【完結】人形と皇子

かずえ

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こぼれ話

反省してる  赤璃

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 え?と緋椀ひまりが目を剥く。まあ、上位の家は減ってきているし、家格が合う同級生同士は大抵、婚約者候補ということになってるみたいね。七条うちは母が皇女あれだから、子どもにも何も言わなかったし、家格の扱いも微妙だから緋椀ひまりは知らなかったのかもね。
 私も、小学校で、お前が俺の婚約者だな、とか阿呆なことを三条の坊っちゃんに言われなければ、知らないままだっただろうし。
 
七条うちでは特にそんな話はなかったから、そういうわけでもないと思うわ。寧子やすこちゃんがいき遅れないように正式に断ったのじゃないかしら?」
「そうですか。色々とお気を遣わせてしまいましたね。私は何も気にしていません。」

 寧子やすこちゃんは冷静だけど、あっちは困った。
 大きなくまに成人なるひと乙羽おとわが左右から抱きついてすっかり考え込んでしまっている。不安定に揺れる瞳。これは不味い。

荘重むらしげ、いる?」
「は。」
緋色ひいろ殿下を呼んできて。常陸丸ひたちまるも。」
「御意。」

 微かな声だけが聞こえた。

乙羽おとわ、なる。」

 二人の注意をこちらに向けて、ゆっくりと話しかける。

「色んな結婚があるのよ。人それぞれに幸せもある。寧子やすこちゃんには寧子やすこちゃんの思う結婚があるの。」

 うん、と覚束無い様子で頷くのを見て、納得はしてないようだと苦笑いが漏れる。

「だから、大丈夫。二人が心配することは何も無い。」

 え?と寧子やすこちゃんがこちらを向いた。

「大丈夫。寧子やすこちゃんは嫌なことをさせられてる訳ではないし、緋色ひいろ殿下と常陸丸ひたちまるは、結婚して子どもが欲しいと思ってなんていない。」

 ノックもなく、扉が開いて緋色ひいろが飛び込んできた。常陸丸ひたちまるは一応、緋色ひいろの後ろに控えているが、乙羽おとわの様子を見て飛び出しそうになるのを必死で堪えている。
 緋色ひいろがこちらを睨みながらなるを抱き上げた。それを待って常陸丸ひたちまる乙羽おとわを抱き上げる。

赤璃あかり?」

 緋色ひいろの低い声。私は両手を上げて抵抗しない意を示す。

「反省してる。怒られても甘んじて受けるわ。でも、これは必要な話だった。その一点は譲らない。」

 ふん、と鼻を鳴らした緋色ひいろが視線を扉の方へ向ける。はいはい、出ていきますとも。
 首を傾げている寧子やすこちゃんと緋椀ひまりを促して部屋から出る。
 常陸丸ひたちまるは頭をひとつ下げると、私たちの脇を抜けてさっさと自分たちの部屋へと帰っていった。
 驚いたことに廊下には三雲みくも作治さくじが立っていて、丁寧に頭を下げている。

赤璃あかりさま、ご無沙汰致しております。そちらのお嬢様は、初めまして、でございますね。三雲みくも作治さくじと申します。」
「初めまして。六条ろくじょう寧子やすこでございます。」

 荘重むらしげは、いつから頼んでいないことまでやるほどの人間味を身につけたのかしら。

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