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第三章 幸せの行方
7 成人 44
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斎をおぶって出ていった睦峯が、すぐに戻ってきた。扉は開けたけれど、中に入ろうか迷うようにしている。
ちょうど良かった。
「トイレ」
俺が言うと、慌てて駆け寄ってくれた。そっと横抱きにして連れていってくれる。
座れなくて、トイレの中でも支えてもらうことになった。くそー。
「トイレ、自分で行きたいんだよなあ」
「うん」
「前も、足が動かないのに、トイレって言ってたもんな」
「うん」
「あの時は、悪かった。変な薬を打ったり手枷付けてごめん。ずっと謝りたかった」
「うん」
あれが睦峯の仕事だったし、ご飯くれたし、別にいい。
「……軽いな、お前」
前も、そんなこと言ってたよね。くくっと笑うと、なんだ? と聞かれる。
「睦峯は同じこと言う」
びっくりした顔で見られた。
「名前、知ってたのか」
「うん」
知ってるよ、そんなこと。博士がいっつも呼んでるし。そういえば、睦峯は俺の名前を呼ばないね。
「俺の名前」
「知ってるよ」
「呼ばないの?」
「呼んでいいのか?」
「いいよ。なんで?」
「……いや、別に」
俺をベッドに下ろさずに、じっと見つめてくる。
「酷いことしたから、名前を呼ぶ権利はないかと思って。緋色殿下に言われたのもあるけど、それが俺の罰かなと思ってた」
「罰」
「な、成人以外の戦闘人形の遺体も、一体、二体と数えて解剖した。解剖したのだから、人だと分かっていたはずなのに、成人を見て、ずいぶんと壊れていると思った」
そんなもんだよ。俺はずっとそうだったし、気にすること無いのに。
「想像力が、足りないんだ」
「また、壊れてる」
「調子が悪いって言うんだよ」
「治して、睦峯」
「……死ぬ気で勉強するよ」
「ははっ」
疲れてきて、目をつぶった。
「約束する」
「うん」
ちょうど良かった。
「トイレ」
俺が言うと、慌てて駆け寄ってくれた。そっと横抱きにして連れていってくれる。
座れなくて、トイレの中でも支えてもらうことになった。くそー。
「トイレ、自分で行きたいんだよなあ」
「うん」
「前も、足が動かないのに、トイレって言ってたもんな」
「うん」
「あの時は、悪かった。変な薬を打ったり手枷付けてごめん。ずっと謝りたかった」
「うん」
あれが睦峯の仕事だったし、ご飯くれたし、別にいい。
「……軽いな、お前」
前も、そんなこと言ってたよね。くくっと笑うと、なんだ? と聞かれる。
「睦峯は同じこと言う」
びっくりした顔で見られた。
「名前、知ってたのか」
「うん」
知ってるよ、そんなこと。博士がいっつも呼んでるし。そういえば、睦峯は俺の名前を呼ばないね。
「俺の名前」
「知ってるよ」
「呼ばないの?」
「呼んでいいのか?」
「いいよ。なんで?」
「……いや、別に」
俺をベッドに下ろさずに、じっと見つめてくる。
「酷いことしたから、名前を呼ぶ権利はないかと思って。緋色殿下に言われたのもあるけど、それが俺の罰かなと思ってた」
「罰」
「な、成人以外の戦闘人形の遺体も、一体、二体と数えて解剖した。解剖したのだから、人だと分かっていたはずなのに、成人を見て、ずいぶんと壊れていると思った」
そんなもんだよ。俺はずっとそうだったし、気にすること無いのに。
「想像力が、足りないんだ」
「また、壊れてる」
「調子が悪いって言うんだよ」
「治して、睦峯」
「……死ぬ気で勉強するよ」
「ははっ」
疲れてきて、目をつぶった。
「約束する」
「うん」
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