【完結】塔の悪魔の花嫁

かずえ

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14 誕生パーティー

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 もう三年は人々の前に姿を見せなかったリンドウ姫の十六の誕生日に、誕生パーティーが開かれた。生まれた時から、塔の花嫁として育てると国王が宣言していた姫である。このパーティがすんだら、いよいよ輿入れなのだろうと人々は噂していた。
 しかし、体調を崩してパーティを欠席した国王の代わりに挨拶をした王妃は、リンドウ姫ではなく、腹違いの妹がすでに輿入れしたと告げた。

「少し年若いが、病気でこのまま儚くなる命なら、姉の代わりに自分が行くと申し出てくれたのです。」

 抑えきれない喜びを扇子で隠して王妃ノバラは声を張り上げる。

「これで、昨今の長雨も地震いも解消されましょう。リンドウは、社交界に復帰致します。皆様、これからも王家のためにご尽力くださりませ。」

 ざわめきはなかなか収まらなかったが、めでたい席である。無粋なことをいつまでも言っていても始まらないと、リンドウ姫の誕生日を祝うことにした。
 どんな姫が現れるだろう、と期待する人々の前に、凛々しいすらりとした美人が現れて挨拶をする。

「この度は、誕生日を祝って頂き、嬉しく思う。しかし、私の預かり知らぬ妹とやらが、すでに輿入れしているとの母上のお話に、驚きを禁じ得ない。私は、年下の、ましてや病気の者を身代わりにしてまで助かりたいなどと思ってはいないからだ。」

 人々がしん、と静まり返る中で、姫の不機嫌な声が続く。

「何故、当事者である私が何も知らないのかについての説明を聞かなくてはいけないので、私はこれで失礼する。皆は、折角なので楽しんでいかれるがよい。ただし、昨今の長雨で作物の実りが悪いと聞く。民の窮乏を鑑み、無駄なことはなきようにお食事を楽しまれるよう、お考え頂きたい。」

 それだけを述べると、さっさと引っ込んでしまった。王妃が慌てて後を追ったので、残った王太子が、あ然とする人々の前で乾杯の音頭を取った。

「母と妹には私から話を聞こう。とりあえず楽しんでくれ。」

 乾杯が終わり人々が飲み物を飲むのを見届けると、王太子も退出してしまった。王太子も輿入れの話は知らず、母である王妃のげんに驚いていたので、話を聞きに行ったのだ。
 順に、王太子とリンドウ姫に挨拶をしようと準備していた人々は、何をしにここへ来たのか分からぬまま、主役不在のパーティーで時間を潰すことになったのだった。
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