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372 卒業旅行 21 朝食バイキング
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食堂には、スーツ姿の男性と、一太たちと同じ年頃の女性三人が食事をしていた。席はたくさん空いていたので、それぞれから離れた場所を選んで四人で座る。部屋には、カレーの匂いが漂っていた。スーツ姿の男性がカレーを食べていることで、その強い匂いが部屋に充満しているらしい。
「カレーあるんだな。いいな」
安倍が言って立ち上がった。
「いやあ、朝からカレーはキツいでしょ」
一太は、同じく立ち上がった岸田の言葉に同意だ。朝からカレーを食べたら、お腹が重くて動けなくなりそうだ。
「私、パンにしよ」
二人は、迷いなくお皿と食事が並べてある机に向かっていった。
「僕たちは後で行こうか」
「うん」
バイキング形式の食事がどんなものかの説明は受けてきた。晃の丁寧な説明を聞いたし、ネットで検索してバイキング形式の画像も見た。置いてある食べ物は、何でも取ってきて食べてもよくて、けれど取った品は残してはいけないことがルール。うん、できる。
一太がドキドキしながら待っていると、宣言通りカレーを皿に盛った安倍と、小さなクロワッサン一つ、スクランブルエッグ、ウインナー二本、ブロッコリーをワンプレートに乗せた岸田が帰ってきた。飲み物はそれぞれ牛乳とオレンジジュースだ。
「そんなに種類無いけど、悩まなくていいかも」
「充分だろ? サービスだし」
そう。この朝食バイキングは、ホテルの宿泊代金の中に含まれていなかったのだ。食べても食べなくても同じ値段。時間が合えばどうぞ、というホテルのサービスらしい。
「じゃ、僕らも行ってくる」
「はーい」
緊張したまま、一太は晃と立ち上がった。見に行った机には、先ほど安倍と岸田が持ってきた品の他に、市販のヨーグルトが皿に置かれた氷の上に並んでいた。飲み物は、牛乳とオレンジジュースの他に水もある。コーヒーと紅茶も、温かいものと冷たいものが置いてある。パンも、クロワッサンの他にロールパン、食パン、フランスパンが置いてあった。
「すご」
見渡して、一太は思わず呟いてしまう。ネットで調べて予習してはいたが、実際に並んでいる幾つかの食べ物や飲み物の中から何でも選んでよいと言われると、びっくりしてしまう。
「種類少ないなあ。ま、初めてのいっちゃんにはちょうどいいか」
晃の呟きに、一太は目を見開く。
これで、少ない?
確かに、ネットで調べた時にはもっとたくさんの食べ物が並んでいた。あの中から自分が食べられる分だけ選ぶなど無理だ、と思ったものだ。
これなら、何とか……。
そう思いつつ、パンの前で考え込む。晃と暮らすようになるまで朝ご飯を食べる習慣の無かった一太には、小さいパン一つが限界だ。どれにしよう……。
「いっちゃん。クロワッサンとロールパンとフランスパン取るから、一口ずつ味見する?」
「いいの?」
「いいよ。一緒に食べちゃ駄目ってルールは無いんだし。おかずは、全部ほんの一口ずつお皿に入れて持って行ったらどう? ヨーグルトも半分こする?」
「そんなに入るかな?」
「残ったら食べてあげるよ」
「いいの?」
「いいよ。カレーはどうする?」
「カレーはいらない」
一太は、そこははっきり言った。了解、と晃が笑う。
「選べたね」
「あ、うん。ほんとだ」
飲み物も悩んだが、温かい紅茶にした。少し牛乳を足して、いつも通りだ。
一口ずつ色々と味見できた朝食は、とても美味しかった。カレーを食べ終えた安倍が、パンを二つとおかずを並べて持ってきたことには、本当に驚いてしまった。安倍くんなら、バイキングはお得だろうなあと一太はしみじみ思った。
「カレーあるんだな。いいな」
安倍が言って立ち上がった。
「いやあ、朝からカレーはキツいでしょ」
一太は、同じく立ち上がった岸田の言葉に同意だ。朝からカレーを食べたら、お腹が重くて動けなくなりそうだ。
「私、パンにしよ」
二人は、迷いなくお皿と食事が並べてある机に向かっていった。
「僕たちは後で行こうか」
「うん」
バイキング形式の食事がどんなものかの説明は受けてきた。晃の丁寧な説明を聞いたし、ネットで検索してバイキング形式の画像も見た。置いてある食べ物は、何でも取ってきて食べてもよくて、けれど取った品は残してはいけないことがルール。うん、できる。
一太がドキドキしながら待っていると、宣言通りカレーを皿に盛った安倍と、小さなクロワッサン一つ、スクランブルエッグ、ウインナー二本、ブロッコリーをワンプレートに乗せた岸田が帰ってきた。飲み物はそれぞれ牛乳とオレンジジュースだ。
「そんなに種類無いけど、悩まなくていいかも」
「充分だろ? サービスだし」
そう。この朝食バイキングは、ホテルの宿泊代金の中に含まれていなかったのだ。食べても食べなくても同じ値段。時間が合えばどうぞ、というホテルのサービスらしい。
「じゃ、僕らも行ってくる」
「はーい」
緊張したまま、一太は晃と立ち上がった。見に行った机には、先ほど安倍と岸田が持ってきた品の他に、市販のヨーグルトが皿に置かれた氷の上に並んでいた。飲み物は、牛乳とオレンジジュースの他に水もある。コーヒーと紅茶も、温かいものと冷たいものが置いてある。パンも、クロワッサンの他にロールパン、食パン、フランスパンが置いてあった。
「すご」
見渡して、一太は思わず呟いてしまう。ネットで調べて予習してはいたが、実際に並んでいる幾つかの食べ物や飲み物の中から何でも選んでよいと言われると、びっくりしてしまう。
「種類少ないなあ。ま、初めてのいっちゃんにはちょうどいいか」
晃の呟きに、一太は目を見開く。
これで、少ない?
確かに、ネットで調べた時にはもっとたくさんの食べ物が並んでいた。あの中から自分が食べられる分だけ選ぶなど無理だ、と思ったものだ。
これなら、何とか……。
そう思いつつ、パンの前で考え込む。晃と暮らすようになるまで朝ご飯を食べる習慣の無かった一太には、小さいパン一つが限界だ。どれにしよう……。
「いっちゃん。クロワッサンとロールパンとフランスパン取るから、一口ずつ味見する?」
「いいの?」
「いいよ。一緒に食べちゃ駄目ってルールは無いんだし。おかずは、全部ほんの一口ずつお皿に入れて持って行ったらどう? ヨーグルトも半分こする?」
「そんなに入るかな?」
「残ったら食べてあげるよ」
「いいの?」
「いいよ。カレーはどうする?」
「カレーはいらない」
一太は、そこははっきり言った。了解、と晃が笑う。
「選べたね」
「あ、うん。ほんとだ」
飲み物も悩んだが、温かい紅茶にした。少し牛乳を足して、いつも通りだ。
一口ずつ色々と味見できた朝食は、とても美味しかった。カレーを食べ終えた安倍が、パンを二つとおかずを並べて持ってきたことには、本当に驚いてしまった。安倍くんなら、バイキングはお得だろうなあと一太はしみじみ思った。
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