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353 卒業旅行 2 荷物の量について
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バスに乗って駅へ着く。合流した岸田はなかなかの大荷物だった。タイヤの付いた鞄を、ゴロゴロと転がしている。
「え? 皆、荷物少な過ぎない?」
「え?」
二泊三日。寒い季節だから着替えの服は確かにかさばるが、寒い季節だから下着以外は汗もかかないし、まあ汚れたら替えるくらいでいいだろう、と一太は上、下一つずつの着替えを持ってきた。歯ブラシやシャンプー、タオル、寝間着などの備品は一通り置いてあるとホテルの説明に書いてあったから、持ってきていない。たぶん、晃と安倍も似たようなものだろう。一太より体が大きい分着替えが大きくて、少しだけ荷物が大きい程度だ。晃はそんなに大きくないボストンバッグをひょいと肩に掛けていて、安倍はリュックを背負っている。
「逆に何が入ってんの?」
「え? 普通に」
「普通に?」
「だから、着替えとかタオルとか化粧品とかパジャマとか」
「タオルもパジャマ的なものもあるって書いてあったじゃん」
「え? でも、一応」
「なるほど?」
一応? 三人で首を傾げつつ、予定通りの電車で出発した。平日の早朝、自由席でも四人で向かい合って座ることができて安堵した。相談の上で指定席代をケチったが、一時間ほどの時間を立って過ごすことになったらどうしよう、と少し不安だったのだ。早速賭けに勝って、みんなで早くもテンションは高めだ。
「そういえば今までの修学旅行の時もさ、女子の荷物って多かった」
「そうかも」
電車に乗ってからの晃と安倍の言葉に、そうなのかあと一太は思う。
「男子はさ、荷物少な過ぎなんだよ。いるかいらないか分からないもの、全部置いてくるんだもん」
「いるかいらないかとか悩みもしないぞ。いるものだけ持ってく」
「ええ? 悩みもしないんだ」
「何を悩むんだよ」
「いや。もしかしてタオル足りなかったらとか考えたら、一枚二枚持つじゃん? パジャマが合わなかったら困るからパジャマ一応持ってく? とか、汚した時のために下着や服を予備一つずつ追加したりしてたらこうなるんだけど」
「へええ」
驚きの声は三つ響いた。その声に、岸田が目を丸くする。
「あれ? 村瀬くんも考えない感じ?」
「あ、うん……」
「なんか、勝手なイメージで、村瀬くんは予備とかちゃんと考えてそうだと思ってた」
「予備、予備かあ」
予備どころか、最初の一つにも事欠いた人生だ。一太の今までの人生に予備なんて存在しなかった。
「村瀬も男子だからさ。やっぱ俺らと一緒なんだよ。な」
一太が言葉に詰まっていたら、安倍が代わりに明るく答えてくれた。晃もうんうんと頷いている。
そうか。それでいいのか。
一太も笑って頷くと、岸田が不満そうに口を尖らせた。
「男子の中にだって、色々考える人いると思うんだけどなあ」
「そりゃそうだ。大雑把な女子もいるしな。ま、色々だけどさ。ここにはいなかったっぽいな」
「まあいいわ。私がみんなの分も考えておくから」
「頼りにしてるよ」
話してるだけで、楽しい。この四人で旅行できて良かった、と一太はしみじみ思った。
「え? 皆、荷物少な過ぎない?」
「え?」
二泊三日。寒い季節だから着替えの服は確かにかさばるが、寒い季節だから下着以外は汗もかかないし、まあ汚れたら替えるくらいでいいだろう、と一太は上、下一つずつの着替えを持ってきた。歯ブラシやシャンプー、タオル、寝間着などの備品は一通り置いてあるとホテルの説明に書いてあったから、持ってきていない。たぶん、晃と安倍も似たようなものだろう。一太より体が大きい分着替えが大きくて、少しだけ荷物が大きい程度だ。晃はそんなに大きくないボストンバッグをひょいと肩に掛けていて、安倍はリュックを背負っている。
「逆に何が入ってんの?」
「え? 普通に」
「普通に?」
「だから、着替えとかタオルとか化粧品とかパジャマとか」
「タオルもパジャマ的なものもあるって書いてあったじゃん」
「え? でも、一応」
「なるほど?」
一応? 三人で首を傾げつつ、予定通りの電車で出発した。平日の早朝、自由席でも四人で向かい合って座ることができて安堵した。相談の上で指定席代をケチったが、一時間ほどの時間を立って過ごすことになったらどうしよう、と少し不安だったのだ。早速賭けに勝って、みんなで早くもテンションは高めだ。
「そういえば今までの修学旅行の時もさ、女子の荷物って多かった」
「そうかも」
電車に乗ってからの晃と安倍の言葉に、そうなのかあと一太は思う。
「男子はさ、荷物少な過ぎなんだよ。いるかいらないか分からないもの、全部置いてくるんだもん」
「いるかいらないかとか悩みもしないぞ。いるものだけ持ってく」
「ええ? 悩みもしないんだ」
「何を悩むんだよ」
「いや。もしかしてタオル足りなかったらとか考えたら、一枚二枚持つじゃん? パジャマが合わなかったら困るからパジャマ一応持ってく? とか、汚した時のために下着や服を予備一つずつ追加したりしてたらこうなるんだけど」
「へええ」
驚きの声は三つ響いた。その声に、岸田が目を丸くする。
「あれ? 村瀬くんも考えない感じ?」
「あ、うん……」
「なんか、勝手なイメージで、村瀬くんは予備とかちゃんと考えてそうだと思ってた」
「予備、予備かあ」
予備どころか、最初の一つにも事欠いた人生だ。一太の今までの人生に予備なんて存在しなかった。
「村瀬も男子だからさ。やっぱ俺らと一緒なんだよ。な」
一太が言葉に詰まっていたら、安倍が代わりに明るく答えてくれた。晃もうんうんと頷いている。
そうか。それでいいのか。
一太も笑って頷くと、岸田が不満そうに口を尖らせた。
「男子の中にだって、色々考える人いると思うんだけどなあ」
「そりゃそうだ。大雑把な女子もいるしな。ま、色々だけどさ。ここにはいなかったっぽいな」
「まあいいわ。私がみんなの分も考えておくから」
「頼りにしてるよ」
話してるだけで、楽しい。この四人で旅行できて良かった、と一太はしみじみ思った。
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