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47 それ
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ハレルヤを連れ帰りました。
その報告を聞いた国王は、すぐに客間へと足を向けた。
医者が、ベッドで寝ている子どもの服を脱がして診察している。
「これが……?」
身体中に広がる、折檻の痕。鞭の痕。ひきつれ、えぐれ、不自然に盛り上がる皮膚。肋の浮いた折れそうに細い体。
医者は、恐る恐る体を確かめて服を元に戻した。ハレルヤと報告された子どもは、目も開かず、なされるがまま、赤い顔で荒い呼吸を繰り返すばかりだった。
「これが、ハレルヤ……?」
リンドウは黙って頷く。他に誰も、反応はしなかった。
「は。馬鹿な。ハレルヤは十四歳のはずだ。これは、どう見てもその年齢に達していない。」
「塔の中で、塔の御方と神力を練っていました。そんなことができるのは、ムラクモ様の血筋の者のみ。」
「ハレルヤが、ハレルヤが戻って来たと、お聞きしました……!」
シラギクが客間へ飛び込んできた。美貌も損なうほどにやつれて、ふらふらとしていた。
「シラギク。」
国王は、妃を冷めた目で見つめる。国王が目覚めてから、二人の関係はよろしくなかった。ハレルヤを失っていたからだ。
「これが、ハレルヤなのか?」
シラギクは、ベッドにふらふらと近寄った。荒い呼吸を繰り返す子どもが寝ている。
「…………。」
分からなかった。
その顔を見ても、それが我が子かどうか分からなかった。
せめて、目を開けていれば……。いや……。ハレルヤは……。
「シラギク。ハレルヤなのかと聞いている。」
苛立つ国王ハバキの声を聞いても、答えることはできない。これが、ハレルヤ?小さすぎないだろうか。
「リンドウ。お前は離宮にいたから知っている、ということか。」
「いえ。私は会ったことはありません。」
「誰なら、分かるのか。」
誰も、分からない。
この国の王子の顔を、誰も知らない。
「この傷だらけの子どもがハレルヤだと、お前だけが言っている。」
「顔は分からない。けれど、この子は離宮にいました。母が、感染症の妹が住んでいると言っていた部屋に。」
「母……!そうか。ノバラだ。ノバラを連れてこい。」
外の雨の音と、子どもの荒い呼吸だけが響く部屋に、王妃ノバラはやってきた。のんびりと歩いて。後ろに騎士を二人従えて。
「ノバラ。」
国王ハバキが、憎々し気にその名を口にする。ノバラは、手にしていた扇子を広げて、口元を隠した。
「十六年ぶりでございますね、陛下。」
「どうでもいい。この子どもは、ハレルヤか。」
ノバラは、ベッドに近寄りもせずに、そちらをちらりと見る。
「ハレルヤとは?」
「我が子の名前だ!お前が離宮へ連れ去った、我が子の。」
「それの名前など、聞いたこともありませぬ。」
淡々と、ノバラは言った。
「な……に…?」
「ご用件は、以上でございますか?」
「お前、お前が、ハレルヤをこれほど虐げたのか!」
くすり、とノバラは笑った。口元を上品に隠したまま。
「それは、ハレルヤと言うのですね。いいえ、私は何もしておりませんよ。」
「この子どもは、身体中に酷い傷痕がある。覚えは?」
「それの躾を任されたので、躾は致しました。私はただ、指導したのみ。手を上げるなんて、しておりません、私は。」
その報告を聞いた国王は、すぐに客間へと足を向けた。
医者が、ベッドで寝ている子どもの服を脱がして診察している。
「これが……?」
身体中に広がる、折檻の痕。鞭の痕。ひきつれ、えぐれ、不自然に盛り上がる皮膚。肋の浮いた折れそうに細い体。
医者は、恐る恐る体を確かめて服を元に戻した。ハレルヤと報告された子どもは、目も開かず、なされるがまま、赤い顔で荒い呼吸を繰り返すばかりだった。
「これが、ハレルヤ……?」
リンドウは黙って頷く。他に誰も、反応はしなかった。
「は。馬鹿な。ハレルヤは十四歳のはずだ。これは、どう見てもその年齢に達していない。」
「塔の中で、塔の御方と神力を練っていました。そんなことができるのは、ムラクモ様の血筋の者のみ。」
「ハレルヤが、ハレルヤが戻って来たと、お聞きしました……!」
シラギクが客間へ飛び込んできた。美貌も損なうほどにやつれて、ふらふらとしていた。
「シラギク。」
国王は、妃を冷めた目で見つめる。国王が目覚めてから、二人の関係はよろしくなかった。ハレルヤを失っていたからだ。
「これが、ハレルヤなのか?」
シラギクは、ベッドにふらふらと近寄った。荒い呼吸を繰り返す子どもが寝ている。
「…………。」
分からなかった。
その顔を見ても、それが我が子かどうか分からなかった。
せめて、目を開けていれば……。いや……。ハレルヤは……。
「シラギク。ハレルヤなのかと聞いている。」
苛立つ国王ハバキの声を聞いても、答えることはできない。これが、ハレルヤ?小さすぎないだろうか。
「リンドウ。お前は離宮にいたから知っている、ということか。」
「いえ。私は会ったことはありません。」
「誰なら、分かるのか。」
誰も、分からない。
この国の王子の顔を、誰も知らない。
「この傷だらけの子どもがハレルヤだと、お前だけが言っている。」
「顔は分からない。けれど、この子は離宮にいました。母が、感染症の妹が住んでいると言っていた部屋に。」
「母……!そうか。ノバラだ。ノバラを連れてこい。」
外の雨の音と、子どもの荒い呼吸だけが響く部屋に、王妃ノバラはやってきた。のんびりと歩いて。後ろに騎士を二人従えて。
「ノバラ。」
国王ハバキが、憎々し気にその名を口にする。ノバラは、手にしていた扇子を広げて、口元を隠した。
「十六年ぶりでございますね、陛下。」
「どうでもいい。この子どもは、ハレルヤか。」
ノバラは、ベッドに近寄りもせずに、そちらをちらりと見る。
「ハレルヤとは?」
「我が子の名前だ!お前が離宮へ連れ去った、我が子の。」
「それの名前など、聞いたこともありませぬ。」
淡々と、ノバラは言った。
「な……に…?」
「ご用件は、以上でございますか?」
「お前、お前が、ハレルヤをこれほど虐げたのか!」
くすり、とノバラは笑った。口元を上品に隠したまま。
「それは、ハレルヤと言うのですね。いいえ、私は何もしておりませんよ。」
「この子どもは、身体中に酷い傷痕がある。覚えは?」
「それの躾を任されたので、躾は致しました。私はただ、指導したのみ。手を上げるなんて、しておりません、私は。」
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