133 / 1,321
第三章 幸せの行方
34 力丸 3
しおりを挟む
「氷が無くて。」
「そりゃ、お腹痛くなったから、仕方ないだろ。」
「斎にあげようと思ったのに。」
「貰っても、斎さんも困っただろうよ。」
「美味しいから、元気になると思って。」
「あー、まあ、元気にはなるかもな。」
「飴あげるのにしたんだけど、出したら、べたべたで。」
「出した?置いてたん?食べずに?」
「うん。緋色が分からないように、ここに。」
成人はベッドの下を指差した。
「隠してたのか。ここじゃ溶けるなあ。」
「緋色が捨てた。」
「べたべたになってたなら、駄目だろ。」
「まだ食べれるのに。」
「お腹壊したら大変だからな。」
「力丸は、どこに隠すの?」
「え?」
「飴。どこに隠すの?」
飴は隠さねえけど。
まあ、そうだな。こいつは、飴を食べただけでご飯がその分入らなくなるから、あまり貰えないもんな。
貰ったら直ぐに食べてると思ってたよ。隠したりするんだな。
いや、隠す余裕が出てきたのかな。今より先のこと、考えたりするようになったのか。
いいじゃん。明日の約束とか、飴を置いといて明日食べようとか、そういう考え、大事だよな。
何か嬉しくなった。成人は、明日もここにいる。
「大事なものは、箱とかに入れたりするかな。」
「箱?」
「宝物入れ、みたいなさ。拾った石がぴかぴかだったとか、蝉のぬけがらがきれいな形だったとか、箱にためてた。」
成人は俺の言ったことが分からないらしく、首を傾げている。
成人と殿下の二人の広い私室の中。成人がほとんどの時間を過ごす場所。絨毯が敷かれた一角でローテーブルにパズルをばらまいて、座り込んでいた。疲れたらもたれ掛かれるように、大きなビーズクッションが置いてある。その横の小さな棚に、俺と母上が家から持ってきた絵本が並んでいる。一番お気に入りの、団子を配って家来にする絵本は、屋敷と一緒に燃えてしまったから、母上が新しいのを買ってきた。小さい子ども用のパズルの箱が二つ。成人の持ち物は、それだけ。
「大事なもので、ちょっと隠しておきたいものは、箱に入れて物陰に置くんだよ。見つかりにくいし、自分はいつでも出せていいだろ?」
「大事なもの……。」
「今からいっぱい見つかるだろうし。宝箱、置こうぜ。買い物行って箱を見て、飴も買ってこよう。」
「買い物?」
「駄菓子屋行って、飴を買おう。雑貨屋に行ったら箱も色々あるし。ああ、いいな。買い物行こう、成人。」
「飴、広末が作ってるんじゃないの?」
「え?そりゃ作れないことは無いだろうけど、いつも食べてるのは買ってきた飴だぜ。」
「買ってきたって何?」
「え?だから、店で。え?」
もしかして、買い物したことないのか。まさかな。
三年、戦場にいたって言ってたな。その前は?あれ?
「そりゃ、お腹痛くなったから、仕方ないだろ。」
「斎にあげようと思ったのに。」
「貰っても、斎さんも困っただろうよ。」
「美味しいから、元気になると思って。」
「あー、まあ、元気にはなるかもな。」
「飴あげるのにしたんだけど、出したら、べたべたで。」
「出した?置いてたん?食べずに?」
「うん。緋色が分からないように、ここに。」
成人はベッドの下を指差した。
「隠してたのか。ここじゃ溶けるなあ。」
「緋色が捨てた。」
「べたべたになってたなら、駄目だろ。」
「まだ食べれるのに。」
「お腹壊したら大変だからな。」
「力丸は、どこに隠すの?」
「え?」
「飴。どこに隠すの?」
飴は隠さねえけど。
まあ、そうだな。こいつは、飴を食べただけでご飯がその分入らなくなるから、あまり貰えないもんな。
貰ったら直ぐに食べてると思ってたよ。隠したりするんだな。
いや、隠す余裕が出てきたのかな。今より先のこと、考えたりするようになったのか。
いいじゃん。明日の約束とか、飴を置いといて明日食べようとか、そういう考え、大事だよな。
何か嬉しくなった。成人は、明日もここにいる。
「大事なものは、箱とかに入れたりするかな。」
「箱?」
「宝物入れ、みたいなさ。拾った石がぴかぴかだったとか、蝉のぬけがらがきれいな形だったとか、箱にためてた。」
成人は俺の言ったことが分からないらしく、首を傾げている。
成人と殿下の二人の広い私室の中。成人がほとんどの時間を過ごす場所。絨毯が敷かれた一角でローテーブルにパズルをばらまいて、座り込んでいた。疲れたらもたれ掛かれるように、大きなビーズクッションが置いてある。その横の小さな棚に、俺と母上が家から持ってきた絵本が並んでいる。一番お気に入りの、団子を配って家来にする絵本は、屋敷と一緒に燃えてしまったから、母上が新しいのを買ってきた。小さい子ども用のパズルの箱が二つ。成人の持ち物は、それだけ。
「大事なもので、ちょっと隠しておきたいものは、箱に入れて物陰に置くんだよ。見つかりにくいし、自分はいつでも出せていいだろ?」
「大事なもの……。」
「今からいっぱい見つかるだろうし。宝箱、置こうぜ。買い物行って箱を見て、飴も買ってこよう。」
「買い物?」
「駄菓子屋行って、飴を買おう。雑貨屋に行ったら箱も色々あるし。ああ、いいな。買い物行こう、成人。」
「飴、広末が作ってるんじゃないの?」
「え?そりゃ作れないことは無いだろうけど、いつも食べてるのは買ってきた飴だぜ。」
「買ってきたって何?」
「え?だから、店で。え?」
もしかして、買い物したことないのか。まさかな。
三年、戦場にいたって言ってたな。その前は?あれ?
702
お気に入りに追加
5,083
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる