【完結】人形と皇子

かずえ

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第四章 西からの迷い人

1 三人でお出かけ  成人

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 ふんふふーん。

「ご機嫌だな、成人なるひと。」

 力丸りきまるが歩きながら俺の肩を抱いて笑う。

「なにー?」
「鼻歌出てたぞ。」
「鼻歌って?」
「無意識に歌ってたってこと。」

 そうなの?気付かなかった。オルゴールの歌しか知らないけど、それかな?

「最近よく出てるよ、鼻歌。」

 力丸りきまるの隣で村次むらつぐが言う。

「なんで出るの?」
「楽しいからだろ!」

 三人で商店街って所を歩いている。三人でお出かけしたら、楽しいに決まってる!

「うん。俺、楽しい。」

 緋色ひいろは会議。難しい話になっているらしく、何日も長引いている。さい村正むらまさ生松いくまつも城に呼ばれていて、俺のお茶出しの仕事はお休み。力丸りきまるも、朱実あけみ殿下の護衛の仕事はお休みだったから、村次むらつぐもお休みにしてもらって三人でお出かけすることにしたんだ。
 急に出かけることになっても、力丸りきまるが車を運転できるから問題ない。離宮の車を借りて、あっという間に町にいる。車を運転してる力丸りきまるは格好良かったなあ。

「車を運転するの、格好良いよね。」
「お、そうか?」

 力丸りきまるがにやって笑う。

「俺も運転したい。」

 村次むらつぐも、うんうんと頷いていた。村次むらつぐの少し引き摺る右足に合わせて、俺たちはゆっくりと商店街を歩く。

「うーん、成人なるひとが運転するのは難しいなあ。右手でハンドル操作しながら左手でシフトレバー動かさなきゃならないからさ。」
「そうかあ。」
「俺がどこでも連れてってやるよ。村次むらつぐも十八になったら免許取るだろ?」
「……無理かも。」
「右の足首の動きがどのくらいできるか、だな。痛みは?」
「普段は無い。」
「クラッチ踏まなくていいなら、左足だけで運転できるんだけどなあ。そんな車、できないかな。片手と片足でも運転できる車。」
「それができたら、俺も車の免許取る!」
「いいじゃん。筆記試験もあるから、勉強もしとけよー。」
「うん。」
村次むらつぐはリハビリだな。足首が痛みなく動けば運転できるよ。」
「……うん。」
「それまでは、俺に任せろ。どこでも連れてってやるからな。」

 力丸りきまるは、いつも通りに元気に笑って言った。村次むらつぐが、ちょっと目を見開く。

「どこでもって……。」
「当たり前じゃん。俺たち、ともだちだろ?」
「ともだち?」
「すっごい仲良しのこと。」
「うん。ともだち。」
「一番の仲良しだから、親友だな、親友。」
「一番のともだちは親友?」
「そう。」
「じゃ、俺たち三人親友。」
「なんで一番が二人いるんだよ?」

 村次むらつぐが言うけど、親友は一人じゃなきゃ駄目なの?

「一番と二番が親友でいいじゃん。俺が成人なるひとの一番な。村次むらつぐは二番。」
「……もう、何でもいいよ。」

 村次むらつぐが溜め息を吐きながら、ぼそっと呟く。俺と力丸りきまるは顔を見合わせて笑った。
 知ってる。
 村次むらつぐは今、ご機嫌に違いない!



◇◇◇

この物語の中では、まだMT車しかありません。
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