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11 発熱
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はあはあ、と荒い呼吸が聞こえてくる。
寝ていたイズモは、がばっと起き上がった。
慌てて隣のベッドを見ると、新しい伴侶が真っ赤な顔で汗をかいて苦しんでいる。
『怪我が原因で必ず発熱する。汗を拭いて額に冷やしたタオルを置いてあげる。水分を取らせてあげる。』
メモを思い出して、これか、とタオルを準備した。汗を軽く拭いて、固く絞ったタオルを額に置く。苦しそうに顔を歪めているのを見ると、心配でたまらない。
今まで、塔の中のイズモとムラクモの血筋の者は、結界の力の一端なのか何なのか、怪我はすぐに治ったし、病気らしい病気もしなかった。もちろん、二人でいるときの話である。見かけも、いつまでも若々しいままであった。
花嫁たちは寿命近くなると、急に体に力が入らなくなってベッドに寝たきりとなる。その時でもみんな、嫁入りした時から何ほども変わらない見かけをしていた。八十年ほどの月日を過ごしていてもだ。
その時に寝たきりとなるのは、寿命によるものなので、病気ではない。
イズモは、こんなに苦しんでいる病人を見るのは初めてであると言ってよかった。
はらはらとしながら、額のタオルが温くなったら冷たいものに取り替える。
血筋の者で、塔にいるのだから死にはすまいと思っていても、苦しそうで胸が痛くなる。
はくはくと子どもの口が動く。
飲み物?
そうだ、水分を取らさなくちゃ。
イズモは急いで水をコップに汲んで持ってきた。少しだけ蜜を溶かす。
そっと体を起こすが、あばら骨が痛むのだろう、目を閉じたままでうーうーと唸った。
口元にコップを当てるが一向に飲む気配がない。意識がないのである。スプーンで、と思ったが、片手が塞がっている。
どうしたものか、と悩んでいるうちにも苦しそうにしている。少し起こしたこの体勢も辛いのだろう。
よし、と自分の口に水を含んで熱い唇に押し当てた。呼吸が苦しくて半開きになっているから入りそうだ。蜜入りの水を少し子どもの口に移すと、ごくりと飲み込むのが分かる。もっと、もっとと言うように、口が動いた。ほのかに甘い水を、そうして何度かに分けて飲ませると、少し、ほんの少しだけ、口の端が嬉しそうに上がるのが見えた。
笑った……のかな。
そっと布団へ置き直して、また額のタオルを冷たいものに替える。
そうして、イズモの甲斐甲斐しいお世話で、翌日にミカゲが様子を見に来た時には、子どもの熱はすっかり下がっていた。
寝ていたイズモは、がばっと起き上がった。
慌てて隣のベッドを見ると、新しい伴侶が真っ赤な顔で汗をかいて苦しんでいる。
『怪我が原因で必ず発熱する。汗を拭いて額に冷やしたタオルを置いてあげる。水分を取らせてあげる。』
メモを思い出して、これか、とタオルを準備した。汗を軽く拭いて、固く絞ったタオルを額に置く。苦しそうに顔を歪めているのを見ると、心配でたまらない。
今まで、塔の中のイズモとムラクモの血筋の者は、結界の力の一端なのか何なのか、怪我はすぐに治ったし、病気らしい病気もしなかった。もちろん、二人でいるときの話である。見かけも、いつまでも若々しいままであった。
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そうだ、水分を取らさなくちゃ。
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よし、と自分の口に水を含んで熱い唇に押し当てた。呼吸が苦しくて半開きになっているから入りそうだ。蜜入りの水を少し子どもの口に移すと、ごくりと飲み込むのが分かる。もっと、もっとと言うように、口が動いた。ほのかに甘い水を、そうして何度かに分けて飲ませると、少し、ほんの少しだけ、口の端が嬉しそうに上がるのが見えた。
笑った……のかな。
そっと布団へ置き直して、また額のタオルを冷たいものに替える。
そうして、イズモの甲斐甲斐しいお世話で、翌日にミカゲが様子を見に来た時には、子どもの熱はすっかり下がっていた。
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