呑みの蓋を外して、一口飲む。冷めてるぞ、と渡すとそれでもなるは、ふーふーと息をかけてから飲んだ。
温かいお茶が冷めてるんなら、やっぱりぬるいんじゃない?と思うと笑えてくる。
お茶はそれでいいらしく、こくこくと二口ほど飲んだ。
ふと視線が集まっていることに気付いて、びっくりと目を見開く。
「あ、えと、何?」
「気にすんな。」
「俺、お話聞いてなかった。」
「いいんじゃないか。ここから聞いておけば。」
「うん。でも、トイレ。」
ぶはっ、と緋色だけじゃなく、温かく見守っていた人々からも笑いが上がる。
くすくす笑いながら、当たり前のようになるを抱き上げて緋色が立ち上がった。
「トイレ、連れて行ってくる。」
二人が部屋を出ると、すっかり和んだ空気の中で陛下が聞いた。
「して、三条。あれが狂言であるか。」
披露宴の時にも、他の誰より近くで二人の食事風景を見ていた筈だ。
各家独自の情報網で、情報も集めている筈だ。
だからこそ六条は、緋色殿下の伴侶が成人さまであることは、城の者も城下の者も知っていますよ?と三条に伝えた。六条の家で集めた情報に基づいて。
あの二人は、何も遠慮しない。どこでも二人で仲良くしているし、城下でデートもする。
普通に情報を集めていれば、分かることだ。
なるが纏う赤の意味も。
いつだって、三条に情報は届いている。
ただ彼が、自分の知りたい言葉しか聞かず、自分の都合の良いようにしか解釈しないだけ。
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