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39 散歩
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塔の出口を出るのは、かなり勇気のいることだった。ヤクモは、そのほんの一歩が踏み出せずに、中のイズモを振り返り、前を向いて外で待つトキを見る、という動作を繰り返している。
二人は何も言わずに、ただそこで待っていた。ヤクモの不安な気持ちは察せられるので、笑顔で待った。
やがて、ミカゲとヒカゲも現れて、おや、と足を止めた。
何となく様子が分かったので、塔からは少し離れて見守る。
イズモ様が一緒ならいいのに。
そんな声が聞こえた気がして、イズモは、本当にね、と心の中で呟いた。長い間ここにいて、どうしても出たいと強く願ったことはなかったように思う。
だから、今初めて、塔から出られない制約を解きたいと強く思った。
不安なヤクモの側に、ずっと居てあげたい。
それでも、それをしてしまうと、封印はたちどころに力を削がれてしまうだろう。
ただでさえ弱っていた封印が戻ったばかりで、ヤクモの神力は本人の意思で使えるものではない。イズモが、ヤクモから引き出して借りているものなのだ。誰よりも相性が良くて、素晴らしく馴染んでいるけれども。
だから、ヤクモはひとりで出掛けなくてはならない。これからも、ずっと。
イズモがそんなことを思った時だった。
ヤクモが塔から一歩を踏み出す。目をつぶって、深呼吸をして。
青空の下に立って、目を開けている。眩しそうに目が細められた。
恐る恐る振り返って、イズモを見る。
「いってらっしゃい、気をつけて。」
と、イズモは手を振った。ヤクモは、イズモの笑顔を見て、安心したようにそっと手を振り返した。
ヤクモの側に近寄ったトキが、
「いってまいります。」
と頭を下げる。トキは、用心しながらヤクモの手をそっと取った。首を傾げて見上げてくるのへ、にこりと笑顔を見せる。
「手を繋いで参りましょう。」
ヤクモの開いたままの手を、きゅと握ると、まじまじとその手を見ている。トキは、気にせずそのまま歩き出した。
今、塔へと来たばかりのミカゲが少し離れて付いてきた。護衛をしてくれるのだろう。トキは、ほっとした。ヤクモがまさかすぐに、行くと言ってくれるとは思っていなくて、けれど、せっかくの決心を無駄にしたくなくて連れ出してしまったが、自分と二人の時に何かあったらどうしようかと不安だったのだ。
トキは安心して、カナメヅカ家への道をゆっくりと歩く。ヤクモは、きょろきょろと楽しそうに周りを見回し始めた。足元は覚束ない。あまり歩くことに慣れていないのだろう。ヤクモはいつの間にか、トキの手を、きゅと握っている。トキは嬉しくて、その手をきゅ、と握り返した。
塔からカナメヅカの家までの間には、特に何も人工物は無いけれど、ヤクモは短い散歩を堪能しているようだ。
良かった、とトキは青空を見上げた。
二人は何も言わずに、ただそこで待っていた。ヤクモの不安な気持ちは察せられるので、笑顔で待った。
やがて、ミカゲとヒカゲも現れて、おや、と足を止めた。
何となく様子が分かったので、塔からは少し離れて見守る。
イズモ様が一緒ならいいのに。
そんな声が聞こえた気がして、イズモは、本当にね、と心の中で呟いた。長い間ここにいて、どうしても出たいと強く願ったことはなかったように思う。
だから、今初めて、塔から出られない制約を解きたいと強く思った。
不安なヤクモの側に、ずっと居てあげたい。
それでも、それをしてしまうと、封印はたちどころに力を削がれてしまうだろう。
ただでさえ弱っていた封印が戻ったばかりで、ヤクモの神力は本人の意思で使えるものではない。イズモが、ヤクモから引き出して借りているものなのだ。誰よりも相性が良くて、素晴らしく馴染んでいるけれども。
だから、ヤクモはひとりで出掛けなくてはならない。これからも、ずっと。
イズモがそんなことを思った時だった。
ヤクモが塔から一歩を踏み出す。目をつぶって、深呼吸をして。
青空の下に立って、目を開けている。眩しそうに目が細められた。
恐る恐る振り返って、イズモを見る。
「いってらっしゃい、気をつけて。」
と、イズモは手を振った。ヤクモは、イズモの笑顔を見て、安心したようにそっと手を振り返した。
ヤクモの側に近寄ったトキが、
「いってまいります。」
と頭を下げる。トキは、用心しながらヤクモの手をそっと取った。首を傾げて見上げてくるのへ、にこりと笑顔を見せる。
「手を繋いで参りましょう。」
ヤクモの開いたままの手を、きゅと握ると、まじまじとその手を見ている。トキは、気にせずそのまま歩き出した。
今、塔へと来たばかりのミカゲが少し離れて付いてきた。護衛をしてくれるのだろう。トキは、ほっとした。ヤクモがまさかすぐに、行くと言ってくれるとは思っていなくて、けれど、せっかくの決心を無駄にしたくなくて連れ出してしまったが、自分と二人の時に何かあったらどうしようかと不安だったのだ。
トキは安心して、カナメヅカ家への道をゆっくりと歩く。ヤクモは、きょろきょろと楽しそうに周りを見回し始めた。足元は覚束ない。あまり歩くことに慣れていないのだろう。ヤクモはいつの間にか、トキの手を、きゅと握っている。トキは嬉しくて、その手をきゅ、と握り返した。
塔からカナメヅカの家までの間には、特に何も人工物は無いけれど、ヤクモは短い散歩を堪能しているようだ。
良かった、とトキは青空を見上げた。
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