14 / 83
14 誕生パーティー
しおりを挟む
もう三年は人々の前に姿を見せなかったリンドウ姫の十六の誕生日に、誕生パーティーが開かれた。生まれた時から、塔の花嫁として育てると国王が宣言していた姫である。このパーティがすんだら、いよいよ輿入れなのだろうと人々は噂していた。
しかし、体調を崩してパーティを欠席した国王の代わりに挨拶をした王妃は、リンドウ姫ではなく、腹違いの妹がすでに輿入れしたと告げた。
「少し年若いが、病気でこのまま儚くなる命なら、姉の代わりに自分が行くと申し出てくれたのです。」
抑えきれない喜びを扇子で隠して王妃ノバラは声を張り上げる。
「これで、昨今の長雨も地震いも解消されましょう。リンドウは、社交界に復帰致します。皆様、これからも王家のためにご尽力くださりませ。」
ざわめきはなかなか収まらなかったが、めでたい席である。無粋なことをいつまでも言っていても始まらないと、リンドウ姫の誕生日を祝うことにした。
どんな姫が現れるだろう、と期待する人々の前に、凛々しいすらりとした美人が現れて挨拶をする。
「この度は、誕生日を祝って頂き、嬉しく思う。しかし、私の預かり知らぬ妹とやらが、すでに輿入れしているとの母上のお話に、驚きを禁じ得ない。私は、年下の、ましてや病気の者を身代わりにしてまで助かりたいなどと思ってはいないからだ。」
人々がしん、と静まり返る中で、姫の不機嫌な声が続く。
「何故、当事者である私が何も知らないのかについての説明を聞かなくてはいけないので、私はこれで失礼する。皆は、折角なので楽しんでいかれるがよい。ただし、昨今の長雨で作物の実りが悪いと聞く。民の窮乏を鑑み、無駄なことはなきようにお食事を楽しまれるよう、お考え頂きたい。」
それだけを述べると、さっさと引っ込んでしまった。王妃が慌てて後を追ったので、残った王太子が、あ然とする人々の前で乾杯の音頭を取った。
「母と妹には私から話を聞こう。とりあえず楽しんでくれ。」
乾杯が終わり人々が飲み物を飲むのを見届けると、王太子も退出してしまった。王太子も輿入れの話は知らず、母である王妃の言に驚いていたので、話を聞きに行ったのだ。
順に、王太子とリンドウ姫に挨拶をしようと準備していた人々は、何をしにここへ来たのか分からぬまま、主役不在のパーティーで時間を潰すことになったのだった。
しかし、体調を崩してパーティを欠席した国王の代わりに挨拶をした王妃は、リンドウ姫ではなく、腹違いの妹がすでに輿入れしたと告げた。
「少し年若いが、病気でこのまま儚くなる命なら、姉の代わりに自分が行くと申し出てくれたのです。」
抑えきれない喜びを扇子で隠して王妃ノバラは声を張り上げる。
「これで、昨今の長雨も地震いも解消されましょう。リンドウは、社交界に復帰致します。皆様、これからも王家のためにご尽力くださりませ。」
ざわめきはなかなか収まらなかったが、めでたい席である。無粋なことをいつまでも言っていても始まらないと、リンドウ姫の誕生日を祝うことにした。
どんな姫が現れるだろう、と期待する人々の前に、凛々しいすらりとした美人が現れて挨拶をする。
「この度は、誕生日を祝って頂き、嬉しく思う。しかし、私の預かり知らぬ妹とやらが、すでに輿入れしているとの母上のお話に、驚きを禁じ得ない。私は、年下の、ましてや病気の者を身代わりにしてまで助かりたいなどと思ってはいないからだ。」
人々がしん、と静まり返る中で、姫の不機嫌な声が続く。
「何故、当事者である私が何も知らないのかについての説明を聞かなくてはいけないので、私はこれで失礼する。皆は、折角なので楽しんでいかれるがよい。ただし、昨今の長雨で作物の実りが悪いと聞く。民の窮乏を鑑み、無駄なことはなきようにお食事を楽しまれるよう、お考え頂きたい。」
それだけを述べると、さっさと引っ込んでしまった。王妃が慌てて後を追ったので、残った王太子が、あ然とする人々の前で乾杯の音頭を取った。
「母と妹には私から話を聞こう。とりあえず楽しんでくれ。」
乾杯が終わり人々が飲み物を飲むのを見届けると、王太子も退出してしまった。王太子も輿入れの話は知らず、母である王妃の言に驚いていたので、話を聞きに行ったのだ。
順に、王太子とリンドウ姫に挨拶をしようと準備していた人々は、何をしにここへ来たのか分からぬまま、主役不在のパーティーで時間を潰すことになったのだった。
121
お気に入りに追加
774
あなたにおすすめの小説

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる