25 / 83
25 目覚めた国王
しおりを挟む
国王ハバキは、何年ぶりかにその身に神力が満ちるのを感じた。ほう、と深い息を吐いて身を起こす。なんと、清々しい気分であることか。
「陛下。」
愛しい妃シラギクの声に、にこりと笑顔を返す。ここのところ、気分の良い日が続いていたが、今日は特にすっきりとしている。
「リンドウが、輿入れしたか。」
「……リンドウ様ですか?十六の誕生パーティーはされておられたけれど、輿入れはお聞きしておりません。」
「輿入れしていない……?では、何故……?いや。今、主な政務は誰が?」
「すみません。私は、陛下とここに籠りきりで、その辺りは全く……。」
軽食を摂っている間に宰相が呼ばれた。
「このような姿ですまん。長く世話をかけたな。リンドウの輿入れが無事に済んだようで何よりだ。」
「いえ。陛下のご回復、誠に喜ばしく存じます。政務の方は、ミタマ王太子殿下が陛下の代わりを立派にお勤めあそばしてございますので滞りなく。そして、輿入れされたのはリンドウ様ではなく、リンドウ様の妹姫様と伺っております。」
「なん…だ、と?」
ハバキの怒りのこもった声に、宰相は、びくりと身を震わせる。
「妹姫とは、なんだ?」
「ず、ずっと、ご病気で離宮で静養しておられた姫君でございます。助かる見込みが無いから、リンドウ様の代わりに行くと申され、輿入れされたと伺っております。」
「それは、誰の子だ?」
「陛下とシラギク様の。」
「だまれ!女は、リンドウしかおらぬ。私とシラギクの子は男であろう!」
「は?え?」
宰相は、ぽかんと口を開けた。
そこに共にいたシラギクも。
部屋に控えていた侍従や侍女も。護衛の騎士すら。
皆、呆けたような顔をしていた。
「ミタマが王太子だと?立太子式はいつ行った?そのようなことを認めた覚えはない。私が寝込んでいるのに、どうやって立太子式ができるというのだ?ミタマに王位を継がせる気は無い。あれは、私の子ではないのだから。ハレルヤは、私の王子はどこだ?」
ハレルヤ。
そうハバキが言葉を口に乗せた時に、蒼白となったシラギクが悲鳴を上げた。
「ひぃっ。私、私は……。」
「シラギク。私たちの王子はどこにいる?」
「ノバラ、様に、言われて、離宮に預けて……。」
「ノバラはどこに?」
「離宮で、リンドウ様と妹姫様と暮らしておいでです……。」
「では、離宮に預けたハレルヤは、どこだ?その妹姫とやらの名前は?そして、私がノバラから離してリンドウを育てよと申し付けたことを覚えておるか。」
「は、その、名前……。妹姫の名前……?ノバラ様が、いや……。」
宰相は、蒼白となってその場に崩れ落ちた。
「ハレルヤを連れてまいれ。」
「……どちらに、いらっしゃるの、か。」
「探せ。見つかるまで。」
ハバキは、呆然とする人々を横目にふらふらとベッドから降りた。屈強そうな護衛騎士を呼んで手を借りる。
支えてもらいながら、ミタマの執務室と言われている部屋へと向かった。
「陛下。」
愛しい妃シラギクの声に、にこりと笑顔を返す。ここのところ、気分の良い日が続いていたが、今日は特にすっきりとしている。
「リンドウが、輿入れしたか。」
「……リンドウ様ですか?十六の誕生パーティーはされておられたけれど、輿入れはお聞きしておりません。」
「輿入れしていない……?では、何故……?いや。今、主な政務は誰が?」
「すみません。私は、陛下とここに籠りきりで、その辺りは全く……。」
軽食を摂っている間に宰相が呼ばれた。
「このような姿ですまん。長く世話をかけたな。リンドウの輿入れが無事に済んだようで何よりだ。」
「いえ。陛下のご回復、誠に喜ばしく存じます。政務の方は、ミタマ王太子殿下が陛下の代わりを立派にお勤めあそばしてございますので滞りなく。そして、輿入れされたのはリンドウ様ではなく、リンドウ様の妹姫様と伺っております。」
「なん…だ、と?」
ハバキの怒りのこもった声に、宰相は、びくりと身を震わせる。
「妹姫とは、なんだ?」
「ず、ずっと、ご病気で離宮で静養しておられた姫君でございます。助かる見込みが無いから、リンドウ様の代わりに行くと申され、輿入れされたと伺っております。」
「それは、誰の子だ?」
「陛下とシラギク様の。」
「だまれ!女は、リンドウしかおらぬ。私とシラギクの子は男であろう!」
「は?え?」
宰相は、ぽかんと口を開けた。
そこに共にいたシラギクも。
部屋に控えていた侍従や侍女も。護衛の騎士すら。
皆、呆けたような顔をしていた。
「ミタマが王太子だと?立太子式はいつ行った?そのようなことを認めた覚えはない。私が寝込んでいるのに、どうやって立太子式ができるというのだ?ミタマに王位を継がせる気は無い。あれは、私の子ではないのだから。ハレルヤは、私の王子はどこだ?」
ハレルヤ。
そうハバキが言葉を口に乗せた時に、蒼白となったシラギクが悲鳴を上げた。
「ひぃっ。私、私は……。」
「シラギク。私たちの王子はどこにいる?」
「ノバラ、様に、言われて、離宮に預けて……。」
「ノバラはどこに?」
「離宮で、リンドウ様と妹姫様と暮らしておいでです……。」
「では、離宮に預けたハレルヤは、どこだ?その妹姫とやらの名前は?そして、私がノバラから離してリンドウを育てよと申し付けたことを覚えておるか。」
「は、その、名前……。妹姫の名前……?ノバラ様が、いや……。」
宰相は、蒼白となってその場に崩れ落ちた。
「ハレルヤを連れてまいれ。」
「……どちらに、いらっしゃるの、か。」
「探せ。見つかるまで。」
ハバキは、呆然とする人々を横目にふらふらとベッドから降りた。屈強そうな護衛騎士を呼んで手を借りる。
支えてもらいながら、ミタマの執務室と言われている部屋へと向かった。
117
お気に入りに追加
755
あなたにおすすめの小説
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる