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第一章 初めての幸せ
15 成人 3
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殺せ、殺せ、と声がする。途切れ途切れに、映像がうつる。
緋色の写真。
大好き。
殺せ、殺せ。
頭が痛くて、目が開けられない。戦争は終わったのに、指令が届き始めた。強制力はない程度? それとも、俺が壊れたから大丈夫なのか?
ああ、地獄からお迎えが。
「成人。大丈夫か? そろそろご飯を食べないと、元気になれないぞ」
緋色の声がする。
頭の中の声が、小さくなる。
成人。そう、そう呼んでくれたら、頭の中の、声が……。
目を開けられないでいると、口に柔らかいものが押し当てられ、水が入ってきた。
おいしい。
こくり、と飲むともう一回。
おいしい。
唇が気持ちいい。
頭痛が止んで、目を開ける。
心配そうな緋色の顔が、すぐ側にあった。
ひいろ。
ほっとしたように、緋色が少し笑う。
「ずいぶん苦しそうだったからな。水はもう少し飲めるか? 俺は、今から出掛けなくちゃならない」
みず。
緋色が口に水を含んで、俺の唇に唇を押し付けた。水が流れてくる。
何これ。おいしい。気持ちいい。
「……」
何かを言わなくてはならない。おいしい? 気持ちいい? 出かけないで? もっと、欲しい?
違う。
何だろう。
「では、行ってくる。生松、後は頼んだ」
「はい、お気をつけください。常陸丸さまも」
「成人。飴、持ってろ。お前、元気無さすぎだ。帰ってきたら、口に入れてやるからな」
常陸丸が、右手に飴を握らせてくれた。
ああ、飴だ。食べたいな。早く、帰ってきて。
……違う。
緋色と常陸丸が出ていった。窓の外が騒がしい。たくさんの人の気配。そこから。その辺りから、何か。
殺せ!
間違いようのない指令。
体が跳ね上がる。窓へ勢いを付けて突っ込む。三階? 指令を出しているのは、誰だ。マイクの前に立つ緋色と、その横に帝国軍の軍服を着た男。
いた!
群衆の中から、小さな体が素早く飛び出してくる。緋色の前へ。2体の戦闘人形。緋色の後ろに控えていた常陸丸の銃が、的確に2体を撃ち抜く。
「成人!」
生松の声。俺は、窓を蹴破り、狙い通りに、緋色の横にいた帝国軍人を蹴りつけながら落ちた。
「常陸丸、撃つな!」
緋色の声。ああ、指令の声が小さくなる。右手を握りしめて、血を吐いて倒れている帝国軍人を殴る。指令違反。頭がねじきれそうだ。胃液が上がってきて盛大に吐く。
「なぜ、なぜだ……。戦闘人形が私を?」
「成人!」
そう、俺は、成人だから。だから。
「成人、成人、しっかりしろ」
「……成人、こいつが、何かしてるんだな」
常陸丸の言葉に頷く。すぐに、銃声が響いて、頭痛が消えた。
握りしめていた右手を開く。ああ、飴が……。
「成人……」
はい。
緋色が名前を呼んでくれる。緋色が無事で良かったな……。
緋色の写真。
大好き。
殺せ、殺せ。
頭が痛くて、目が開けられない。戦争は終わったのに、指令が届き始めた。強制力はない程度? それとも、俺が壊れたから大丈夫なのか?
ああ、地獄からお迎えが。
「成人。大丈夫か? そろそろご飯を食べないと、元気になれないぞ」
緋色の声がする。
頭の中の声が、小さくなる。
成人。そう、そう呼んでくれたら、頭の中の、声が……。
目を開けられないでいると、口に柔らかいものが押し当てられ、水が入ってきた。
おいしい。
こくり、と飲むともう一回。
おいしい。
唇が気持ちいい。
頭痛が止んで、目を開ける。
心配そうな緋色の顔が、すぐ側にあった。
ひいろ。
ほっとしたように、緋色が少し笑う。
「ずいぶん苦しそうだったからな。水はもう少し飲めるか? 俺は、今から出掛けなくちゃならない」
みず。
緋色が口に水を含んで、俺の唇に唇を押し付けた。水が流れてくる。
何これ。おいしい。気持ちいい。
「……」
何かを言わなくてはならない。おいしい? 気持ちいい? 出かけないで? もっと、欲しい?
違う。
何だろう。
「では、行ってくる。生松、後は頼んだ」
「はい、お気をつけください。常陸丸さまも」
「成人。飴、持ってろ。お前、元気無さすぎだ。帰ってきたら、口に入れてやるからな」
常陸丸が、右手に飴を握らせてくれた。
ああ、飴だ。食べたいな。早く、帰ってきて。
……違う。
緋色と常陸丸が出ていった。窓の外が騒がしい。たくさんの人の気配。そこから。その辺りから、何か。
殺せ!
間違いようのない指令。
体が跳ね上がる。窓へ勢いを付けて突っ込む。三階? 指令を出しているのは、誰だ。マイクの前に立つ緋色と、その横に帝国軍の軍服を着た男。
いた!
群衆の中から、小さな体が素早く飛び出してくる。緋色の前へ。2体の戦闘人形。緋色の後ろに控えていた常陸丸の銃が、的確に2体を撃ち抜く。
「成人!」
生松の声。俺は、窓を蹴破り、狙い通りに、緋色の横にいた帝国軍人を蹴りつけながら落ちた。
「常陸丸、撃つな!」
緋色の声。ああ、指令の声が小さくなる。右手を握りしめて、血を吐いて倒れている帝国軍人を殴る。指令違反。頭がねじきれそうだ。胃液が上がってきて盛大に吐く。
「なぜ、なぜだ……。戦闘人形が私を?」
「成人!」
そう、俺は、成人だから。だから。
「成人、成人、しっかりしろ」
「……成人、こいつが、何かしてるんだな」
常陸丸の言葉に頷く。すぐに、銃声が響いて、頭痛が消えた。
握りしめていた右手を開く。ああ、飴が……。
「成人……」
はい。
緋色が名前を呼んでくれる。緋色が無事で良かったな……。
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