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第四章 西からの迷い人
7 村次は料理人 成人
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「坊っちゃん方は、この味付けが大丈夫なんですね。」
もりもりと食べている俺たちを見て、店員さんがぽつりとこぼす。
「とても美味しいです。」
村次が答えて、俺と力丸がうんうんと頷く。
良かった、と呟いた店員さんの目に涙が滲んで、びっくりとそちらを見た。
「すみません。……なかなか客が来なくて、来ても料理を見ただけで、ちゃんと味も付けてないのかと怒鳴られて、」
そうして言葉を詰まらせて深呼吸した。
「持ち帰りのだし巻き玉子も、開店して数日は売れてたんやけど、味が薄いとか歯応えが無いとか、わざわざ言いにきはるお人もおって、そんなに口に合わへんもんやろかと……。」
一気に話して、手で顔を覆うと、少ししてから笑顔を見せた。
「失礼しました。こんなに気持ち良う食べてくれはって、嬉しいです。うちは、こちらの料理も色々と味見をして、確かにうちの作る物より見た目も味付けも濃いように思うたけど、食べ比べてうちの料理の味付けが薄いわけやのうて、醤油の色味と風味の違いで、とにかく一度しっかりと味わってほしいと思うてたので、間違ってないと分かってまたやる気が出てきました。」
俺は、ふーふーしながらうどんを食べる。小さく切ってくれたから食べやすい。お揚げは、ものすごく味が濃くて甘かった。噛んでもなかなか小さくならないから、小さくしてくれて良かったよ。
「醤油の色味と風味……。へえ。そうかあ。……あの、このだし巻き玉子の作り方って秘密ですか?」
自分の定食を食べて、きつねうどんを味わっていた村次が、思いきったように口を開く。
「いいええ。こんなん、西ではどこのお家でもそれぞれの味で作るような料理ですよ。そらまあ、店で出せるようになるにはそれなりに技もいりますけど。」
「作るとこを見せてもらっても?」
「どうぞ、どうぞ。」
「荘重さまも昼ごはん食べたら?それを作るとこを見せてもらったら、一石二鳥じゃねえ?」
「確かに!じゃ、だし巻き玉子定食をもう一つ注文します。よろしくお願いします。」
力丸の提案に、村次があっさり乗った。いつも、じいやが側にいると嫌がってるのに、珍しい。
「え?あの、無理に頼んで頂かなくても……。」
と、店員さんが言いかけて、ぽかんと口を開ける。村次の隣の席にじいやが座っていたからだ。
「喜んで頂きます。」
じいやがにこりと笑うのを見て、村次が立ち上がった。ええ?あの方おりましたか?と混乱する店員さんの背中を押して厨房へ消えていく。
俺は自分のご飯を頑張って食べなきゃな。だいぶ冷めてきたし。
そして、しばらくしてじいやのだし巻き玉子定食を持ってきた村次は、
「すっげー勉強になった。」
って言って、嬉しそうに笑った。
もりもりと食べている俺たちを見て、店員さんがぽつりとこぼす。
「とても美味しいです。」
村次が答えて、俺と力丸がうんうんと頷く。
良かった、と呟いた店員さんの目に涙が滲んで、びっくりとそちらを見た。
「すみません。……なかなか客が来なくて、来ても料理を見ただけで、ちゃんと味も付けてないのかと怒鳴られて、」
そうして言葉を詰まらせて深呼吸した。
「持ち帰りのだし巻き玉子も、開店して数日は売れてたんやけど、味が薄いとか歯応えが無いとか、わざわざ言いにきはるお人もおって、そんなに口に合わへんもんやろかと……。」
一気に話して、手で顔を覆うと、少ししてから笑顔を見せた。
「失礼しました。こんなに気持ち良う食べてくれはって、嬉しいです。うちは、こちらの料理も色々と味見をして、確かにうちの作る物より見た目も味付けも濃いように思うたけど、食べ比べてうちの料理の味付けが薄いわけやのうて、醤油の色味と風味の違いで、とにかく一度しっかりと味わってほしいと思うてたので、間違ってないと分かってまたやる気が出てきました。」
俺は、ふーふーしながらうどんを食べる。小さく切ってくれたから食べやすい。お揚げは、ものすごく味が濃くて甘かった。噛んでもなかなか小さくならないから、小さくしてくれて良かったよ。
「醤油の色味と風味……。へえ。そうかあ。……あの、このだし巻き玉子の作り方って秘密ですか?」
自分の定食を食べて、きつねうどんを味わっていた村次が、思いきったように口を開く。
「いいええ。こんなん、西ではどこのお家でもそれぞれの味で作るような料理ですよ。そらまあ、店で出せるようになるにはそれなりに技もいりますけど。」
「作るとこを見せてもらっても?」
「どうぞ、どうぞ。」
「荘重さまも昼ごはん食べたら?それを作るとこを見せてもらったら、一石二鳥じゃねえ?」
「確かに!じゃ、だし巻き玉子定食をもう一つ注文します。よろしくお願いします。」
力丸の提案に、村次があっさり乗った。いつも、じいやが側にいると嫌がってるのに、珍しい。
「え?あの、無理に頼んで頂かなくても……。」
と、店員さんが言いかけて、ぽかんと口を開ける。村次の隣の席にじいやが座っていたからだ。
「喜んで頂きます。」
じいやがにこりと笑うのを見て、村次が立ち上がった。ええ?あの方おりましたか?と混乱する店員さんの背中を押して厨房へ消えていく。
俺は自分のご飯を頑張って食べなきゃな。だいぶ冷めてきたし。
そして、しばらくしてじいやのだし巻き玉子定食を持ってきた村次は、
「すっげー勉強になった。」
って言って、嬉しそうに笑った。
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