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第三章 幸せの行方
59 緋色 53
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腕の中の、顔色の悪い成人を見下ろす。口の中が傷付いたのは良くなかった。ちっとも食わない。
食べたらお仕事をしてもいい、となだめても、嫌いな点滴をするぞと脅しても、二口も食べたらスプーンを置いてしまう。傷に障らないような味付けが合わないのか、口を動かすだけで痛いのか。
溜め息をついて、ぽんぽんと背中を叩く。
んぅ……、と聞こえて、起こしてしまったか、と覗きこむが、穏やかな寝息が聞こえてほっとする。
厄介なことだ。
ノックの音に返事をすると、昼食の食器を下げに来た広末が、成人のご飯の残りを見てしゃがみこむ。
「食わないな……。」
困ったように呟いて、成人の頬を撫でる。
「団子を積んでみるか。」
口元を見ながら、独り言を言っている。
「団子?」
「ええ。口当たりはいい筈なんで、皿に山盛りにして見せてやりましょう。ちっとは食べる気になるかもしれません。」
「ああ。悪いな、残して。」
「いやいや。俺の修行不足です。」
にっ、と笑って言うので、つられて、くくっと笑ってしまった。
斎も昼寝をしに帰ったことだし、と成人を抱いて布団に入る。気持ち良さそうに寝息を立てているのを確かめて、いつの間にか一緒に眠っていた。
「わあ!」
興奮した声に驚いて、一気に目を覚ます。
「どうした?」
「団子、団子が。」
興奮し過ぎて言葉が続かないらしい。珍しいことだ、と思いながら視線を追うと、確かに興奮しそうな光景が広がっていた。
机の上の皿には、小さな団子が山盛りに積まれている。小さいから、綺麗な形になるように積むのは、大変だっただろう。その横に、みたらし団子、きな粉団子、お汁粉、フルーツ白玉の小鉢が置かれていた。フルーツは、缶詰めのみかんを細かくしてあるようだ。
「ひ、ひいろ……。すごい。すごい!」
ふらふらと布団から出て、団子の山に吸い寄せられていく。机の横で広末が、にまにまと笑っていた。手伝いにかり出されたらしい斑鹿乃も、楽しそうに目を細めている。
机の側に立って大興奮していた成人が、何か得心した様子でこちらを振り返った。
「俺、誕生日なの?!」
食べたらお仕事をしてもいい、となだめても、嫌いな点滴をするぞと脅しても、二口も食べたらスプーンを置いてしまう。傷に障らないような味付けが合わないのか、口を動かすだけで痛いのか。
溜め息をついて、ぽんぽんと背中を叩く。
んぅ……、と聞こえて、起こしてしまったか、と覗きこむが、穏やかな寝息が聞こえてほっとする。
厄介なことだ。
ノックの音に返事をすると、昼食の食器を下げに来た広末が、成人のご飯の残りを見てしゃがみこむ。
「食わないな……。」
困ったように呟いて、成人の頬を撫でる。
「団子を積んでみるか。」
口元を見ながら、独り言を言っている。
「団子?」
「ええ。口当たりはいい筈なんで、皿に山盛りにして見せてやりましょう。ちっとは食べる気になるかもしれません。」
「ああ。悪いな、残して。」
「いやいや。俺の修行不足です。」
にっ、と笑って言うので、つられて、くくっと笑ってしまった。
斎も昼寝をしに帰ったことだし、と成人を抱いて布団に入る。気持ち良さそうに寝息を立てているのを確かめて、いつの間にか一緒に眠っていた。
「わあ!」
興奮した声に驚いて、一気に目を覚ます。
「どうした?」
「団子、団子が。」
興奮し過ぎて言葉が続かないらしい。珍しいことだ、と思いながら視線を追うと、確かに興奮しそうな光景が広がっていた。
机の上の皿には、小さな団子が山盛りに積まれている。小さいから、綺麗な形になるように積むのは、大変だっただろう。その横に、みたらし団子、きな粉団子、お汁粉、フルーツ白玉の小鉢が置かれていた。フルーツは、缶詰めのみかんを細かくしてあるようだ。
「ひ、ひいろ……。すごい。すごい!」
ふらふらと布団から出て、団子の山に吸い寄せられていく。机の横で広末が、にまにまと笑っていた。手伝いにかり出されたらしい斑鹿乃も、楽しそうに目を細めている。
机の側に立って大興奮していた成人が、何か得心した様子でこちらを振り返った。
「俺、誕生日なの?!」
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