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370 卒業旅行 19 お風呂は必ず一緒に行くと覚えておく
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「絶対起こして、って言ったのに」
晃が、不機嫌にぶつぶつ言いながら服に着替えている。寝起きで少し乱れている髪を、更にくしゃくしゃと引っかき回して、頭を振っていた。まだ眠たいようだ。
昨夜は、別々のベッドで寝ていたから、何となく寒いようなおさまりが悪いような気がして、あまりぐっすりとは寝られなかった。何度も寝返りを打つ音がしていたから、晃も一太と同じように、よく寝られなかったのかもしれない。ベッドは一人用で狭いし二つあるのだしとそれぞれで寝たが、いつも通りに同じ布団に入れば良かった。
寝入るのが遅かった晃は、朝風呂に行こうと六時過ぎに起きた一太が、何度声をかけても起きなかった。
約束の時間になったからと焦って廊下に出た一太に、隣の部屋から一人出てきた安倍は言ったのだ。
「早織も眠いから朝風呂やめるって。じゃ、二人で行こうぜ」
「え? でも晃くん、絶対起こしてって言ってた」
「起きねえんだろ。絶対入らなくちゃいけないもんでもねえし、行きたい人だけで行けばいいじゃん。眠い人は寝ててさ」
それもそうか、と納得した一太は、安倍と二人で朝風呂をして部屋へ帰ってきてからもう一度晃を起こした。起きた晃は、風呂上がりの一太を見てこの通り、寝起きだからでは済まない機嫌の悪さになってしまったのである。
「起こした。起こしたよ。本当に何回も起こした」
「目覚ましも止めて行かれたら、絶対に起きられないじゃないか」
「だって晃くん、目覚ましが鳴り続けてても起きなかった。他の部屋にも聞こえちゃったら迷惑だと思ったから止めたんだよ。でも、五分くらいは止めずに待ったんだけど」
「ご、五分……? そんなに鳴ってた?」
「うん。時計見て五分待った」
「……全然、鳴ってたこと知らない。起こしてもらったのも覚えてない。ごめん。……でも! でも、いっちゃん。安倍くんといっちゃんが二人で風呂に行くってのはやっぱり嫌だ」
晃に、あまりに真剣な顔で言われると、一太にはよく分からないがいけないことをしたような気分になってくる。
「分かった。もう行かないから。ごめんね。ね?」
一太が少し困って謝ると、晃ははっとして一太を抱きしめた。
「んー。いや、僕がごめん。起きなかった僕が悪い。顔洗ってくる」
ようやく晃がいつもの顔になって部屋の外へ出ると、安倍と岸田はすでに廊下で待っていた。
「おはよう」
「おはよう」
挨拶を交わし合うと、安倍が晃に頭を下げた。
「ごめん、松島。村瀬と二人で風呂行った」
「……」
晃はじろりと安倍を睨む。一太も慌てて頭を一緒に下げた。晃以外の人と二人で出かけたのが駄目だったのかもしれない、と思い当たったのだ。それなら分かる。それをされたら、一太も嫌だ。
「謝るくらいならやらないでよ」
「いや、早織に怒られるまで何とも思ってなくて。男同士だし、別にほら、な? 風呂くらい」
「それは駄目だって言ったら、やっと気付いたくらい、剛くん、本当に何とも思ってなかったのよ。だから松島くん、今回は許してあげて」
「分かってる。ただの友だちだから平気で行けるって分かってる。でも、ちょっと、その、この辺りがもやっとしてて。うー、いや、ごめん。起きなかった僕が悪い。今日は早く寝る。絶対早起きする」
「明日は朝風呂行くの?」
「行く。三人で」
明日は必死で起こそう、と一太は思った。いや、その前に、やっぱり同じ布団で寝るのがいいのかもしれない。
晃が、不機嫌にぶつぶつ言いながら服に着替えている。寝起きで少し乱れている髪を、更にくしゃくしゃと引っかき回して、頭を振っていた。まだ眠たいようだ。
昨夜は、別々のベッドで寝ていたから、何となく寒いようなおさまりが悪いような気がして、あまりぐっすりとは寝られなかった。何度も寝返りを打つ音がしていたから、晃も一太と同じように、よく寝られなかったのかもしれない。ベッドは一人用で狭いし二つあるのだしとそれぞれで寝たが、いつも通りに同じ布団に入れば良かった。
寝入るのが遅かった晃は、朝風呂に行こうと六時過ぎに起きた一太が、何度声をかけても起きなかった。
約束の時間になったからと焦って廊下に出た一太に、隣の部屋から一人出てきた安倍は言ったのだ。
「早織も眠いから朝風呂やめるって。じゃ、二人で行こうぜ」
「え? でも晃くん、絶対起こしてって言ってた」
「起きねえんだろ。絶対入らなくちゃいけないもんでもねえし、行きたい人だけで行けばいいじゃん。眠い人は寝ててさ」
それもそうか、と納得した一太は、安倍と二人で朝風呂をして部屋へ帰ってきてからもう一度晃を起こした。起きた晃は、風呂上がりの一太を見てこの通り、寝起きだからでは済まない機嫌の悪さになってしまったのである。
「起こした。起こしたよ。本当に何回も起こした」
「目覚ましも止めて行かれたら、絶対に起きられないじゃないか」
「だって晃くん、目覚ましが鳴り続けてても起きなかった。他の部屋にも聞こえちゃったら迷惑だと思ったから止めたんだよ。でも、五分くらいは止めずに待ったんだけど」
「ご、五分……? そんなに鳴ってた?」
「うん。時計見て五分待った」
「……全然、鳴ってたこと知らない。起こしてもらったのも覚えてない。ごめん。……でも! でも、いっちゃん。安倍くんといっちゃんが二人で風呂に行くってのはやっぱり嫌だ」
晃に、あまりに真剣な顔で言われると、一太にはよく分からないがいけないことをしたような気分になってくる。
「分かった。もう行かないから。ごめんね。ね?」
一太が少し困って謝ると、晃ははっとして一太を抱きしめた。
「んー。いや、僕がごめん。起きなかった僕が悪い。顔洗ってくる」
ようやく晃がいつもの顔になって部屋の外へ出ると、安倍と岸田はすでに廊下で待っていた。
「おはよう」
「おはよう」
挨拶を交わし合うと、安倍が晃に頭を下げた。
「ごめん、松島。村瀬と二人で風呂行った」
「……」
晃はじろりと安倍を睨む。一太も慌てて頭を一緒に下げた。晃以外の人と二人で出かけたのが駄目だったのかもしれない、と思い当たったのだ。それなら分かる。それをされたら、一太も嫌だ。
「謝るくらいならやらないでよ」
「いや、早織に怒られるまで何とも思ってなくて。男同士だし、別にほら、な? 風呂くらい」
「それは駄目だって言ったら、やっと気付いたくらい、剛くん、本当に何とも思ってなかったのよ。だから松島くん、今回は許してあげて」
「分かってる。ただの友だちだから平気で行けるって分かってる。でも、ちょっと、その、この辺りがもやっとしてて。うー、いや、ごめん。起きなかった僕が悪い。今日は早く寝る。絶対早起きする」
「明日は朝風呂行くの?」
「行く。三人で」
明日は必死で起こそう、と一太は思った。いや、その前に、やっぱり同じ布団で寝るのがいいのかもしれない。
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