【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

54 巣立ち 3  力丸

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「ひ、一二三ひふみさん?何を言うてるの?」
「デパート、で、騒ぎを起こしたんですか?あんなに人がたくさんおる場所で?」
「違う。壊したんは相手側や。」

 言ったな。
 兄上と緋色ひいろ殿下から、殺気が流れ始めた。おお、二人同時はやめてくれ。弐角にかくさまと才蔵さいぞうが、細かく震え出したじゃないか。

「壊したのは相手側。何故、それをご存知で?」
「知らん。言いがかりや。」
「母上。」
一二三ひふみさん。全てはあなたの為。さえおらんかったら、跡取りはあなただけ。出ていったくらいで安心できるわけないやろ。城で仕止めれんかったんは母の不手際や。せやから、ちゃんと……。」
「ずっと?城でも、出てからも、ずっと?」

 女の声に重なった一二三ひふみさまの声が震えた。
 才蔵さいぞうの手に力がこもる。おおっと、いかん。
 後ろから抱え込んで、銃を持つ手を掴んだ。

「撃つな。下ろしていい。」
「あ、ああ……。」

 指が強張って動かせないらしい。よく頑張ったな。
 緋椀ひまりさまと三雲みくもさんが縄を持ってきて、護衛の二人を手早く縛り上げ、女と一二三ひふみさまの側についた。
 才蔵さいぞうが、はっはっ、と浅い呼吸を繰り返している。自分で離せなくなったらしい銃から、指をそっと外していく。

「言質は取った。もう大丈夫。」
「は、はひ。」

 へたり込んだ才蔵さいぞう弐角にかく。そして。

「デパートの修理に関してのお金は、確かにこちらで支払うべきもののようです。心よりお詫び申し上げ、速やかに支払えるように致します。」

 一二三ひふみさまが平伏し、震える声のまま、謝罪の言葉を口にした。

「その上で、しかるべき処罰を、お受け致します。」
一二三ひふみさん!」
「母上。私のためだと言うなら、謝罪を。まずは、きちんと謝罪をしてください。」
「謝らなあかんようなことはしてない。」
「…………っ。」

 一二三ひふみさまは、女の言葉に絶句し、肩を震わせる。
 
「人を傷付けたらいけない。人を殺してもいけないんだよ。」

 アイスクリームを食べ終えた成人なるひとの声が、緊張した室内に、のんびりと響いた。
 ほんの少し前まで、成人なるひとが知らなかったこと。
 
「それをしたから、謝らないといけない。」
  
 ふ、と部屋の中の空気が軽くなる。

壱臣いちおみ半助はんすけに謝って。もうしないと、誓って。」
 
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