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29 王妃の憂鬱

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 学園に入れば、王宮よりも簡単に始末できると、思っていた。少しづつ、少しづつの毒の積み重ねで、ようやく邪魔な側妃を始末できたのだ。シリルにも同じくらいの積み重ねはある筈。
 そう、思っていたのに。
 いつの間にか、顔色が良くなり、しっかりと食べて育ち始めているらしい。どういうことなのか?
 そうなってくると、離れているのがもどかしい。
 何度か試しに入れさせた毒も、すべて食べずにいるようだ。何故?平民を使い、大っぴらにやってみると、侍従が見破ったという。その、新しい侍従が何らかの力を持っているのか。
 侍従を暗殺させようと目論むが、シリルから離れることはなく、護衛が付いていて、上手くいかない。
 そのうち、大切なシャルルが、シリルに近づき始めた。何をしているの?何度言えば分かるの?成績もシリルに全く敵わない。どうして?
 本人に直接聞こうと手紙を出しても、呼び出しには応じない。丁寧な断りの手紙が積み重なっていく。シリルの悪影響に違いない。いっそ学園を辞めさせて、王宮に閉じ込めてしまおうか。教師など、呼べばよい。

 シャルルの期末試験の結果は、中間試験よりもましな四位だったらしい。コンスタンが一位?どういうことなのか?中間試験の時、シャルルの成績を上回って散々絞られた筈だが。シリルと同率二位の貧乏子爵家の息子。確か中間試験でも二位だった。暗黙の了解というやつを知らないの?これだから、下位の者たちは困る。家ごと潰してしまおうか。
 苛々は募る。
 もうすぐ学園は夏休みだ。早くシャルルを閉じ込めて勉強させなければ。
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