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48 誰からも求められていない子ども
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「躾……。では、やはりハレルヤなのか……。」
「ほ、ほほほほほ。」
堪えきれないように、ノバラが笑い出す。
「何がおかしい。」
声に疲れが滲んできた国王ハバキが、尋ねる。
「我が子の顔も分からぬとは、おかしくて。ほほほほ。」
「母上。何故、こんな酷いことを……?」
リンドウは、悩んだ末に口を挟んだ。どうしても、聞いてみたかった。ハレルヤをリンドウの身代わりにするためだとして、この酷い有り様は何だろう。
「食事の時に、お行儀が悪かったらそのお食事は抜きです。だから、痩せてしまったのではなくて?お行儀良くしていれば、食べられたのよ。」
「人は、食べなくては生きていけない。」
「今、生きているわ。丈夫なことね。」
「私が。私が、見張りの目を盗んで食べ物を届けておりました!」
「まあ。余計なことを。だから勝手に大きくなって、コルセットが絞まりすぎて、骨が痛いとのたうち回る羽目になったのね。」
「…………。」
リンドウは、次の言葉を絞り出すのに、だいぶ時間を要した。
「ハレルヤは、いつからか、話をしなくなりました。」
「みっともなく泣きわめくのがうるさくてね。女だと言っているのに、低い声で。もう、私、驚いてしまって。音が出ないようにしておいたわ。」
「どうして……。」
「塔へと送らなくてはならないのに、男だと知られたら困るでしょう?ほら、花嫁を送ると、皆言うものだから。」
「何故……。私が行くのではなく、ハレルヤを……。」
「私は、リンドウと共に暮らしたかった。お茶会をしたり、共に食事をするのも楽しみだったわ。そのうち、社交界にも一緒に出たかったのよ。でも、それは誰からも求められていなかったでしょう?だから、塔へ行ってもらおうと思ったの。」
「誰からも、求められていない?」
「見て、リンドウ。我が子を探す親が、子どもの顔を知らないのよ。」
扇子をぱちん、と閉じたノバラは晴れ晴れと笑っていた。リンドウが見たことも無いほど、素の表情で。
「それを塔へと返しなさい、リンドウ。私と楽しく暮らしましょう?」
しん、と静まり返る部屋のなか、外の雨の音が大きく響く。
「私は、国のために、塔へ戻ります。」
リンドウは、背筋を伸ばして母を見た。
「そう。」
ノバラは、あっさりと返事をして踵を返す。
「早くこの雨を止めてちょうだいね。離宮へ帰るのも一苦労だわ。」
「ほ、ほほほほほ。」
堪えきれないように、ノバラが笑い出す。
「何がおかしい。」
声に疲れが滲んできた国王ハバキが、尋ねる。
「我が子の顔も分からぬとは、おかしくて。ほほほほ。」
「母上。何故、こんな酷いことを……?」
リンドウは、悩んだ末に口を挟んだ。どうしても、聞いてみたかった。ハレルヤをリンドウの身代わりにするためだとして、この酷い有り様は何だろう。
「食事の時に、お行儀が悪かったらそのお食事は抜きです。だから、痩せてしまったのではなくて?お行儀良くしていれば、食べられたのよ。」
「人は、食べなくては生きていけない。」
「今、生きているわ。丈夫なことね。」
「私が。私が、見張りの目を盗んで食べ物を届けておりました!」
「まあ。余計なことを。だから勝手に大きくなって、コルセットが絞まりすぎて、骨が痛いとのたうち回る羽目になったのね。」
「…………。」
リンドウは、次の言葉を絞り出すのに、だいぶ時間を要した。
「ハレルヤは、いつからか、話をしなくなりました。」
「みっともなく泣きわめくのがうるさくてね。女だと言っているのに、低い声で。もう、私、驚いてしまって。音が出ないようにしておいたわ。」
「どうして……。」
「塔へと送らなくてはならないのに、男だと知られたら困るでしょう?ほら、花嫁を送ると、皆言うものだから。」
「何故……。私が行くのではなく、ハレルヤを……。」
「私は、リンドウと共に暮らしたかった。お茶会をしたり、共に食事をするのも楽しみだったわ。そのうち、社交界にも一緒に出たかったのよ。でも、それは誰からも求められていなかったでしょう?だから、塔へ行ってもらおうと思ったの。」
「誰からも、求められていない?」
「見て、リンドウ。我が子を探す親が、子どもの顔を知らないのよ。」
扇子をぱちん、と閉じたノバラは晴れ晴れと笑っていた。リンドウが見たことも無いほど、素の表情で。
「それを塔へと返しなさい、リンドウ。私と楽しく暮らしましょう?」
しん、と静まり返る部屋のなか、外の雨の音が大きく響く。
「私は、国のために、塔へ戻ります。」
リンドウは、背筋を伸ばして母を見た。
「そう。」
ノバラは、あっさりと返事をして踵を返す。
「早くこの雨を止めてちょうだいね。離宮へ帰るのも一苦労だわ。」
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