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第三章 幸せの行方
60 緋色 54
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誕生日!
すっかり忘れていた。成人の年齢を決めてから、色々なことがありすぎて、誕生日を決めることなくだいぶ日にちが過ぎてしまっていた。
「あー、ええと。誕生日?」
「誕生日に団子パーティーするって言った。」
片方しか開いていない目が、きらきらしている。まあ、こいつの誕生日の手掛かりなんて全く無いのだから、いつでもいいんだが。
はあー、と息を吐きながら座り込むので、慌てて近くに寄る。
興奮し過ぎて、ふらついたらしい。
落ち着け。
「そうだな。誕生日を決めるって言ってたな。今日でもいいが。」
手近なカレンダーを見せてみる。
「好きな数字があれば、その日にしてもいい。団子はまた、作ってくれるから。」
胡座の上に抱き上げながら、落ち着かせるように、ぽんぽんと薄い胸を叩いた。
カレンダーを珍しそうに見ている。これも、知らないものだったかな。じっと見てから、13を指差した。
ああ。
そうだな。
それもまた、お前がお前である証だ。
「よし。じゃ、お前の誕生日は三月十三日だ。まだ、もう少し先だな。今日の団子は、お仕事を頑張ったご褒美にもらっておけ。」
「おれ、おれ…。」
「うん。」
「うれしい。」
「そうか。」
広末が優しく笑いながら、ミックスジュースを差し出した。
大慌てで、ストローを口にしている。
飲みすぎたら、団子が入らなくなるぞ。
「おいしい。」
満面の笑みで、ようやくひと息ついたらしい。
真剣な顔で、机の上を見つめて、積んであるいつもの団子を一つ摘まんだ。
「食べていい?」
「もちろん。全部食べてもいいぞ。」
広末の言葉を聞いて、口に入れる。傷に当たると痛いのか、少し眉をしかめた。それでも、一生懸命噛んでいる。なかなか進まない咀嚼に広末が、はらはらと見守っていた。だいぶ時間をかけて一つ目が終わる。
「食えたな。」
「日が暮れそうだな。」
広末と俺の呟きに、斑鹿乃が小さく笑った。
「緋色も食べる?」
「ああ。」
積んである団子を一つ貰って飲み込む。柔らかくて小さいので、あっという間だった。
「これは、食わないのか?」
色んな味の小鉢に、興味はあるが手は出さないようだ。俺は、甘いものはあまり好まないんだが、食べてみせるか?
「力丸に聞いてみる。」
「ああ?」
つい低い声が出た。
「いっぱいあるから、一緒に食べる。」
昨日の力丸とのことは、覚えていないのだろう。屈託のない様子で言われると、どうしたものかと考えてしまう。
「手の空いてる人を、皆呼んだらどうでしょう?」
柔らかな斑鹿乃の声がした。
力丸だけ呼ぶのは業腹だが、それなら手を打とう。
渋々頷くと、広末と斑鹿乃が二人で顔を見合わせて、にこりと笑いながら出ていった。
すっかり忘れていた。成人の年齢を決めてから、色々なことがありすぎて、誕生日を決めることなくだいぶ日にちが過ぎてしまっていた。
「あー、ええと。誕生日?」
「誕生日に団子パーティーするって言った。」
片方しか開いていない目が、きらきらしている。まあ、こいつの誕生日の手掛かりなんて全く無いのだから、いつでもいいんだが。
はあー、と息を吐きながら座り込むので、慌てて近くに寄る。
興奮し過ぎて、ふらついたらしい。
落ち着け。
「そうだな。誕生日を決めるって言ってたな。今日でもいいが。」
手近なカレンダーを見せてみる。
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胡座の上に抱き上げながら、落ち着かせるように、ぽんぽんと薄い胸を叩いた。
カレンダーを珍しそうに見ている。これも、知らないものだったかな。じっと見てから、13を指差した。
ああ。
そうだな。
それもまた、お前がお前である証だ。
「よし。じゃ、お前の誕生日は三月十三日だ。まだ、もう少し先だな。今日の団子は、お仕事を頑張ったご褒美にもらっておけ。」
「おれ、おれ…。」
「うん。」
「うれしい。」
「そうか。」
広末が優しく笑いながら、ミックスジュースを差し出した。
大慌てで、ストローを口にしている。
飲みすぎたら、団子が入らなくなるぞ。
「おいしい。」
満面の笑みで、ようやくひと息ついたらしい。
真剣な顔で、机の上を見つめて、積んであるいつもの団子を一つ摘まんだ。
「食べていい?」
「もちろん。全部食べてもいいぞ。」
広末の言葉を聞いて、口に入れる。傷に当たると痛いのか、少し眉をしかめた。それでも、一生懸命噛んでいる。なかなか進まない咀嚼に広末が、はらはらと見守っていた。だいぶ時間をかけて一つ目が終わる。
「食えたな。」
「日が暮れそうだな。」
広末と俺の呟きに、斑鹿乃が小さく笑った。
「緋色も食べる?」
「ああ。」
積んである団子を一つ貰って飲み込む。柔らかくて小さいので、あっという間だった。
「これは、食わないのか?」
色んな味の小鉢に、興味はあるが手は出さないようだ。俺は、甘いものはあまり好まないんだが、食べてみせるか?
「力丸に聞いてみる。」
「ああ?」
つい低い声が出た。
「いっぱいあるから、一緒に食べる。」
昨日の力丸とのことは、覚えていないのだろう。屈託のない様子で言われると、どうしたものかと考えてしまう。
「手の空いてる人を、皆呼んだらどうでしょう?」
柔らかな斑鹿乃の声がした。
力丸だけ呼ぶのは業腹だが、それなら手を打とう。
渋々頷くと、広末と斑鹿乃が二人で顔を見合わせて、にこりと笑いながら出ていった。
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