【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ

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367 卒業旅行 16 イチャイチャって?

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「お待たせ」
「本当に私の方が先だったって驚いちゃった」

 男湯から出ると、廊下に準備してあった椅子に座っていた岸田が、手にしていた携帯電話から顔を上げた。

「一時間だろ?」
「うん、確かに一時間。約束通り。でも私、途中でのぼせちゃって、上がってから脱衣所にあったドライヤーで髪の毛も乾かしてきたんだよ。それでも私の方が早いんだもん。びっくり」
「髪の毛乾かしちゃったのか」
「うん、乾かしたよ。え? なに?」
「乾かしたのかー」
「え? なに? 何なのよ」

 安倍と岸田の会話を聞いて、晃がふはっと笑った。

「イチャイチャしたかったんだ?」
「うるさいぞ、松島」
「え? なになに? 話が見えないんだけど?」
「あのね、風呂から上がった後で僕がいっちゃんの髪の毛を拭いてたら、安倍くんがイチャイチャすんなとか言ってて」
「うるさいっつってんの」
「あ、ああー。あはははは」

 髪の毛を拭くのはやっぱりイチャイチャなのか、と部屋へ向かって歩きながら一太が三人の顔を見比べていると、岸田と目があった。

「髪の毛、拭いてもらってるんだ?」
「うん。俺も交代で拭いてあげるよ」
「そうか。いいね」
「うん。いい」

 何となく、岸田への方が聞きやすい気がして一太は声を潜めた。

「ね。イチャイチャってどんなもの?」

 自分は、イチャイチャのちゃんとした意味を分かっていないのかもしれない。

「え? ああ。イチャイチャ? イチャイチャかあ。うーん。恋人同士とか好きな人同士で、何かこう、その、仲良くする? みたいな? ことかなあ」
「なるほど?」

 お風呂上がりの濡れた髪の毛を、拭いてもらったり拭いてあげたりするのは仲良しのイチャイチャ、ということ、なのか?

「ええっと。俺たちイチャイチャしちゃってた?」
「しちゃってた」
「それ、あんまりよくない?」
「え、なんで?」
「なんか安倍くんが、イチャイチャすんなって言ってたから」
「あは。あはははは」
「え?」
「そんなの、言わしといたらいいよ」
「いいの?」
「いいよ。仲良しなの、最高じゃん」
「そっか」
「そうだよ」

 いいのならいっか。

「なに二人で楽しそうに話してんだよ」

 安倍が、頭をくっつけるようにして話していた岸田と一太の間に割り込んでくる。そのまま岸田の手を自分の腕に絡めさせて歩き始めた。

「何これ」

 岸田が、笑いながらもそのまま腕を組んで歩いていく。にこにこして、歩いていった。

「あ、イチャイチャ」

 なるほど。これが。

 

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