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75 罪と罰
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「それでは、ノバラ様には離宮に戻って頂きます。」
離宮の使用人を全て連れてきて、聞き取りもすんだ宰相が、ようやくノバラに声をかけた。ずっと、ベッドの上から睨んでいるのを放っておいたのだ。もし口がきけていたら、今頃は散々に反論の言葉を吐いていたのだろう。……神力を、これでもかと乗せて。
本当に、恐ろしいことだ。人を言葉で操れるとは。イズモ様に、口をふさいでもらっていて良かった、と宰相は思った。
ずっと離宮に住んでいて、何の仕事もせず暮らしていた王妃とは、大して面識もない。社交の時には出てくるが、ただ楽しんで帰っていった。
それを、誰も何とも思っていなかった。世の中は、ノバラの過ごしやすいようにできていて、ノバラの思う通りに回っていた。
もう、十分楽しまれたことだろう。数多の犠牲の上に。これからは、今までの分も仕事をして頂こう。
「封印を、離宮にて展開して頂くことに致しました。王宮には、国を治めるために必要なものがたくさんありますので、封じられると困るのです。」
ぶるぶるとノバラは身を震わせている。怯えているのではなく、怒りに身を震わせているのだと、その表情が物語っていた。
「ノバラ様は、これからリンドウ様と楽しく暮らすことをお望みです。」
侍女が、口を挟む。
ああ、忘れていた、と宰相は侍女の方を向いた。そのまま、廊下に向かって声をかける。控えさせていた衛兵と部下が入ってきた。
「この者をヤクモ殿下への虐待、不敬罪諸々の罪で拘束する。ヤクモ殿下に行ったことを全て、同じように体験させよう。まずは、コルセットを骨が傷むほどしめねばならない。その上で、牢に入れておいてくれ。食事は三日に一度くらいか?食事の時に姿勢が乱れていたり涎を見せたりしたら、鞭で打てばよいのだったな。コルセットを締めるときにうるさく騒いだなら、喉を潰そう。後で見に行くから、牢へいれておいてくれ。」
それらの言葉を聞いても、侍女の様子は変わらなかった。無表情のまま、しかし部屋から出される時に、ノバラを真摯に見やった。ノバラはただ、そちらを見るしかできない。
「あなたにも、音を立てない食事とやらを見せて頂きたいところですが、時間がない。離宮の使用人を全て出したのは、封印の場所には血筋の者か、加護を受けたものしか入れぬからだ。それ以外は、寿命を削って五日ほどで死んでしまうらしい。」
ああ、それから、と宰相は作り笑いを浮かべる。
「食べ物は届けますよ。使い魔を封じてもらわねば、この雨が長引くのは困るのです。」
王妃ノバラは、大雨の中離宮に戻された。
誰もいない離宮に、たった一人。
離宮の使用人を全て連れてきて、聞き取りもすんだ宰相が、ようやくノバラに声をかけた。ずっと、ベッドの上から睨んでいるのを放っておいたのだ。もし口がきけていたら、今頃は散々に反論の言葉を吐いていたのだろう。……神力を、これでもかと乗せて。
本当に、恐ろしいことだ。人を言葉で操れるとは。イズモ様に、口をふさいでもらっていて良かった、と宰相は思った。
ずっと離宮に住んでいて、何の仕事もせず暮らしていた王妃とは、大して面識もない。社交の時には出てくるが、ただ楽しんで帰っていった。
それを、誰も何とも思っていなかった。世の中は、ノバラの過ごしやすいようにできていて、ノバラの思う通りに回っていた。
もう、十分楽しまれたことだろう。数多の犠牲の上に。これからは、今までの分も仕事をして頂こう。
「封印を、離宮にて展開して頂くことに致しました。王宮には、国を治めるために必要なものがたくさんありますので、封じられると困るのです。」
ぶるぶるとノバラは身を震わせている。怯えているのではなく、怒りに身を震わせているのだと、その表情が物語っていた。
「ノバラ様は、これからリンドウ様と楽しく暮らすことをお望みです。」
侍女が、口を挟む。
ああ、忘れていた、と宰相は侍女の方を向いた。そのまま、廊下に向かって声をかける。控えさせていた衛兵と部下が入ってきた。
「この者をヤクモ殿下への虐待、不敬罪諸々の罪で拘束する。ヤクモ殿下に行ったことを全て、同じように体験させよう。まずは、コルセットを骨が傷むほどしめねばならない。その上で、牢に入れておいてくれ。食事は三日に一度くらいか?食事の時に姿勢が乱れていたり涎を見せたりしたら、鞭で打てばよいのだったな。コルセットを締めるときにうるさく騒いだなら、喉を潰そう。後で見に行くから、牢へいれておいてくれ。」
それらの言葉を聞いても、侍女の様子は変わらなかった。無表情のまま、しかし部屋から出される時に、ノバラを真摯に見やった。ノバラはただ、そちらを見るしかできない。
「あなたにも、音を立てない食事とやらを見せて頂きたいところですが、時間がない。離宮の使用人を全て出したのは、封印の場所には血筋の者か、加護を受けたものしか入れぬからだ。それ以外は、寿命を削って五日ほどで死んでしまうらしい。」
ああ、それから、と宰相は作り笑いを浮かべる。
「食べ物は届けますよ。使い魔を封じてもらわねば、この雨が長引くのは困るのです。」
王妃ノバラは、大雨の中離宮に戻された。
誰もいない離宮に、たった一人。
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