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4 願い
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ガタゴトと体が揺れて、胸の辺りに激痛が走った。ひぃっ、と悲鳴を上げる。潰された喉は、掠れた音を漏らしただけだった。
揺れるたびに痛みは増して、彼はまた、気を失った。少しすると痛みで目を覚ました。どんな無限の地獄にいるのか、恐ろしい気絶と覚醒を繰り返して、ただただ死にたかった。
死ねば、このすべてから解放されるのなら。
早く死にたい。
彼は、心の底からそう願う。
痛みもなく、空腹に苦しむこともなく、寂しさに泣くこともない。
「あれは可愛い姫の身代わりなのだから、死なせては駄目よ。」
「あまり大きく育って、男と知られては面倒だから、食事を減らしましょう。」
「どうせ悪魔に食わせるのに、お金をかける必要は無いわ。」
「声変わりして、男と知られてはいけないから、喉を潰してしまいましょう。話もできなくて、都合が良いわ。」
「命に別状がないなら、一物も切り落としてしまいたいわね。」
王妃の言葉が、切れ切れに甦る。
これが、死ぬ前に見ることのある幻だと言うのなら、もっと幸せなものを見せてほしい。
おぼろ気にしか覚えていない母を思う。こちらを向いて、呼びかけてくる。顔には霞がかかっていてよく見えない。けれど、母のような気がする。名前を呼んでいるのだろうけれど、思い出せなかった。誰も、名前を呼んでくれなくなってから久しい。ああ、自分の名前も忘れてしまった。
あの部屋からいなくなれば、あの子は心配するだろうか。
たまに食べ物を届けに来てくれた人。何か話してくれることもあったが、届いた食べ物を食べるのに必死で、大して聞いていなかった。せっかく話しかけてくれていたのに、もったいなかったな。
返事ができないことも忘れて思う。
馬車の床に転がされて、無限に思える地獄のような時間を過ごした。
着いたと言われた時には、薄暗かった。揺れが止まって、ほんの少しだけ痛みがましになり気を失った。
揺れるたびに痛みは増して、彼はまた、気を失った。少しすると痛みで目を覚ました。どんな無限の地獄にいるのか、恐ろしい気絶と覚醒を繰り返して、ただただ死にたかった。
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