324 / 398
324 誕生日おめでとうの言葉を一番に伝えたい
しおりを挟む
「晃くん。誕生日おめでとう」
目が覚めたらやっぱり晃の腕の中で、一太はくふ、と笑ってから顔を上に向け、晃の顎にキスをした。ぐっすり眠っている晃の反応はないが、満足して体を擦り寄せる。
本当は昨夜、日付けが変わるまで起きていて晃に誕生日おめでとうのメールを送りたかった。一太が今年の誕生日にしてもらって、とても嬉しかったからだ。けれど、病み上がりの体は思っていたより弱っていたのか、お風呂に入ったらあっという間に、眠たくて眠たくて堪らなくなってしまった。
「いっちゃん。もう寝よう?」
晃の言葉に、はっと目を開ける時間を繰り返して、とうとう怒られた。
「無理して起きてたら、また熱が出るよ! 普通に生活してて体調を崩してしまうのは仕方ないけど、寝られる時間があるのに寝ずにいて体調を崩すのは駄目だと思う」
「ご、ごめん……」
「なんで寝たくないの?」
ぐ、と言葉に詰まった一太の上着を脱がして自分も上着を脱ぎ、晃は一太を抱きしめて、ベッド下に敷いた布団に一緒に寝転がった。
あ、昨日と同じ……。そう思うと、ふと一太の力が抜けた。緩く暖房が付けてある晃の部屋は寒くはなかったが、布団に入るとやはり暖かさのレベルが違う。寝た後、夜中に暖房が消えるタイマー設定にしてあるからと暖房はそのまま、部屋の電気を消す。すぐにうと、としかけて一太は頭を振った。尋ねられたことに答えていない……。
「あきらくんの、たんじょうび……」
「うん?」
「たんじょうび、おめでとうっていちばんに……」
ああ、駄目だ。寝てしまう。
不意に、ぎゅう、と強く抱きしめられた。
「僕に、一番に、おめでとうって言いたかったの?」
「うん……」
昨日の第一回誕生日パーティで、すでにたくさんたくさん言ってしまったけれど。
でも、本当の誕生日の日に一番に伝えたかった。おめでとうって。誕生日おめでとうって。だって、一太がしてもらってとても嬉しかったから。
「嬉しい。ありがとう」
「ねたら、メール……」
「大丈夫。このまま寝るから、起きてすぐ僕に伝えて」
「え?」
「起きてすぐに言ってくれたら、いっちゃんが絶対に一番最初だよ」
そうなのか。ぼんやりした頭で一太は思った。
「メール見るより先に、いっちゃんの声でおめでとうって言ってもらえたら最高だ。一番好きな人に、一番最初に祝ってもらえて嬉しいよ」
そうして一太は、安心して寝たのだ。
だから今、起きてすぐに、とりあえず一度伝えることができて満足した。もう少ししたら起こして、もう一度言おう。
何度でも。嬉しいことは何度でも伝えていいんだ。
今日も、なんて幸せな一日の始まりなんだろう。
目が覚めたらやっぱり晃の腕の中で、一太はくふ、と笑ってから顔を上に向け、晃の顎にキスをした。ぐっすり眠っている晃の反応はないが、満足して体を擦り寄せる。
本当は昨夜、日付けが変わるまで起きていて晃に誕生日おめでとうのメールを送りたかった。一太が今年の誕生日にしてもらって、とても嬉しかったからだ。けれど、病み上がりの体は思っていたより弱っていたのか、お風呂に入ったらあっという間に、眠たくて眠たくて堪らなくなってしまった。
「いっちゃん。もう寝よう?」
晃の言葉に、はっと目を開ける時間を繰り返して、とうとう怒られた。
「無理して起きてたら、また熱が出るよ! 普通に生活してて体調を崩してしまうのは仕方ないけど、寝られる時間があるのに寝ずにいて体調を崩すのは駄目だと思う」
「ご、ごめん……」
「なんで寝たくないの?」
ぐ、と言葉に詰まった一太の上着を脱がして自分も上着を脱ぎ、晃は一太を抱きしめて、ベッド下に敷いた布団に一緒に寝転がった。
あ、昨日と同じ……。そう思うと、ふと一太の力が抜けた。緩く暖房が付けてある晃の部屋は寒くはなかったが、布団に入るとやはり暖かさのレベルが違う。寝た後、夜中に暖房が消えるタイマー設定にしてあるからと暖房はそのまま、部屋の電気を消す。すぐにうと、としかけて一太は頭を振った。尋ねられたことに答えていない……。
「あきらくんの、たんじょうび……」
「うん?」
「たんじょうび、おめでとうっていちばんに……」
ああ、駄目だ。寝てしまう。
不意に、ぎゅう、と強く抱きしめられた。
「僕に、一番に、おめでとうって言いたかったの?」
「うん……」
昨日の第一回誕生日パーティで、すでにたくさんたくさん言ってしまったけれど。
でも、本当の誕生日の日に一番に伝えたかった。おめでとうって。誕生日おめでとうって。だって、一太がしてもらってとても嬉しかったから。
「嬉しい。ありがとう」
「ねたら、メール……」
「大丈夫。このまま寝るから、起きてすぐ僕に伝えて」
「え?」
「起きてすぐに言ってくれたら、いっちゃんが絶対に一番最初だよ」
そうなのか。ぼんやりした頭で一太は思った。
「メール見るより先に、いっちゃんの声でおめでとうって言ってもらえたら最高だ。一番好きな人に、一番最初に祝ってもらえて嬉しいよ」
そうして一太は、安心して寝たのだ。
だから今、起きてすぐに、とりあえず一度伝えることができて満足した。もう少ししたら起こして、もう一度言おう。
何度でも。嬉しいことは何度でも伝えていいんだ。
今日も、なんて幸せな一日の始まりなんだろう。
273
お気に入りに追加
1,887
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる