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第四章 西からの迷い人
11 商店街デート 成人
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商店街は楽しい。だし巻き玉子が商店街から無くなっても、お店はまだまだたくさんあって、人は大勢行き交っている。
今日は緋色と二人でお出かけ。好き同士のお出かけはデートだから、これは俺たちのデート。
「デート、ねえ。」
緋色は何故かため息を吐いているけど、八百屋さんの前に居すぎた?
野菜と果物を売る店は八百屋さん、と言うらしい。俺の一番のお気に入り。買い物する訳じゃないから、少し離れてこっそり眺めてる。でも、今日は緋色もいるから、いつもより回りの人に見られているかも。仕方ないか。緋色は格好いいからね。
魚屋さんも好き。
いつも食べてる魚の元の形が分かって面白い。水槽の中でまだ生きてる魚もいて、いつまででも見ていられる。あんまり近寄ると、いらっしゃい、と大きな声で言われてしまうから、少し離れて見てるけど、本当はもう少し近くで見たいなあ。
たこって、形が面白すぎるよね。じっくり見たくて、一度自分のお金で買って帰った。商店街で初めての買い物はたこ。
部屋でゆっくり見ようとしたら皆に止められて、台所に場所を借りた。見れば見るほど面白い生き物だった。べたべた触ってたら、手が何だか臭くなった。
たこは、どんな料理にしてもらっても俺には固くて食べられなかった。残念。
肉屋さんもすごい。
売り物の肉が並べてある後ろに店員さんがいて、その後ろに豚や牛が吊るされているのだ。鶏はかごの中で、生きてばたばたと羽を動かしている。血の匂いが、懐かしかった。
「ここのコロッケ、美味しいよ。」
「熱いだろ?」
揚げたてのコロッケは、確かにすごく熱いので、俺はいつも持って帰ってから食べる。力丸と村次はすぐに食べちゃうけどね。
緋色は、商店街に来たことは無かったから、俺が色々と教えてあげて楽しかった。
もう壱臣の店は無いのに、足は自然とそちらへ向いていた。空っぽの店の前に、人が座り込んでいる。三角座りしてうつむくその顔は、真っ白だった。
行き交う人々は、心配そうにしながらも足早に通り過ぎていく。
「成人。勝手に近寄るな。」
俺がその人に近寄ろうとすると、緋色に抱き止められる。一緒ならいい?と聞くと、しぶしぶ一緒に来てくれた。
「どうしたの?」
その人は俺の声にこちらを向いた。服の右腕の部分が不自然に揺れる。右の袖の中に腕が無かった。汚れて、疲れはてていた。
「人を、探してて……。」
掠れた声が絞り出されたけど、ぐらぐらと頭が揺れ出す。そのまま、ゆっくりと倒れていった。最後に聞こえたのは、臣……という切ない呟きだった。
今日は緋色と二人でお出かけ。好き同士のお出かけはデートだから、これは俺たちのデート。
「デート、ねえ。」
緋色は何故かため息を吐いているけど、八百屋さんの前に居すぎた?
野菜と果物を売る店は八百屋さん、と言うらしい。俺の一番のお気に入り。買い物する訳じゃないから、少し離れてこっそり眺めてる。でも、今日は緋色もいるから、いつもより回りの人に見られているかも。仕方ないか。緋色は格好いいからね。
魚屋さんも好き。
いつも食べてる魚の元の形が分かって面白い。水槽の中でまだ生きてる魚もいて、いつまででも見ていられる。あんまり近寄ると、いらっしゃい、と大きな声で言われてしまうから、少し離れて見てるけど、本当はもう少し近くで見たいなあ。
たこって、形が面白すぎるよね。じっくり見たくて、一度自分のお金で買って帰った。商店街で初めての買い物はたこ。
部屋でゆっくり見ようとしたら皆に止められて、台所に場所を借りた。見れば見るほど面白い生き物だった。べたべた触ってたら、手が何だか臭くなった。
たこは、どんな料理にしてもらっても俺には固くて食べられなかった。残念。
肉屋さんもすごい。
売り物の肉が並べてある後ろに店員さんがいて、その後ろに豚や牛が吊るされているのだ。鶏はかごの中で、生きてばたばたと羽を動かしている。血の匂いが、懐かしかった。
「ここのコロッケ、美味しいよ。」
「熱いだろ?」
揚げたてのコロッケは、確かにすごく熱いので、俺はいつも持って帰ってから食べる。力丸と村次はすぐに食べちゃうけどね。
緋色は、商店街に来たことは無かったから、俺が色々と教えてあげて楽しかった。
もう壱臣の店は無いのに、足は自然とそちらへ向いていた。空っぽの店の前に、人が座り込んでいる。三角座りしてうつむくその顔は、真っ白だった。
行き交う人々は、心配そうにしながらも足早に通り過ぎていく。
「成人。勝手に近寄るな。」
俺がその人に近寄ろうとすると、緋色に抱き止められる。一緒ならいい?と聞くと、しぶしぶ一緒に来てくれた。
「どうしたの?」
その人は俺の声にこちらを向いた。服の右腕の部分が不自然に揺れる。右の袖の中に腕が無かった。汚れて、疲れはてていた。
「人を、探してて……。」
掠れた声が絞り出されたけど、ぐらぐらと頭が揺れ出す。そのまま、ゆっくりと倒れていった。最後に聞こえたのは、臣……という切ない呟きだった。
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