【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

79 成人 75

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 翌日の朝、ご飯を食べに行く途中で力丸りきまるに会った。

「誕生日おめでとう。」

 と、緋色ひいろが言った。力丸りきまるは物凄く嬉しそうに笑って、抱拳礼を取りながら、

「ありがとうございます!」

 と言った。
 ああ。誕生日。

「誕生日、おめでとう…。」 

 俺も、真似をして言っておく。ありがとう、と力丸りきまるが言う。こんなやり取りが、人と出会う度に繰り返された。誕生日って、団子パーティーができる日って訳じゃないんだな……。
 朝食を食べたら、力丸りきまるは車の免許を取るための勉強をする学校へ出かけて行った。
 俺は、お仕事を頑張った。今までは、十円あれば飴が買えると思って、それよりたくさんのお金は、こんなに貰っていいのかな、くらいに思っていた。でも、今の俺は違う。欲しいものがたくさんあるのだ。
 飴より、欲しいものができるとは思わなかった。俺は、昨日買ったきらきらのビー玉を、いつもぶら下げている鞄から取り出して眺める。これもきれいなんだけど、金魚が欲しい。きらきらのガラスの金魚。

「綺麗だな。」

 お昼ご飯を食べに来た緋色ひいろが、横に座りながら言った。

「うん。」

 俺は、お昼からも仕事がしたかったけれど、それは駄目だと布団に連れていかれた。抵抗むなしく、緋色ひいろに抱かれていたら寝てしまった。
 起きたら、食堂に集合と言われた。
 行ってみると、団子の山ができている。誕生日パーティーだ。この前のおやつの時間と同じように、きな粉やお汁粉、みたらしとフルーツシロップの入った器が周りに並んでいた。家中の人が続々と集まって来て、ジュースが配られる。青葉あおばさんも来ていた。みんなで力丸りきまるを取り囲んで、

「誕生日、おめでとう!」

 と口を揃えて言った。ジュースのコップをあちこちでカチン、カチンと合わせて乾杯、おめでとう、の声が上がる。力丸りきまるが、ありがとう、ありがとうと笑っていた。
 誕生日って凄いな……。
 ジュースを飲んだら、きれいに包まれた品物を色んな人が力丸りきまるに渡している。贈り物、らしい。
 俺があっけに取られていると、青葉あおばさんが横に来て言った。

「次は、なるちゃんの誕生日だね。楽しみだね。」
「……うん。」
「生まれてきてくれて、嬉しい。だから、誕生日はめでたいんだ。生まれてきてくれた日だからね。」
「……ふーん。」
「そのうち、分かるよ。」

 俺は悩んだ末に、ビー玉を力丸りきまるにあげた。
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