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331 ◇ずっと続いていく日常の一コマ
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日々は、穏やかに過ぎていった。一太は、やることがあった方が気持ちが落ち着くようだからと、母が仕事に出ている間は、できる家事を一太がやることになった。母は、人生の夏休みのようだととても喜んで、ご褒美と言っては、一太にお菓子を毎日一つ買って帰ってきた。もちろん、手伝っている晃の分も。小さな駄菓子を申し訳なさそうに、でも報酬だからと嬉しそうに受け取りながら、一太は大事にしまい込んでいた。
母は、毎日仕事に出ているんだから全然休みではないじゃないか、と晃は思ったのだが、家事というのは、そのくらい休みがない作業なんだろう。やっと、分かった。親と一緒に住んでいた家を出て、どんなに大切にされ、どんなに守られていたのかをようやく知った。
そんな「家」が無かった一太を思う。ずっと家事をしていたのは母と同じだ。一太もまた、ただひたすら働いてきたのだから、のんびりできる時にのんびりすればいいのに、と晃は思ったのだ。充分にのんびりさせて貰っているよ、と一太がにこにこ笑うから、晃はそれ以上、強くは言えなかった。
そうだ。絶対に、家事ができない環境に一太をおいたらどうだろう? 例えば、そう。泊まりがけの旅行だ。そういえば、卒業旅行の話を安倍がしていたな。四人で行くぞ、と当たり前のように話していた。流石の一太も、旅行先の宿で家事をしようとはしないだろう。本当にのんびりするとはどういう事かを、旅行先で一太は知るに違いない。きっと実現させよう!
家での家事は、晃も手伝ったので、自由時間はたくさんあった。家でゲームをしたり、ショッピングモールのゲームセンターへ出かけたりもした。ゲームセンターでは、一つだけ選んでクレームゲームをした一太が、百円でお菓子をぽろりと落として大はしゃぎした。
「俺、一生分のお菓子を今、もらってるのかも」
そう言って笑った一太は、クリスマスプレゼントの長靴から全てのお菓子を取り出して並べて、迷いに迷ってから一つだけ選んで食べ、後は綺麗に長靴の入れ物に戻すということを毎日繰り返していた。母が毎日買ってくるお菓子もあるのだから、入れ物の長靴に収まりきらなくなって溢れている。
「もう一つくらい食べたら?」
と、晃が言うと、
「もったいなくて」
と、大事に長靴を抱えて笑った。
「どんな味かなってドキドキしながら開けるのも楽しいし、食べてからの味もしっかり覚えておきたいから、一つずつでいいんだ」
「そっか」
どんな有名なお菓子も、一太には全部初めて食べるお菓子だから、そうして楽しんでいるのならそれでいいのだけれど。
「ものすごーく好きなのがあったら、また買いに行こうね」
「え?」
「え?」
これからの一太には、いくらでも続きがあることをしっかりと伝えておこう、と晃は思った。
「無くなったら買いに行けばいいんだよ」
「そっか……」
「うん、そう」
母のご褒美が止まる気配はなく、しばらく無くなりそうにはないけれど。
そうして、勤め人たちも休みに入る。年末の大掃除やおせち作りをして、定番のテレビ番組を観て、年越しそばを食べて初詣に行った。年始は、おせちやお雑煮を食べて、家でぬくぬくと過ごした。普通の年末年始が過ぎていった。
母は、毎日仕事に出ているんだから全然休みではないじゃないか、と晃は思ったのだが、家事というのは、そのくらい休みがない作業なんだろう。やっと、分かった。親と一緒に住んでいた家を出て、どんなに大切にされ、どんなに守られていたのかをようやく知った。
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そうだ。絶対に、家事ができない環境に一太をおいたらどうだろう? 例えば、そう。泊まりがけの旅行だ。そういえば、卒業旅行の話を安倍がしていたな。四人で行くぞ、と当たり前のように話していた。流石の一太も、旅行先の宿で家事をしようとはしないだろう。本当にのんびりするとはどういう事かを、旅行先で一太は知るに違いない。きっと実現させよう!
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と、晃が言うと、
「もったいなくて」
と、大事に長靴を抱えて笑った。
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「そっか」
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「ものすごーく好きなのがあったら、また買いに行こうね」
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「え?」
これからの一太には、いくらでも続きがあることをしっかりと伝えておこう、と晃は思った。
「無くなったら買いに行けばいいんだよ」
「そっか……」
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母のご褒美が止まる気配はなく、しばらく無くなりそうにはないけれど。
そうして、勤め人たちも休みに入る。年末の大掃除やおせち作りをして、定番のテレビ番組を観て、年越しそばを食べて初詣に行った。年始は、おせちやお雑煮を食べて、家でぬくぬくと過ごした。普通の年末年始が過ぎていった。
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