【完結】塔の悪魔の花嫁

かずえ

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25 目覚めた国王

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 国王ハバキは、何年ぶりかにその身に神力が満ちるのを感じた。ほう、と深い息を吐いて身を起こす。なんと、清々しい気分であることか。

「陛下。」

 愛しい妃シラギクの声に、にこりと笑顔を返す。ここのところ、気分の良い日が続いていたが、今日は特にすっきりとしている。

「リンドウが、輿入れしたか。」
「……リンドウ様ですか?十六の誕生パーティーはされておられたけれど、輿入れはお聞きしておりません。」
「輿入れしていない……?では、何故……?いや。今、主な政務は誰が?」
「すみません。私は、陛下とここに籠りきりで、その辺りは全く……。」

 軽食を摂っている間に宰相が呼ばれた。

「このような姿ですまん。長く世話をかけたな。リンドウの輿入れが無事に済んだようで何よりだ。」
「いえ。陛下のご回復、誠に喜ばしく存じます。政務の方は、ミタマ王太子殿下が陛下の代わりを立派にお勤めあそばしてございますので滞りなく。そして、輿入れされたのはリンドウ様ではなく、リンドウ様の妹姫様と伺っております。」
「なん…だ、と?」

 ハバキの怒りのこもった声に、宰相は、びくりと身を震わせる。

「妹姫とは、なんだ?」
「ず、ずっと、ご病気で離宮で静養しておられた姫君でございます。助かる見込みが無いから、リンドウ様の代わりに行くと申され、輿入れされたと伺っております。」
「それは、誰の子だ?」
「陛下とシラギク様の。」
「だまれ!女は、リンドウしかおらぬ。私とシラギクの子は男であろう!」
「は?え?」

 宰相は、ぽかんと口を開けた。
 そこに共にいたシラギクも。
 部屋に控えていた侍従や侍女も。護衛の騎士すら。
 皆、呆けたような顔をしていた。
 
「ミタマが王太子だと?立太子式はいつ行った?そのようなことを認めた覚えはない。私が寝込んでいるのに、どうやって立太子式ができるというのだ?ミタマに王位を継がせる気は無い。あれは、私の子ではないのだから。ハレルヤは、私の王子はどこだ?」

 ハレルヤ。
 そうハバキが言葉を口に乗せた時に、蒼白となったシラギクが悲鳴を上げた。

「ひぃっ。私、私は……。」
「シラギク。私たちの王子はどこにいる?」
「ノバラ、様に、言われて、離宮に預けて……。」
「ノバラはどこに?」
「離宮で、リンドウ様と妹姫様と暮らしておいでです……。」
「では、離宮に預けたハレルヤは、どこだ?その妹姫とやらの名前は?そして、私がノバラから離してリンドウを育てよと申し付けたことを覚えておるか。」
「は、その、名前……。妹姫の名前……?ノバラ様が、いや……。」

 宰相は、蒼白となってその場に崩れ落ちた。

「ハレルヤを連れてまいれ。」
「……どちらに、いらっしゃるの、か。」
「探せ。見つかるまで。」

 ハバキは、呆然とする人々を横目にふらふらとベッドから降りた。屈強そうな護衛騎士を呼んで手を借りる。
 支えてもらいながら、ミタマの執務室と言われている部屋へと向かった。
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