【完結】人形と皇子

かずえ

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こぼれ話

ぞうの鼻は長い  成人

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 俺は、ぞうの大きさを舐めていた。こんなに大きいなんて、図鑑じゃ分からなかった。

「すごい。大きい。」

 乙羽おとわの言葉に、うんうん頷く。
 大きな体を支える足は、一本ずつが太くて、のし、のしと歩いた。大きな耳はぱたぱたと動く。もう少し大きくして素早く動かしたら飛べたりして?重いから無理か?落ちてきたら大変だよね。
 思い浮かべてくふふ、と笑ってたら、体のわりに細い尻尾がぴたんぴたんと動く。あれは、虫を追い払ってるんだよね。図鑑で読んだ。
 飼育員さんが、バナナをぽんと置いた。大きな房のままだ。何本もくっついてるけど、皮はどうするのかな?
 ぞうの長い鼻がくるんと丸まって器用にバナナを持ち上げる。そのままばくりとバナナを口に押し込んだ。
 うわあ、そのまま食べちゃった。皮も?美味しいの?

「そうだ、かば。」

 びっくりしてぞうの食事を見ていると、乙羽おとわが急に言った。

「私、かばの口を見に行ってくる。」
「うん。」
「なるは?」
「俺、もう少しぞうが見たい。」
「じゃ、また後でね。」
「うん。」

 乙羽おとわは、急ぎ足で歩いていった。常陸丸ひたちまるが楽しそうに付いていく。ぞうは、動物園の入り口から一番近くにいたから、まだまだ奥にはたくさんの動物がいるんだろう。
 ぞうに視線を戻すと、お尻から大きなうんちがぼとりと落ちた。
 おお。
 うんちも大きい。
 飼育員さんが大きなスコップで持ち上げてバケツに入れて片付けていた。
 ぞうは、何にもしてないよーって顔して、耳をぱたぱたしてる。
 ふふ。
 金魚も、うんちをお尻にくっつけて知らん顔してるよね。
 
成人なるひと。」

 緋色ひいろに呼ばれて驚いた。真剣に見すぎて、隣にいることを忘れていたよ。

「水、飲んどけ。」

 水筒を渡されて、冷たい水を飲む。
 美味しい。
 ぞうが水場にのしのし歩いていった。鼻で水を吸ってばしゃっと自分の体にかけている。水を吸った鼻を口に持っていって飲む。
 ぞうの鼻って、何でもできるんだな。俺たちの手とおんなじだな。
 
成人なるひと。」
「ん?」
「かばときりんは見ないのか?」
「見る。」
「じゃあ、行くか。」
「もうちょっと、ぞう見てから。」

 結局、お昼ご飯食べるぞって言われるまでぞうを見てた。
 昨日の夜にたくさん食べて、朝ごはんをほとんど食べられなかったから、昼のおにぎりは頑張って一つ食べた。
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