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69 ヤクモです
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「そうだなあ。まずは、蜜を探そう。調理場で、蜜と名のつくものを片っ端からもらってきてもらおうかな?」
治すってなに?と聞かれて動揺した。また、表情が変わりそうになって、ワカヒコは必死で笑顔の仮面を貼り付ける。医師見習いの子を振り返って蜜の件を頼むと、頷いて出ていくのを見送った。
「蜜を飲むと、痛いのが無くなる?」
ヤクモは、うんと頷いた。
「ぉいしぃ。」
「それは、いいね。美味しいお薬なんて最高だ。」
「ぉくすい、なに?」
「体の痛いところや苦しいところを楽にしてくれるものだよ。苦くて飲みにくいことが多いんだ。」
すっかりワカヒコの話術にはまったヤクモを邪魔しないように、周りが見守っている気配がする。協力的なのは助かるな、とワカヒコは更に笑みを深くした。
「お話すると、喉が痛くなる?」
「ぃっつもぃたいかや、いしょ。」
「いつも痛いのかあ。それは、良くないな。」
「なんれ?」
「痛くないのが普通だからだよ。」
「ぃたくなぃ、とき、なぃよ。」
「それは。」
ぐ、とワカヒコは一度、深呼吸する。落ち着いて、冷静に。逃げられては駄目だ。絶対に、治療する。
「それは、おかしいな。よし。ワカヒコ先生が殿下の痛いのを無くしてみせよう。」
「でんか、なに?おぇ、ヤクモれす。」
「お名前……。はい、ヤクモ様。僕はワカヒコですよ。ヤクモ様の痛いのをこの手が取ってみせるからね。」
ワカヒコは、もう一度両手の平をヤクモに向けた。
ヤクモの手が伸びてきて、その手に触れる。よしよし。
そうしていると、蜜が届いた。瓶に入った蜜は三種類、それぞれ濃い琥珀色のものと透明なものと、薄い琥珀色のものだった。
ありがとう、と受け取り、ヤクモに見せる。
「ヤクモ様の美味しい蜜は、どれか分かりますか?」
ヤクモは蜜の溶けた水しか飲んでいないので、蜜の本体は見たことがなく、首を傾げた。
「色は着いていなかったと思うよ。」
ヤクモを膝の上に抱いて、黙って見守っていたイズモが、そっと口を挟む。
「ありがとうございます。では、こちらの可能性が高いですね。水に溶かしてみましょうか。」
早速、水に溶かして渡してみると、ヤクモが一口飲んでぱっと顔を輝かせた。
そのまま嬉しそうに、こくこくと飲み干す。
お。当たりか。
ただの蜜では、治療効果はないだろうけど、これに何か混ぜていたのかな。それとも、粘膜を保護するだけでもかなり良いのだろうか。これは、研究してみる価値があるな。これを勧めた医師に話を聞いてみたいものだ。
そんなことを思いながら、空になったコップを受け取る。
「これでしたか?」
うん、と頷いたヤクモがまた手を伸ばしてワカヒコの手に触れた。
「すごぃ、て。」
「ええ。そうですとも。ワカヒコにお任せください。痛いのが少なくなりましたか?」
うん、と頷くヤクモの手を、柔らかく握る。
「少し、熱いなあ。他にも良くないところがあるかも?ワカヒコに体を見せてくれませんか?」
よほど、喉が楽になったのか、ヤクモは黙って服をめくり上げた。
治すってなに?と聞かれて動揺した。また、表情が変わりそうになって、ワカヒコは必死で笑顔の仮面を貼り付ける。医師見習いの子を振り返って蜜の件を頼むと、頷いて出ていくのを見送った。
「蜜を飲むと、痛いのが無くなる?」
ヤクモは、うんと頷いた。
「ぉいしぃ。」
「それは、いいね。美味しいお薬なんて最高だ。」
「ぉくすい、なに?」
「体の痛いところや苦しいところを楽にしてくれるものだよ。苦くて飲みにくいことが多いんだ。」
すっかりワカヒコの話術にはまったヤクモを邪魔しないように、周りが見守っている気配がする。協力的なのは助かるな、とワカヒコは更に笑みを深くした。
「お話すると、喉が痛くなる?」
「ぃっつもぃたいかや、いしょ。」
「いつも痛いのかあ。それは、良くないな。」
「なんれ?」
「痛くないのが普通だからだよ。」
「ぃたくなぃ、とき、なぃよ。」
「それは。」
ぐ、とワカヒコは一度、深呼吸する。落ち着いて、冷静に。逃げられては駄目だ。絶対に、治療する。
「それは、おかしいな。よし。ワカヒコ先生が殿下の痛いのを無くしてみせよう。」
「でんか、なに?おぇ、ヤクモれす。」
「お名前……。はい、ヤクモ様。僕はワカヒコですよ。ヤクモ様の痛いのをこの手が取ってみせるからね。」
ワカヒコは、もう一度両手の平をヤクモに向けた。
ヤクモの手が伸びてきて、その手に触れる。よしよし。
そうしていると、蜜が届いた。瓶に入った蜜は三種類、それぞれ濃い琥珀色のものと透明なものと、薄い琥珀色のものだった。
ありがとう、と受け取り、ヤクモに見せる。
「ヤクモ様の美味しい蜜は、どれか分かりますか?」
ヤクモは蜜の溶けた水しか飲んでいないので、蜜の本体は見たことがなく、首を傾げた。
「色は着いていなかったと思うよ。」
ヤクモを膝の上に抱いて、黙って見守っていたイズモが、そっと口を挟む。
「ありがとうございます。では、こちらの可能性が高いですね。水に溶かしてみましょうか。」
早速、水に溶かして渡してみると、ヤクモが一口飲んでぱっと顔を輝かせた。
そのまま嬉しそうに、こくこくと飲み干す。
お。当たりか。
ただの蜜では、治療効果はないだろうけど、これに何か混ぜていたのかな。それとも、粘膜を保護するだけでもかなり良いのだろうか。これは、研究してみる価値があるな。これを勧めた医師に話を聞いてみたいものだ。
そんなことを思いながら、空になったコップを受け取る。
「これでしたか?」
うん、と頷いたヤクモがまた手を伸ばしてワカヒコの手に触れた。
「すごぃ、て。」
「ええ。そうですとも。ワカヒコにお任せください。痛いのが少なくなりましたか?」
うん、と頷くヤクモの手を、柔らかく握る。
「少し、熱いなあ。他にも良くないところがあるかも?ワカヒコに体を見せてくれませんか?」
よほど、喉が楽になったのか、ヤクモは黙って服をめくり上げた。
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