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283 プレゼントをもらう理由
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「俺が二つ分払う。晃くんの誕生日プレゼントに買おうと思っていたんだから、俺が払う」
「いっちゃん、これはお互いに贈り合いをするのが普通だから、いっちゃんの分は僕が払う。僕の分をいっちゃんが払って」
「でも、俺の誕生日プレゼントはもう貰ってて、俺にプレゼントをもらう理由がない」
「リングの贈り合いなんだから、贈る理由なんて、好きだからつけて欲しいってことでしょ」
「でも、俺は誕生日プレゼントで贈るけど、晃くんからはもう貰っちゃってるから、その、ええと、俺が貰いすぎで」
「はーい、ストップ。まずは、飯を食うぞ」
ショッピングモール内のハンバーガー屋さんで、晃と一太は指輪の代金の支払いで揉めていた。下見のつもりの一太は、そんなにたくさんのお金を持ってきていなかったし、バーコード決済のアプリにも、指輪二つ分の金額はチャージされていなかった。一太が財布を開けて、二つセットは今買えないからまた今度買いに来よう、と言う前に、晃がひょいとカードで支払ってしまったのだ。
一つ分なら、このくらいなら買える、晃くんにプレゼントしたい、と一太が思う値段だったのだが、それが倍だ。お揃いは嬉しいし、確かに気に入ったのだけれど、もう少し、考える時間が欲しかった。
それでも、買ってしまったのなら仕方ない。欲しかったものだし、一太からプレゼントしようと決めていたのだから、二つ分、きっちり払いたい。
とても素敵なもの、欲しかったものを手に入れたはずなのに、なんだか胸がむかむかして仕方がなくて、一太はハンバーガーを手にうつむいた。今日は、少し贅沢なチーズバーガーを買う気になれなくて、一番安いハンバーガーのセットだ。何度か、晃とハンバーガー屋にも来て、チーズバーガーの味見もした。すごく好きだった。最近はチーズバーガーばかり頼んでいたのだが、今日はなんだかハンバーガーの気分だった。それでも、単品でなくセットにしたのは、一太が単品にすると、一太の分のポテトやドリンクを晃が買ってしまうからだ。ちゃんと自分で払いたくて、外食をすると決めた日はセットを買うことに決めた。セットが買えることが、嬉しかった。
「あー、あのさ。クリスマスプレゼントにしたらどうだ?」
黙って、もそもそとハンバーガーを食べる晃と一太を見比べて、安倍が口を開く。
「え?」
「クリスマスプレゼント。そうしたら、指輪を贈り合いしてもおかしくないだろ。ていうか、贈り合いして正解だろ」
晃の顔が、ぱっと明るくなる。
「あ。そうだ! そうだよ、いっちゃん。クリスマスには好きな人とプレゼントを交換し合うものなんだ。この指輪は、クリスマスプレゼントの交換で贈り合いっこするってことにしよう」
「クリスマス、プレゼント?」
一太は、ハンバーガーをもくもくと噛みながら、一年前のクリスマスを思い出す。
大人になってから初めて届いたクリスマスプレゼント。晃は言っていた。恋人もサンタクロースらしいよ、と。
それなら、もらってもいいのだろうか。そして、一太は晃の恋人だから、晃のサンタクロースになってもいいってことか。
それなら、おかしくない? 半分ずつ払う?
「そうそう。クリスマスプレゼントの交換は、付き合ってる同士の普通」
「普通」
それなら、まあ、うん。そうしようかな。
頷いた一太の口に、ナゲットが近付いてくる。大好きな甘いソースの付いたもの。ぱくりと一口かじった後には、胸のむかむかがいつの間にかなくなっていた。
「いっちゃん、これはお互いに贈り合いをするのが普通だから、いっちゃんの分は僕が払う。僕の分をいっちゃんが払って」
「でも、俺の誕生日プレゼントはもう貰ってて、俺にプレゼントをもらう理由がない」
「リングの贈り合いなんだから、贈る理由なんて、好きだからつけて欲しいってことでしょ」
「でも、俺は誕生日プレゼントで贈るけど、晃くんからはもう貰っちゃってるから、その、ええと、俺が貰いすぎで」
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ショッピングモール内のハンバーガー屋さんで、晃と一太は指輪の代金の支払いで揉めていた。下見のつもりの一太は、そんなにたくさんのお金を持ってきていなかったし、バーコード決済のアプリにも、指輪二つ分の金額はチャージされていなかった。一太が財布を開けて、二つセットは今買えないからまた今度買いに来よう、と言う前に、晃がひょいとカードで支払ってしまったのだ。
一つ分なら、このくらいなら買える、晃くんにプレゼントしたい、と一太が思う値段だったのだが、それが倍だ。お揃いは嬉しいし、確かに気に入ったのだけれど、もう少し、考える時間が欲しかった。
それでも、買ってしまったのなら仕方ない。欲しかったものだし、一太からプレゼントしようと決めていたのだから、二つ分、きっちり払いたい。
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「あー、あのさ。クリスマスプレゼントにしたらどうだ?」
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「え?」
「クリスマスプレゼント。そうしたら、指輪を贈り合いしてもおかしくないだろ。ていうか、贈り合いして正解だろ」
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「あ。そうだ! そうだよ、いっちゃん。クリスマスには好きな人とプレゼントを交換し合うものなんだ。この指輪は、クリスマスプレゼントの交換で贈り合いっこするってことにしよう」
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それなら、もらってもいいのだろうか。そして、一太は晃の恋人だから、晃のサンタクロースになってもいいってことか。
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「普通」
それなら、まあ、うん。そうしようかな。
頷いた一太の口に、ナゲットが近付いてくる。大好きな甘いソースの付いたもの。ぱくりと一口かじった後には、胸のむかむかがいつの間にかなくなっていた。
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