【完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

31 ちょうどいい服  成人

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「というわけで、買い物に行くぞ。」

 三雲と緋椀ひまりの服を借りて、壱臣いちおみ半助はんすけに着せた。離宮の使用人の制服で買い物に行くのはおかしいからね。そのまま、服を貸してくれた二人も護衛で連れ出す。常陸丸ひたちまる緋色ひいろの護衛。俺もお買い物したいから一緒に行く!
 このメンバーで買い物は不安だからと水瀬みなせが言うので、乙羽おとわも一緒に行くことになった。
 楽しそう!
 俺は急なお出かけにわくわくしてる。お出かけ用のパーカーを着てバッグをぶら下げてお金を入れて。
 そう言えば、俺のお洋服ってお部屋にたくさん置いてあるね。
 前は吉野よしのが左袖の長い所を切って縫って、邪魔にならないようにしてくれていたけど、最近は始めから、左袖がちょうどいい長さで作ってある。どの服の大きさもいつもぴったり。気持ちのいい肌触りで、ズボンも片手でトイレに行きやすいゴムのウエスト。そう、全部片手で使いやすい服になっている。
 ここに来た頃は、どんな服もゆるかったけど、最近はちょうどいいんだよね!

「俺、大きくなったのか!」
「どこが?」

 自分の服を見ながら呟いたら、隣で着替えていた緋色ひいろが言う。

「全部。お洋服ちょうどよくなった。」
「それは、お前のサイズで作らせているからちょうどいいんだ。」

 作らせてる?
 緋色ひいろを見上げて首を傾げていると、いつもと違って赤色のあまり入ってないティーシャツを着てから、俺のと似たグレーのパーカーを羽織っていく。袖の先に小さく赤い線で模様がある。

「俺たちの服は、城で作ってもらってんの。サイズを測ってちょうどいいように。勝手に届くから、服のこと考えたこと無かったな。仕事着は支給してたが、パンツは盲点だ。」

 緋色ひいろは今日も格好いい。長い足に黒い長ズボンが似合って、パーカーも仕事の時の服と違って見えるから好き。
 俺は、脱ぎ着しやすいように膝丈の、幅にちょっと余裕を持たせたズボンが多い。そういえば、仕事の時の制服も俺のだけズボンが短かったかも。
 何だか初めて気付いてびっくりした。皆と一緒のつもりだったのに。
 でも、トイレに行きにくくなるのは困るからあきらめよう。パーカーは一緒だし。
 よし、と緋色ひいろの方をまた見たら、目が合ってけらけら笑われた。

「なに?」
「いや、何でもない。結論は出たみたいだな。」
「うん。緋色ひいろは格好いい。」

 そんな話だったか?って言われながら外に出て、皆で車に乗り込んだ。
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