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318 すごろく
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それなりに焼きそばを食べた一太は、またソファに連行された。片付けの手伝いなどしなくていい、病人は寝ているもの、だそうだ。その場にいる全員から言われてしまった。
夜も朝も寝たから眠たくないです、と抗議してみたら、明里が、どこかの部屋からボードゲームを出してきて居間の机の上に乗せた。
「やるわよ」
「へ?」
決定事項らしい。一太が、説明書を手渡されて読んでいるうちに、ゲームの準備は整っていた。他の人には、説明書は必要ないらしい。
「スタート」
明里がボードの真ん中にあるルーレットを回す。勢いよく回ったルーレットの、針の先が止まった分だけコマを進めて、止まったマスに書いてある行事をこなしていくゲームらしかった。
「すごろく……?」
「そうそう。そんな感じ」
一太に、誰かとすごろくで遊んだ記憶はない。でも、学校で習った。歴史の教科書だったか、図書室で読んだ本だったか、昔からある遊びと紹介されていた。あれらはサイコロを振っていたから、これはちょっと違う。進化したすごろく、なのだろうか。
とりあえず、促されるままにルーレットを回してコマを進めているうちに、一太はすっかり夢中になってしまった。
順調に大学に入学したが、奨学金を借りたので借金を背負ってしまう。興した事業が成功して社長になった後で借金は返した。結婚して子どもが四人も生まれて、教育費が大変だった。ルーレットの示す数字の通りに進まなければいけないので、ルーレットを回した人がどうこうできることは少ないのだが、マスの指示を見るたびに慌てたり喜んだりする。その様子を見て、他の人は大笑いしてしまうのだ。
「おやつ食べようか」
と、陽子に声を掛けられるまで、明里と学、晃と一太の四人で、ずっと大騒ぎだった。
「いっちゃん、疲れてない?」
「笑い過ぎて、頬っぺた疲れた」
一太は、頬をむにむにしながら、それでもまだ笑ってしまう。
「他にもいっぱい遊び道具が置いてあったわよ。あっちの押し入れ」
え? こんな楽しそうな遊び道具が、他にもたくさん?
一太が明里の言葉に思わず反応したのを、晃は見逃さなかった。
「え? そうなんだ。いっちゃん、明日からやろう」
おもちゃ。遊び道具。そして一緒に遊ぶ相手。そんな物が自分の人生の中に現れるなんて、一太は今の今まで想像したこともなかった。
思わず、へにゃりと表情を崩す。嬉しい。遊びたい。今、とても楽しかった。
色んなゲームを見てみたい。やってみたい。
こんなことを思ったのは、生まれて初めてだった。
夜も朝も寝たから眠たくないです、と抗議してみたら、明里が、どこかの部屋からボードゲームを出してきて居間の机の上に乗せた。
「やるわよ」
「へ?」
決定事項らしい。一太が、説明書を手渡されて読んでいるうちに、ゲームの準備は整っていた。他の人には、説明書は必要ないらしい。
「スタート」
明里がボードの真ん中にあるルーレットを回す。勢いよく回ったルーレットの、針の先が止まった分だけコマを進めて、止まったマスに書いてある行事をこなしていくゲームらしかった。
「すごろく……?」
「そうそう。そんな感じ」
一太に、誰かとすごろくで遊んだ記憶はない。でも、学校で習った。歴史の教科書だったか、図書室で読んだ本だったか、昔からある遊びと紹介されていた。あれらはサイコロを振っていたから、これはちょっと違う。進化したすごろく、なのだろうか。
とりあえず、促されるままにルーレットを回してコマを進めているうちに、一太はすっかり夢中になってしまった。
順調に大学に入学したが、奨学金を借りたので借金を背負ってしまう。興した事業が成功して社長になった後で借金は返した。結婚して子どもが四人も生まれて、教育費が大変だった。ルーレットの示す数字の通りに進まなければいけないので、ルーレットを回した人がどうこうできることは少ないのだが、マスの指示を見るたびに慌てたり喜んだりする。その様子を見て、他の人は大笑いしてしまうのだ。
「おやつ食べようか」
と、陽子に声を掛けられるまで、明里と学、晃と一太の四人で、ずっと大騒ぎだった。
「いっちゃん、疲れてない?」
「笑い過ぎて、頬っぺた疲れた」
一太は、頬をむにむにしながら、それでもまだ笑ってしまう。
「他にもいっぱい遊び道具が置いてあったわよ。あっちの押し入れ」
え? こんな楽しそうな遊び道具が、他にもたくさん?
一太が明里の言葉に思わず反応したのを、晃は見逃さなかった。
「え? そうなんだ。いっちゃん、明日からやろう」
おもちゃ。遊び道具。そして一緒に遊ぶ相手。そんな物が自分の人生の中に現れるなんて、一太は今の今まで想像したこともなかった。
思わず、へにゃりと表情を崩す。嬉しい。遊びたい。今、とても楽しかった。
色んなゲームを見てみたい。やってみたい。
こんなことを思ったのは、生まれて初めてだった。
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