【完結】塔の悪魔の花嫁

かずえ

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17 誰に褒めてもらえなくとも

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 国王が寝込む日が多くなった。神力の枯渇によるものらしい。塔の悪魔を封印する力が弱まり、形だけだったはずの儀式で力が引っ張られているのだろう。と、ノバラは気付いているが、他の者にはよく分かっていないようだった。
 国王の不調に乗じて、娘の育てられている離宮に居を移した。
 ノバラは気付いていた。神力をことに乗せると、嘘も真になることに。あっけないほど、誰も彼女の言葉を疑わなかった。ハバキ王太子に懐妊させられたと言った時も。ハバキ王と側妃の子が女だと言って回っているときも。すべては真実となった。
 不調のハバキ王の側に侍り、世話をしていた側妃に、あなたの子も私が離宮で育てましょう、と言えば喜んで預けてきた。もともと、乳母に預けていた子である。離れていた時間を埋めるように、ハバキと側妃シラギクは二人で過ごすことが多かった。ハバキが不調であれば尚更、二人の時間は長くなる。シラギクはそれを喜んでいるようにすら見えた。
 シラギクの子を離宮に移し、女装をさせる。連れてきた当初は、本人の抵抗が激しくてかなり苦労したが、体が大きくなりすぎないようにと食事を調整しているうちに大人しくなった。
 言の葉は、神力が強いものには効かないらしい。ハバキも、ハバキの子どもたちにも。特にリンドウは、ハバキとノバラという直系同士の子であるので、全く効かなかった。自分と遠ざけて、社交界にも出さずに育てるしかなく、歯がゆい思いをした。ミタマも、ハバキの子では無いが直系の自分の子であるので、言の葉は効かないと思った方が良いだろう。だから、離宮には連れてこなかった。王太子教育を急がなければならない、という理由もある。ハバキにもしものことがあれば王となるのだから。例え、ハバキの血を引いていなくとも、ノバラの血が入っていることで血筋の力が顕現し、誰も疑いすらしていなかった。
 真実を知るのは、ハバキとノバラのみ。
 そして、そんなことはノバラにはどうでもよかった。ノバラがやることは、リンドウを塔に送られないようにすること。そのためなら、何でもやろう。
 彼女は頑張った。いっそ、粗相をした侍女を塔へ送ってみたらどうかと試してもみたが、一人は早々に逃げ出してしまい、もう一人は干からびて死んだという。やはり、ムラクモの神力が必要なのだ、と確信した。答えは出た。それなら、使わせてもらおう。両親に忘れられているあの子を塔に送り、この長き戦いを終わらせよう。
 彼女は、やり遂げた。
 誰に褒められなくても、自分と大切な娘を守ったのだ。
 
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