347 / 397
347 日常
しおりを挟む
「久しぶり、安倍くん。ええっと、あけましておめでとう」
「おう、久しぶりだな。大丈夫だったんか、村瀬」
「ん? 何?」
「年末に高熱出してぶっ倒れてたって聞いたからさ」
「え? ああ。そんなの、ちょっと熱が出ただけですぐ下がったし、ぶっ倒れたりなんかしてないよ? 晃くんが何か大げさに言ったんじゃない?」
「大げさじゃないよ。すっごい高熱で、すっごく心配したんだから」
「ああ、うん」
安倍は二人を交互に見比べてけらけら笑った。
「ま、今元気ならいいんだけどよ。ちなみに何度あったんだ、一番熱高い時」
「え? さあ?」
熱が高いって何度からだっけ? と一太は首を傾げた。普段から熱を測ったりしないから平熱もよく知らない。
「三十九・六度」
晃がすらっと答えた。
「ひえ。お前それは、松島が大げさでも何でもねえわ。ぶっ倒れるわ。そんな高い熱、俺出したことねえもん」
「剛くん、丈夫そうだもんね」
「え? 早織、そんな高熱出したことあんの?」
「そりゃ、冬とかに登校禁止になるような感染症に罹った時にはさ、三十九度超えたことあるよ」
「うわ。しんどそうだな」
「しんどいよぉ。三十九度でもしんどいんだから三十九・六度なんて、しんどかったでしょ、村瀬くん」
「ええっと。でも熱だけだったし、ちょっと頭は痛かったけどゆっくりなら動けるって俺は言ってるのに、晃くんや晃くんのお母さんが布団から出してくれなくて困った……」
「出してたまるか!」
「出ちゃ駄目だよ!」
え? そうなの?
「ほらね。僕が正しかった」
「いやあ、村瀬。無事で良かったよ。松島、お前頑張ったな」
うんうんと晃が頷いている。そんなに大したこと無かったと一太は思うのだけれども。
「村瀬くん。頭が痛い時は、絶対に絶対に無理やり動いたら駄目なんだよ。頭は怖いんだから。うちのひいおじいちゃんが、何かちょっと頭痛いなって言いながら動き回ってて、倒れてぽっくりいっちゃったって、親戚が集まるとよくその話になるのよ」
「うわあ。怖いな、頭痛。村瀬、お前すぐ無理するんだから、絶対、絶対気を付けろよ」
「大丈夫。僕が絶対布団から出さないから」
「だな」
「そうね」
えええ?
「もう、治ったんだけど……」
「次の話だよ、次の」
「そうそう。次に頭が痛くなったり高熱が出た時の話ね。布団に入って、おとなしくお世話されてなきゃ駄目だよって話」
「松島にお世話ができるかどうかはあやしいけどな」
「は? 今回だって、ちゃんと……あー、うーん。いや、次は大丈夫」
「ははっ。今回は実家にいたんだっけ? 良かったな、村瀬」
「ええっと、うん?」
俺の実家じゃないけど。
「やっぱり実家は安心でしょ?」
「あ、うん……?」
確かに、安心して過ごしてた。
俺の実家じゃないけど。
「ま、何かあったら俺らも駆け付けるからさ、すぐ言えよ」
「え? うん?」
ぶはっと安倍は笑った。
「村瀬、ずっと疑問形なの何で? いや、まあいいや。元気になったんなら、松島の誕生日会と酒飲み会、やろうぜ」
「うわあ、楽しみ。やろうやろう」
「うちでいい? いつにする?」
ああ、帰ってきたなあ。やっぱり自分の家が一番だ。
久しぶりの大学で友人と楽しく話しながら、一太はしみじみと思った。
あ、でも、こう言ったら陽子さんに悪いかな。あっちの家も居心地は良かった。たまに行きたいくらいには。
「おう、久しぶりだな。大丈夫だったんか、村瀬」
「ん? 何?」
「年末に高熱出してぶっ倒れてたって聞いたからさ」
「え? ああ。そんなの、ちょっと熱が出ただけですぐ下がったし、ぶっ倒れたりなんかしてないよ? 晃くんが何か大げさに言ったんじゃない?」
「大げさじゃないよ。すっごい高熱で、すっごく心配したんだから」
「ああ、うん」
安倍は二人を交互に見比べてけらけら笑った。
「ま、今元気ならいいんだけどよ。ちなみに何度あったんだ、一番熱高い時」
「え? さあ?」
熱が高いって何度からだっけ? と一太は首を傾げた。普段から熱を測ったりしないから平熱もよく知らない。
「三十九・六度」
晃がすらっと答えた。
「ひえ。お前それは、松島が大げさでも何でもねえわ。ぶっ倒れるわ。そんな高い熱、俺出したことねえもん」
「剛くん、丈夫そうだもんね」
「え? 早織、そんな高熱出したことあんの?」
「そりゃ、冬とかに登校禁止になるような感染症に罹った時にはさ、三十九度超えたことあるよ」
「うわ。しんどそうだな」
「しんどいよぉ。三十九度でもしんどいんだから三十九・六度なんて、しんどかったでしょ、村瀬くん」
「ええっと。でも熱だけだったし、ちょっと頭は痛かったけどゆっくりなら動けるって俺は言ってるのに、晃くんや晃くんのお母さんが布団から出してくれなくて困った……」
「出してたまるか!」
「出ちゃ駄目だよ!」
え? そうなの?
「ほらね。僕が正しかった」
「いやあ、村瀬。無事で良かったよ。松島、お前頑張ったな」
うんうんと晃が頷いている。そんなに大したこと無かったと一太は思うのだけれども。
「村瀬くん。頭が痛い時は、絶対に絶対に無理やり動いたら駄目なんだよ。頭は怖いんだから。うちのひいおじいちゃんが、何かちょっと頭痛いなって言いながら動き回ってて、倒れてぽっくりいっちゃったって、親戚が集まるとよくその話になるのよ」
「うわあ。怖いな、頭痛。村瀬、お前すぐ無理するんだから、絶対、絶対気を付けろよ」
「大丈夫。僕が絶対布団から出さないから」
「だな」
「そうね」
えええ?
「もう、治ったんだけど……」
「次の話だよ、次の」
「そうそう。次に頭が痛くなったり高熱が出た時の話ね。布団に入って、おとなしくお世話されてなきゃ駄目だよって話」
「松島にお世話ができるかどうかはあやしいけどな」
「は? 今回だって、ちゃんと……あー、うーん。いや、次は大丈夫」
「ははっ。今回は実家にいたんだっけ? 良かったな、村瀬」
「ええっと、うん?」
俺の実家じゃないけど。
「やっぱり実家は安心でしょ?」
「あ、うん……?」
確かに、安心して過ごしてた。
俺の実家じゃないけど。
「ま、何かあったら俺らも駆け付けるからさ、すぐ言えよ」
「え? うん?」
ぶはっと安倍は笑った。
「村瀬、ずっと疑問形なの何で? いや、まあいいや。元気になったんなら、松島の誕生日会と酒飲み会、やろうぜ」
「うわあ、楽しみ。やろうやろう」
「うちでいい? いつにする?」
ああ、帰ってきたなあ。やっぱり自分の家が一番だ。
久しぶりの大学で友人と楽しく話しながら、一太はしみじみと思った。
あ、でも、こう言ったら陽子さんに悪いかな。あっちの家も居心地は良かった。たまに行きたいくらいには。
応援ありがとうございます!
71
お気に入りに追加
1,495
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる