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77 役目
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ベッドにうずくまっているくろは、まるでくつろいでいるようだ。
動けずにいると、ノックの音がした。返事に答えて入ってきたのは、宰相と国王ハバキであった。
「雨が止んだ。何かあったのだろうか。」
宰相が入室しながら言う。言われてみると確かに、雨の音が止んでいる。
「ああ。くろが落ち着いているから、かな。」
イズモの声に、揃ってそちらを向いた二人が息を呑んだ。
「そ、れは……?」
「これが、くろだよ。塔の悪魔と呼ばれている。」
「なんだと?」
そう言ったハバキのもとに、むくりと起き上がった黒い塊が動く。手足が見える訳ではないが、小型の犬が駆け寄っているようだった。
「ひっ。」
国王の声に、扉を開けたまま部屋の外に控えていた護衛が入ってくる。くろを見て剣を構えたが、どうしたらいいのか分からず、動きを止めた。
「ムラクモ様の神力を慕うようです。」
ワカヒコが宰相に向かって説明した。
「……なるほど。」
頷いた宰相が、考え込む。
イズモの腕のなかでぐんにゃりしているヤクモを見て、くろに怯えるハバキを見た。
「……王族に懐く、ということですか?先程までは、ヤクモ様のところに?」
「ああ。でも、ヤクモとは繋げないよ。僕とこれからの人生を楽しむのだから。」
「はい。大丈夫です……。」
宰相は、イズモにしっかりと返事をしてから考え込む。
「……陛下に、これを離宮まで運んでもらいましょう。ヤクモ様は動けないし、ムラクモ様の血筋に懐くのであれば……。離宮に入ればノバラ…様もおります。」
「何を言っている!」
ハバキが声を張り上げた。
「私に、悪魔をとり憑かせようというのか!」
「くろは、ムラクモの使い魔だよ。悪魔というのは、誰かが勝手にそう呼んだだけ。」
イズモの声には反応せずに、ハバキは宰相を睨んだ。
「この国の王に、得体の知れぬものを憑けようとするなど、気でも違ったか、宰相。」
「離宮までお運び頂きたいだけです。これをこのまま城に置いておくわけには参りますまい。他の血筋の御方を早急に呼び出すにも、時間がありません。」
「リンドウに、リンドウなら。」
「あなたは……。まだ、他人に役目を押し付け続けるのですか。」
「それは、王たる私の役目では無かろう。」
「いえ。役目かと思われます。封印は、姫でなくてもよいと分かったのです。ならば、血筋の長たるあなた様が、せめて封印の場所までお連れするべきかと。」
宰相は、じっと王を見た。ハバキは、瞳を揺らして宰相とは目を合わせず、きょろきょろとした後、ヤクモを見つめた。どうしたらいいのか分からず立ち尽くす護衛をすり抜けて、足元に寄ってくるくろに目線をやったり、ヤクモを見たりを繰り返す。
まるで、ヤクモ様の元にあれが戻れば、と思っているかのような……。
宰相はそれに気付いて、王への嫌悪感を膨らませた。あの状態のヤクモ様に?
「イズモ様。繋ぐとは、どのように?」
「ああ、あの者とは繋がったことがあるんだろう。もう……。」
イズモがそう言った時、ハバキの絶望の声が上がった。
「やめろ。やめてくれ。何故、何故わたしばかりがこんな目に……。」
動けずにいると、ノックの音がした。返事に答えて入ってきたのは、宰相と国王ハバキであった。
「雨が止んだ。何かあったのだろうか。」
宰相が入室しながら言う。言われてみると確かに、雨の音が止んでいる。
「ああ。くろが落ち着いているから、かな。」
イズモの声に、揃ってそちらを向いた二人が息を呑んだ。
「そ、れは……?」
「これが、くろだよ。塔の悪魔と呼ばれている。」
「なんだと?」
そう言ったハバキのもとに、むくりと起き上がった黒い塊が動く。手足が見える訳ではないが、小型の犬が駆け寄っているようだった。
「ひっ。」
国王の声に、扉を開けたまま部屋の外に控えていた護衛が入ってくる。くろを見て剣を構えたが、どうしたらいいのか分からず、動きを止めた。
「ムラクモ様の神力を慕うようです。」
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「……なるほど。」
頷いた宰相が、考え込む。
イズモの腕のなかでぐんにゃりしているヤクモを見て、くろに怯えるハバキを見た。
「……王族に懐く、ということですか?先程までは、ヤクモ様のところに?」
「ああ。でも、ヤクモとは繋げないよ。僕とこれからの人生を楽しむのだから。」
「はい。大丈夫です……。」
宰相は、イズモにしっかりと返事をしてから考え込む。
「……陛下に、これを離宮まで運んでもらいましょう。ヤクモ様は動けないし、ムラクモ様の血筋に懐くのであれば……。離宮に入ればノバラ…様もおります。」
「何を言っている!」
ハバキが声を張り上げた。
「私に、悪魔をとり憑かせようというのか!」
「くろは、ムラクモの使い魔だよ。悪魔というのは、誰かが勝手にそう呼んだだけ。」
イズモの声には反応せずに、ハバキは宰相を睨んだ。
「この国の王に、得体の知れぬものを憑けようとするなど、気でも違ったか、宰相。」
「離宮までお運び頂きたいだけです。これをこのまま城に置いておくわけには参りますまい。他の血筋の御方を早急に呼び出すにも、時間がありません。」
「リンドウに、リンドウなら。」
「あなたは……。まだ、他人に役目を押し付け続けるのですか。」
「それは、王たる私の役目では無かろう。」
「いえ。役目かと思われます。封印は、姫でなくてもよいと分かったのです。ならば、血筋の長たるあなた様が、せめて封印の場所までお連れするべきかと。」
宰相は、じっと王を見た。ハバキは、瞳を揺らして宰相とは目を合わせず、きょろきょろとした後、ヤクモを見つめた。どうしたらいいのか分からず立ち尽くす護衛をすり抜けて、足元に寄ってくるくろに目線をやったり、ヤクモを見たりを繰り返す。
まるで、ヤクモ様の元にあれが戻れば、と思っているかのような……。
宰相はそれに気付いて、王への嫌悪感を膨らませた。あの状態のヤクモ様に?
「イズモ様。繋ぐとは、どのように?」
「ああ、あの者とは繋がったことがあるんだろう。もう……。」
イズモがそう言った時、ハバキの絶望の声が上がった。
「やめろ。やめてくれ。何故、何故わたしばかりがこんな目に……。」
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