【完結】人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

76 成人 73

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 お買い物に行く。
 日にちが決まってから、そわそわして、落ち着かなかった。
 昨日から何回も確かめたバッグの中をまた開く。財布の中に三百円入っている。百円が二つと十円が十個。お仕事でもらったお金。
 お勉強の時間に、お買い物の練習もした。青葉あおばさんが、いらっしゃいませ、と言って、俺が、これ、ください、と言って欲しい飴を渡したら、十円です、と言ってくれるから、十円を渡す。そしたら、飴を貰って帰っていい。
 よし。
 頭の中で、何回もそれを確かめる。

「落ち着け。」

 緋色ひいろが笑いながら、ぐい、と俺の腕を引っ張ってあぐらの上に乗せた。ぎゅっと抱っこしてもらって嬉しいけど、じっとしていられない。

「行く前に疲れてしまうぞ。」

 口にちゅーが下りてくる。嬉しくて少し落ち着いた。
 扉がノックされて、行きますよ、と常陸丸ひたちまるの声がする。力丸りきまると行くつもりだったけど、いつの間にか乙羽おとわ雫石しずくさんも行くことになってた。楽しみ。緋色ひいろは、

「いつでも一緒に出掛けるぞ。」

 と言ってくれた。嬉しい。乙羽おとわ緋色ひいろが行くなら、もちろん常陸丸ひたちまるも一緒だ。
 
 車で着いた駄菓子屋さんは、そんなに広くない空間いっぱいに、おやつが並んでいた。見たことの無いものばかりだ。飴だけで、とんでもない種類が並んでいて、一つ一つ見ていたら日が暮れてしまう。小さい四角い飴が二つ入ったものと、大きな丸い飴。色が違うと味も違うらしい。棒つきの小さなものから、一つで百円もする大きな飴もある。飴だけじゃなくて、袋に入ったせんべいみたいのや、小さな白い丸がたくさん入ったおやつもあった。

「それ、ラムネ。ちょっと酸っぱいけど美味しいよ。はじめはかたいけど口で溶けるから大丈夫。成人なるひと、食べられるよ。」

 力丸りきまるが教えてくれる。飴を買おうと思ってたけど、ラムネが気になる。酸っぱいってどんな味?五十円は高いけど、一つ買ってみようかな。入れ物が可愛いし。ラムネは袋じゃなくて、固い可愛い形の入れ物に入っている。飴は、どれにしよう?棒つきのが食べてみたい。袋に入っていて、粉を付けながら食べるのが気になる。三十円。高いかな。まだ足りる。いつもの丸い飴も欲しい。
 うんうんと唸っていたら、考えすぎてくらっとした。おやつは選ばずに、俺の側にいた緋色ひいろが受けとめてくれる。

「だから、落ち着け。」

 くつくつと、緋色ひいろの笑い声がした。

 
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