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7 男の子ですよ
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ヌイは塔の外へ出て、ほっと息をついた。この短時間で、体に何の変化を感じるわけでもないが、緊張感は忘れてはいけない。このほんの少しずつの積み重ねが寿命を削っていることは、間違いないのだから。ミカゲとヌイは、まだ四十前であるが、もう五十を超えている年に見られることが多かった。花嫁が不在の間のカナメヅカ家の者たちが短命であることも知っている。花嫁がいれば、塔の中と外を行き来してイズモの面倒を見てくれるし、加護も使えるので寿命を削られることはない。花嫁がいないとイズモは弱り、加護も使えずに世話役の寿命も削られてしまう。負の連鎖が止まらない。
「あなた、医者を呼んできて。」
「この子は?」
「花嫁のようにして放り込まれたらしいの。大怪我をしている。危ない状態よ。」
「イズモ様は?」
「この子をベッドに運んで服を脱がせていたようだわ。そこで力尽きたみたいで、座り込んでいらっしゃった。今はベッドに戻って頂いたわ。」
「分かった。うちへ運ぼう。」
医者に見せると、予想通りに、あばら骨にもひびが入っているだろう、とのことで、鞭打ちされた傷に丁寧に薬を塗って包帯を巻いてくれた。必ず熱が出るから、と熱冷ましの薬を渡してくれながら医者は言う。
「目を覚ますかは分からないが、もし運良く目を覚ましたなら、固形物は駄目だぞ。この子はずいぶん長いこと、ろくな食べ物を取っていないと見える。栄養を取らせようとたくさん与えたら腹を下すだろう。野菜の形が無くなるまで煮たスープを、一日に何回もやるのがいい。とにかく、水分を取らせてやってくれ。」
「はい。」
「目を覚ますかは分からないが。」
医者はもう一度言った。助かる見込みは薄いのだろう。
「もし運良く目を覚ましたら、この蜜を薄めて舐めさせてやってくれ。喉が潰されていて、何を飲むのも食べるのも痛かろう。少しでも滑りがよくなれば良いのだが。声も、少しくらいは出せるようになるかもしれん。それと、女性用の下着では窮屈だから、できれば男の子用の下着を着けてやりなさい。」
「男の子?」
ヌイは、驚いて言った。コルセットを絞めて女性用のドレスを着せられていたようだし、下着も女性用だったから、女の子だとばかり思っていたのだ。分かりました、と頭を下げてお礼を言う。
あまりの状態の酷さに、とにかく手当てに集中してくれたのは良かったとヌイは思った。何故こんな傷がとか、どこの子どもだとか聞かれても分からないからだ。
代金を払って医者を帰すと、塔の外にいた不審者を尋問していたミカゲが帰ってきた。
「血筋の姫を塔の悪魔に捧げに来たと言っている。逃げ出さないように、三日見張って帰るだけの仕事らしい。」
「男の子ですよ……。」
「何だって?」
「お医者さまが、男の子だって。」
「一体、王家は何をお考えなんだ。最近の天候不良は花嫁の不在が原因だと、あれほど伝えたのに。」
「サクラ姫の後で、血筋でない者を二人も放り込んだかと思えば、今度は男の子……。しかも、こんな状態で。」
二人は、うつらうつらと寝てばかりになってしまったイズモを思った。
誰が、この国を平らかに守ってくれているのかを王家は忘れてしまったのだろうか。
「あなた、医者を呼んできて。」
「この子は?」
「花嫁のようにして放り込まれたらしいの。大怪我をしている。危ない状態よ。」
「イズモ様は?」
「この子をベッドに運んで服を脱がせていたようだわ。そこで力尽きたみたいで、座り込んでいらっしゃった。今はベッドに戻って頂いたわ。」
「分かった。うちへ運ぼう。」
医者に見せると、予想通りに、あばら骨にもひびが入っているだろう、とのことで、鞭打ちされた傷に丁寧に薬を塗って包帯を巻いてくれた。必ず熱が出るから、と熱冷ましの薬を渡してくれながら医者は言う。
「目を覚ますかは分からないが、もし運良く目を覚ましたなら、固形物は駄目だぞ。この子はずいぶん長いこと、ろくな食べ物を取っていないと見える。栄養を取らせようとたくさん与えたら腹を下すだろう。野菜の形が無くなるまで煮たスープを、一日に何回もやるのがいい。とにかく、水分を取らせてやってくれ。」
「はい。」
「目を覚ますかは分からないが。」
医者はもう一度言った。助かる見込みは薄いのだろう。
「もし運良く目を覚ましたら、この蜜を薄めて舐めさせてやってくれ。喉が潰されていて、何を飲むのも食べるのも痛かろう。少しでも滑りがよくなれば良いのだが。声も、少しくらいは出せるようになるかもしれん。それと、女性用の下着では窮屈だから、できれば男の子用の下着を着けてやりなさい。」
「男の子?」
ヌイは、驚いて言った。コルセットを絞めて女性用のドレスを着せられていたようだし、下着も女性用だったから、女の子だとばかり思っていたのだ。分かりました、と頭を下げてお礼を言う。
あまりの状態の酷さに、とにかく手当てに集中してくれたのは良かったとヌイは思った。何故こんな傷がとか、どこの子どもだとか聞かれても分からないからだ。
代金を払って医者を帰すと、塔の外にいた不審者を尋問していたミカゲが帰ってきた。
「血筋の姫を塔の悪魔に捧げに来たと言っている。逃げ出さないように、三日見張って帰るだけの仕事らしい。」
「男の子ですよ……。」
「何だって?」
「お医者さまが、男の子だって。」
「一体、王家は何をお考えなんだ。最近の天候不良は花嫁の不在が原因だと、あれほど伝えたのに。」
「サクラ姫の後で、血筋でない者を二人も放り込んだかと思えば、今度は男の子……。しかも、こんな状態で。」
二人は、うつらうつらと寝てばかりになってしまったイズモを思った。
誰が、この国を平らかに守ってくれているのかを王家は忘れてしまったのだろうか。
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