人形と皇子

かずえ

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第三章 幸せの行方

53 力丸 7

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 村正むらまささまと話を終えて、部屋に案内してもらう。今日から住む部屋だ。一ノ瀬いちのせの独り身の者も何人か、許可をもらって住み着いている。部屋を空けていても手入れがいるし、もったいないから、使いたいなら自由に使えばいい、と緋色ひいろ殿下が言ったらしい。その一角に、俺の部屋も作ってくれた。俺の場合は、緋色ひいろ殿下の許可をなかなもらえないから、朱実あけみ殿下に訴えて、ねじ込んだのだけれど。
 成人なるひとが兵器だったことは驚いた。色々と、俺の想像の範囲を越えすぎて頭がパンクしそうだった。兵器である、ということはどういうことか、とか考えてはみたけれど、全然分からなかった。成人なるひとが色々と知らないなら、俺が教えてやればいいんじゃね?と結論が出たところで、母上が、一緒に買い物に行きたいって言ってたよ、なんて嬉しい情報を教えてくれるもんだから、大急ぎで朱実あけみ殿下に連絡をして、離宮に住めるようにしてもらったのに。
 邪魔って言うなよなー、邪魔って。
 荷物を置いて食堂へ向かうと、成人なるひとが昼ごはんを食べかけで舟を漕いでいた。広末ひろすえが、隣に座って声を掛けていたが、完全に頭が落ちて、諦めたようだ。座椅子にもたれさせ、口の中に食べ物が残ってないか確かめてから、口の回りを拭いた。かわいいなあ、って思ってるんだろうなって顔で作業を終えると、いつの間にか荘重むらしげさまも側にいて、成人なるひとの鞄を体から外す。
 あんなの、さっき付けてたっけ?
 赤いボタンが鮮やかな、小さめの肩掛け鞄。飴が入ってんだろうなあ。
 成人なるひとの頭から落ちそうになった赤い帽子を、荘重むらしげさまが被せ直す。
 赤色好きだな。貴色きしょくなのに身に付けまくってるけど、いいのかな。緋色ひいろさまが許してたらいいのか?
 荘重むらしげさまが成人なるひとを、可愛くてたまらないって顔して、大事に抱えて出ていった。今あいつ、幸せだよな。
 じゃあ、いいか。
 もともとが兵器でも何でも。
 結局、成人なるひとは、昼寝しておやつ食べたら母上が勉強を教えに来て、俺と遊ぶ時間は無かった。
 本人は充実した顔してるけど、俺は大いに不満だ。何だよー、いつでも遊べるようになったのに。
 仕方ないから、夜ご飯の後で部屋をノックする。

成人なるひと、風呂に一緒に行こう。」
 
 
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