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46 連れ帰りました
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吐瀉物を洗い、少し大きいがリンドウの寝間着を着せて、ハレルヤ(仮)を馬車に乗せた。
ぐったりと目をつぶって、がたがたと震えているので、膝の上に乗せて抱きしめた。
ソハヤが眉をしかめる。
「リンドウ。危険だ。よこせ。」
「危険?こんなに震えて、かわいそうに。何故もっと配慮して濡らしたタオルで拭くとかできないのか。これは本当に風邪を引くぞ。こんなに細いのに……。」
ふと、思い出す。
リンドウの差し出した食べ物を引ったくるように奪って食べていた。
血痕だらけの、狭い部屋の住人。
やはり。これは。
「ハレルヤ。」
返事はない。いつも通りに。
「ハレルヤ。」
リンドウは、弟を抱きしめて泣いた。
間違いない。これは、ハレルヤ。あの部屋の住人。私と母の罪の証。
「私の声が分かるか。ハレルヤ。すまない。救うのがこんなにも遅くなって、すまない……。」
「リンドウ。」
ソハヤが、その言葉の意味を尋ねようとした時だった。
突然、ものすごい勢いで雨が降り始めた。馬車の中で耳が痛いほどの音が響く。
それは、誰も経験したことの無い大雨だった。大きな雨粒が降り注いでいる。塔に花嫁がおらず、ずっと晴れた空が見えなかった時でさえ、こんなに激しく雨が降ることはなかった。
そう。
きっと、塔の御方が一人で頑張ってくれていたのだ。しとしとと続く雨は、人々の心を暗くしたけれども、その雨で何かが流されるほどの被害が出たりはしていない。作物の育ちは悪かったが、育たないわけではなかった。
私は、塔へ帰らなくては。
リンドウは思う。
イズモ様の手助けをするために、塔へ帰らなくては。
けれど、ハレルヤをしっかりと父へ渡さなければ安心できない。
どうか、二日お待ちください。
馬車は、大雨に止まることもできず必死で進み、城へと入った。川の側にいたので、離れなければならなかったのだ。
雨は一時では止まずに降り続き、ハレルヤを城へ預けたら塔へと戻ろうと考えていたリンドウは、すぐには戻れなくなった。
仕方なく、神力を使えるようになるまでの少しの期間を過ごした客間へと向かう。ハレルヤは、ソハヤが抱いていた。いくら、小さくて軽いとはいえ、女のリンドウが抱いて移動するのは無理だったのだ。
ハレルヤは、馬車の中で目を閉じた後、二度と目を開けなかった。あんなにうるさい雨音にもぴくりとも反応せず、何故か穏やかな顔でリンドウの腕に抱かれていた。
次第に、その体は熱をもって、呼吸も苦しそうになってきたけれど、起きることはなかった。
馬車から下ろしても、こうして抱いて運んでも、何の反応も無かった。ただ、予想通りに熱は上がってきているようで、呼吸だけが苦しそうになっていく。
「何故、あんな風に水をかけた。足だけ洗ったソハヤが冷たいと言うような水を。」
リンドウは、苛々しながら客間を遠慮無く開けて、ハレルヤをベッドに寝かせるように指示する。三日前に出た部屋は、綺麗に整っていた。
「リンドウ様。」
後ろから、城の者が幾人か付いてきているのは気付いていた。
「医者を呼べ。それと、国王陛下に報告を。ハレルヤを連れ帰りました、と。」
ぐったりと目をつぶって、がたがたと震えているので、膝の上に乗せて抱きしめた。
ソハヤが眉をしかめる。
「リンドウ。危険だ。よこせ。」
「危険?こんなに震えて、かわいそうに。何故もっと配慮して濡らしたタオルで拭くとかできないのか。これは本当に風邪を引くぞ。こんなに細いのに……。」
ふと、思い出す。
リンドウの差し出した食べ物を引ったくるように奪って食べていた。
血痕だらけの、狭い部屋の住人。
やはり。これは。
「ハレルヤ。」
返事はない。いつも通りに。
「ハレルヤ。」
リンドウは、弟を抱きしめて泣いた。
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「リンドウ。」
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突然、ものすごい勢いで雨が降り始めた。馬車の中で耳が痛いほどの音が響く。
それは、誰も経験したことの無い大雨だった。大きな雨粒が降り注いでいる。塔に花嫁がおらず、ずっと晴れた空が見えなかった時でさえ、こんなに激しく雨が降ることはなかった。
そう。
きっと、塔の御方が一人で頑張ってくれていたのだ。しとしとと続く雨は、人々の心を暗くしたけれども、その雨で何かが流されるほどの被害が出たりはしていない。作物の育ちは悪かったが、育たないわけではなかった。
私は、塔へ帰らなくては。
リンドウは思う。
イズモ様の手助けをするために、塔へ帰らなくては。
けれど、ハレルヤをしっかりと父へ渡さなければ安心できない。
どうか、二日お待ちください。
馬車は、大雨に止まることもできず必死で進み、城へと入った。川の側にいたので、離れなければならなかったのだ。
雨は一時では止まずに降り続き、ハレルヤを城へ預けたら塔へと戻ろうと考えていたリンドウは、すぐには戻れなくなった。
仕方なく、神力を使えるようになるまでの少しの期間を過ごした客間へと向かう。ハレルヤは、ソハヤが抱いていた。いくら、小さくて軽いとはいえ、女のリンドウが抱いて移動するのは無理だったのだ。
ハレルヤは、馬車の中で目を閉じた後、二度と目を開けなかった。あんなにうるさい雨音にもぴくりとも反応せず、何故か穏やかな顔でリンドウの腕に抱かれていた。
次第に、その体は熱をもって、呼吸も苦しそうになってきたけれど、起きることはなかった。
馬車から下ろしても、こうして抱いて運んでも、何の反応も無かった。ただ、予想通りに熱は上がってきているようで、呼吸だけが苦しそうになっていく。
「何故、あんな風に水をかけた。足だけ洗ったソハヤが冷たいと言うような水を。」
リンドウは、苛々しながら客間を遠慮無く開けて、ハレルヤをベッドに寝かせるように指示する。三日前に出た部屋は、綺麗に整っていた。
「リンドウ様。」
後ろから、城の者が幾人か付いてきているのは気付いていた。
「医者を呼べ。それと、国王陛下に報告を。ハレルヤを連れ帰りました、と。」
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