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第三章 幸せの行方
24 赤璃 8
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緋椀が息を飲んだ。とても驚いた顔をして私を見ている。弟には伝わったらしい。
初花には伝わらなかったようだ。
「そんな、簡単な話なわけ、ないわ」
「簡単な話よ。分からなければ、それでいい」
「無礼者。七条ごときがでしゃばって。わたくしが結婚して差し上げなければ、殿下のお相手はもう、いらっしゃらないわ」
成人を紹介してもらえたのは、温情であることも理解していないのか、と溜め息をつきそうになった。
ずるずると力丸が、飛ばした護衛を引き摺ってくる。一ノ瀬荘重も、残りの一人を回収してまとめて置いてくれた。
「赤虎さまの臣籍降下の理由をご存知?」
「重要な研究所を爆破されたのでしょう?恐ろしいわ」
「それは緋色殿下の仕業ね。確かに恐ろしい方だわ」
「え……?」
「臣籍降下の理由は、緋色殿下の伴侶を拐って研究所で実験動物にしようとした挙げ句、足を銃で撃って傷付けたからよ。研究所が壊されたのは、救出行動の過程。だから、研究所を壊したのは緋色殿下」
これで、理解してくれたかしら? それとも、これを聞いても分からない?
「赤虎さまは、緋色殿下を怒らせたから皇家から出された。皇家は、緋色殿下の方を重要と思っているということですわね。わたくしの見る目は間違っていなかった……。父に褒めてもらえるわ」
永久に分かり合えない何かが、私たちの間にはあるようだ。
「殿下の伴侶を害したから、臣籍降下された、と言ったのよ。皇家は、あの子を殿下の伴侶と認めている、ということを理解してお帰りなさい」
ようやくゆるゆると、初花の顔に驚愕の色が浮かび上がる。
城の敷地内を移動する、警備車両が到着した音がした。
「赤璃さま、緋椀さま、怪我人を運ぶために参りました」
警備隊の服を着た者が、敬礼して挨拶をする。
「ご苦労様。手間を掛けてごめんなさいね」
「いえ。いつでもお呼びください」
きびきびと、動けない護衛三人を車に乗せていく。
「生きてるわよね?」
「殺しませんよ!」
私の思わず出た呟きに、力丸の声が返ってきた。やっぱり、あなたがやったわね。見えなかったけど。
「三条さま。ご一緒にお帰りになった方がよろしいのでは?」
珍しく緋椀が口を開いた。
ぐ、と躊躇する初花に、父によく似た美貌を冷たく研ぎ澄まして告げる。
「緋椀の名において、命じます。二度とこの宮に近寄ること、相成りません」
「な、な、何を!」
たたみかけておこう。
「赤璃の名において、命じます。二度と緋色殿下とその伴侶に近寄ること、相成りません」
「尊き御名によるご命令、確かに承りました。では、三条さま、参りましょう」
警備の者が一つ頷いて答え、感情のもって行き場が無くて混乱したままの三条初花を連れて帰っていった。
初花には伝わらなかったようだ。
「そんな、簡単な話なわけ、ないわ」
「簡単な話よ。分からなければ、それでいい」
「無礼者。七条ごときがでしゃばって。わたくしが結婚して差し上げなければ、殿下のお相手はもう、いらっしゃらないわ」
成人を紹介してもらえたのは、温情であることも理解していないのか、と溜め息をつきそうになった。
ずるずると力丸が、飛ばした護衛を引き摺ってくる。一ノ瀬荘重も、残りの一人を回収してまとめて置いてくれた。
「赤虎さまの臣籍降下の理由をご存知?」
「重要な研究所を爆破されたのでしょう?恐ろしいわ」
「それは緋色殿下の仕業ね。確かに恐ろしい方だわ」
「え……?」
「臣籍降下の理由は、緋色殿下の伴侶を拐って研究所で実験動物にしようとした挙げ句、足を銃で撃って傷付けたからよ。研究所が壊されたのは、救出行動の過程。だから、研究所を壊したのは緋色殿下」
これで、理解してくれたかしら? それとも、これを聞いても分からない?
「赤虎さまは、緋色殿下を怒らせたから皇家から出された。皇家は、緋色殿下の方を重要と思っているということですわね。わたくしの見る目は間違っていなかった……。父に褒めてもらえるわ」
永久に分かり合えない何かが、私たちの間にはあるようだ。
「殿下の伴侶を害したから、臣籍降下された、と言ったのよ。皇家は、あの子を殿下の伴侶と認めている、ということを理解してお帰りなさい」
ようやくゆるゆると、初花の顔に驚愕の色が浮かび上がる。
城の敷地内を移動する、警備車両が到着した音がした。
「赤璃さま、緋椀さま、怪我人を運ぶために参りました」
警備隊の服を着た者が、敬礼して挨拶をする。
「ご苦労様。手間を掛けてごめんなさいね」
「いえ。いつでもお呼びください」
きびきびと、動けない護衛三人を車に乗せていく。
「生きてるわよね?」
「殺しませんよ!」
私の思わず出た呟きに、力丸の声が返ってきた。やっぱり、あなたがやったわね。見えなかったけど。
「三条さま。ご一緒にお帰りになった方がよろしいのでは?」
珍しく緋椀が口を開いた。
ぐ、と躊躇する初花に、父によく似た美貌を冷たく研ぎ澄まして告げる。
「緋椀の名において、命じます。二度とこの宮に近寄ること、相成りません」
「な、な、何を!」
たたみかけておこう。
「赤璃の名において、命じます。二度と緋色殿下とその伴侶に近寄ること、相成りません」
「尊き御名によるご命令、確かに承りました。では、三条さま、参りましょう」
警備の者が一つ頷いて答え、感情のもって行き場が無くて混乱したままの三条初花を連れて帰っていった。
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