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第二章 人として生きる
61 成人 32
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辺りは薄暗かった。寝息が聞こえている。緋色は、まだ寝てるのか。
左のこめかみが痛い。何だかずきずきするけれど、怪我をした覚えがない。いっぱい寝たような気がする。そう考えると急にトイレに行きたくなってきた。
そっと抜け出そうとしたけれど気付かれて、止められた。
「といえ」
何故か上手く口が動かない。でも、緋色には伝わったらしい。
「自分で行けるのか?」
と聞かれて頷く。ベッドを下りようとすると常陸丸がこちらを見てた。
「……成人か?」
「あい」
返事をすると、ひょいと抱き上げられる。
「おかえり」
どこも行ってないよ。首を傾げていると緋色の腕に移っていた。何だよー。トイレ行きたいのに。
「といえ!」
「……ああ。悪かった、悪かった」
泣きそうに顔を歪めて緋色は笑う。そのまま抱いてトイレへ運んでくれたのは助かった。行けるって言ったけど、体を起こした時にくらくらしたから。
その後は、強制的にご飯の時間が始まった。全然、お腹空いてないのに、食べないと駄目だって、緋色も常陸丸も言う。お粥を頼まれそうだったから、最近食べられるようになったものを注文してみた。
「おににり」
「お前……。本当にちゃんと食べられるんだろうな?」
二人ともに呆れたような顔をされた。さっきから何? ……俺、何かしたかな?
海苔の付いてない小さなおにぎりを口に入れる。噛むのに苦労した……。何でだ? 飲み込めない。
「ほら、みろ。だから粥にしろって言ったんだ」
自分のご飯を食べながら緋色が言う。
「出せ。粥も頼んどいたから、そっちにしろ」
常陸丸まで、そんなことを言う。ずっと、おにぎりの一口目を噛みながら首を傾げていると、口に手を突っ込まれて出された。
「お前、鬼ごっこの後二日間目を覚まさなくて、何回か呼吸も止まって死にかけてたんだよ。目を覚ましたと思ったら喋れないし、自分のことが成人だってことも分かってねえし」
え? 覚えてない。
口にお粥を突っ込まれて食べる。気分じゃない。
「ジュチュのむ」
俺はぁ、ミックスジュースがぁ、飲みたいぃ。
ふて腐れてお粥を食べていると、緋色と常陸丸が驚いた顔で見ている。
「我儘言ってるぞ」
「我儘言ってますね」
「……成人、痛いとこあるか?」
ここ痛い、と左のこめかみを指差すと、二人で顔を見合わせて笑う。
何だよー。
「我儘こぞう、お前はもうミックスジュースは飲んだんだよ」
「さっき起きたときに、な」
「のんえあい」
「何言ってるか分かりませーん」
緋色が楽しそうに笑ってる。また、お粥が口に入った。むぅ。
突然、常陸丸が立ち上がってソファに向かった。寝ていた斎が身動ぎしたらしい。
左のこめかみが痛い。何だかずきずきするけれど、怪我をした覚えがない。いっぱい寝たような気がする。そう考えると急にトイレに行きたくなってきた。
そっと抜け出そうとしたけれど気付かれて、止められた。
「といえ」
何故か上手く口が動かない。でも、緋色には伝わったらしい。
「自分で行けるのか?」
と聞かれて頷く。ベッドを下りようとすると常陸丸がこちらを見てた。
「……成人か?」
「あい」
返事をすると、ひょいと抱き上げられる。
「おかえり」
どこも行ってないよ。首を傾げていると緋色の腕に移っていた。何だよー。トイレ行きたいのに。
「といえ!」
「……ああ。悪かった、悪かった」
泣きそうに顔を歪めて緋色は笑う。そのまま抱いてトイレへ運んでくれたのは助かった。行けるって言ったけど、体を起こした時にくらくらしたから。
その後は、強制的にご飯の時間が始まった。全然、お腹空いてないのに、食べないと駄目だって、緋色も常陸丸も言う。お粥を頼まれそうだったから、最近食べられるようになったものを注文してみた。
「おににり」
「お前……。本当にちゃんと食べられるんだろうな?」
二人ともに呆れたような顔をされた。さっきから何? ……俺、何かしたかな?
海苔の付いてない小さなおにぎりを口に入れる。噛むのに苦労した……。何でだ? 飲み込めない。
「ほら、みろ。だから粥にしろって言ったんだ」
自分のご飯を食べながら緋色が言う。
「出せ。粥も頼んどいたから、そっちにしろ」
常陸丸まで、そんなことを言う。ずっと、おにぎりの一口目を噛みながら首を傾げていると、口に手を突っ込まれて出された。
「お前、鬼ごっこの後二日間目を覚まさなくて、何回か呼吸も止まって死にかけてたんだよ。目を覚ましたと思ったら喋れないし、自分のことが成人だってことも分かってねえし」
え? 覚えてない。
口にお粥を突っ込まれて食べる。気分じゃない。
「ジュチュのむ」
俺はぁ、ミックスジュースがぁ、飲みたいぃ。
ふて腐れてお粥を食べていると、緋色と常陸丸が驚いた顔で見ている。
「我儘言ってるぞ」
「我儘言ってますね」
「……成人、痛いとこあるか?」
ここ痛い、と左のこめかみを指差すと、二人で顔を見合わせて笑う。
何だよー。
「我儘こぞう、お前はもうミックスジュースは飲んだんだよ」
「さっき起きたときに、な」
「のんえあい」
「何言ってるか分かりませーん」
緋色が楽しそうに笑ってる。また、お粥が口に入った。むぅ。
突然、常陸丸が立ち上がってソファに向かった。寝ていた斎が身動ぎしたらしい。
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