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206 実家
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「ただいま」
「おかえりー!」
「わぁ。張り切ってる……」
玄関に迎えに出てきた母の声に、松島はぼそりと呟いた。すでに疲れた顔をしている。一太は、そんな松島に首を傾げながら、松島の母へ頭を下げた。
「あけましておめでとうございます。あの。お世話になります」
「あけましておめでとう。いっちゃんも、おかえり」
やっぱり、おかえりなのか、と腑に落ちないものはあったが、ただいまと一太は答えた。おかえりへの返事は、ただいましか知らないからだ。
「まずは誕生日のケーキ食べる? お昼ごはんは、エビフライと唐揚げにする? おせちもあるんだけど、どっちから食べる?」
ん?
朝の八時発の電車に乗って約二時間、そこから車で十分で松島の実家に着いた。今は十時半前である。朝食のパンを電車の中で食べたので、一太は今、お腹は全く空いていない。まずは、誕生日のケーキとは?
「母さん。今はお腹空いてないから、誕生日ケーキは三時のおやつに食べるよ。置いておいて」
「そう?」
一太は、松島の言葉にほっとした。今、ケーキを食べたら確実に昼ごはんは入らない。
「それとエビフライと唐揚げを両方は多過ぎ。どちらも残ったら困るだろ。唐揚げは明日にしたら?」
「そう? 二人の好きな物それぞれ作ってあげたかったんだけど。そんなに手間じゃないわよ。エビフライは揚げるだけだし、唐揚げも浸け置きに時間かかるけど、それだけよ」
「どうせなら、どちらも美味しく食べたいだろ? 明後日の昼までいるから、明日唐揚げにしたらいいじゃん」
「すき焼きもするつもりなんだけど」
「じゃ、それは明後日の昼。ほら、できた。おせちと雑煮もあるんだろ?」
「そう?」
松島の母は、松島の好物に加えて一太の好物まで作ってくれる予定らしい。一太は、ただただ怒涛の勢いで交わされる会話を聞いていた。松島の父は、とっくに玄関の奥へと入って行った。
「あー、じゃあさ、あれ、ポテト。ポテトある?」
「あるわよ。揚げるだけのポテト買ってきた。晃、好きだもんねえ」
「いっちゃんも好きだから、エビフライにも唐揚げにもポテト付けてよ」
「分かった! 任せて。そう、いっちゃんも好きなのね。覚えとく」
「いつも絶対いるって訳じゃないんだからな。あったら欲しいだけだから」
何故か松島は必死で念押ししている。大好きなんだから、いつも貰っておけばいいのに。
「はいはーい。お布団は夏と同じで晃の部屋に二つ敷いたからね。狭いけど、寝るだけだから大丈夫よね?」
「分かった。荷物置いてくる。いっちゃん、行こ」
そのまま、玄関から階段を登ろうとすると、更に声がかかる。
「温かい飲み物入れとくね。晃、コーヒー? いっちゃん、ミルクティでいい?」
「それでいい」
大きな声で返事をした松島が、一太を振り返った。
「ほんと、母さんがうるさくてごめん」
「ううん。陽子さん、晃くんが帰ってきて嬉しいんだね」
これが実家に帰るってことかあ。
「おかえりー!」
「わぁ。張り切ってる……」
玄関に迎えに出てきた母の声に、松島はぼそりと呟いた。すでに疲れた顔をしている。一太は、そんな松島に首を傾げながら、松島の母へ頭を下げた。
「あけましておめでとうございます。あの。お世話になります」
「あけましておめでとう。いっちゃんも、おかえり」
やっぱり、おかえりなのか、と腑に落ちないものはあったが、ただいまと一太は答えた。おかえりへの返事は、ただいましか知らないからだ。
「まずは誕生日のケーキ食べる? お昼ごはんは、エビフライと唐揚げにする? おせちもあるんだけど、どっちから食べる?」
ん?
朝の八時発の電車に乗って約二時間、そこから車で十分で松島の実家に着いた。今は十時半前である。朝食のパンを電車の中で食べたので、一太は今、お腹は全く空いていない。まずは、誕生日のケーキとは?
「母さん。今はお腹空いてないから、誕生日ケーキは三時のおやつに食べるよ。置いておいて」
「そう?」
一太は、松島の言葉にほっとした。今、ケーキを食べたら確実に昼ごはんは入らない。
「それとエビフライと唐揚げを両方は多過ぎ。どちらも残ったら困るだろ。唐揚げは明日にしたら?」
「そう? 二人の好きな物それぞれ作ってあげたかったんだけど。そんなに手間じゃないわよ。エビフライは揚げるだけだし、唐揚げも浸け置きに時間かかるけど、それだけよ」
「どうせなら、どちらも美味しく食べたいだろ? 明後日の昼までいるから、明日唐揚げにしたらいいじゃん」
「すき焼きもするつもりなんだけど」
「じゃ、それは明後日の昼。ほら、できた。おせちと雑煮もあるんだろ?」
「そう?」
松島の母は、松島の好物に加えて一太の好物まで作ってくれる予定らしい。一太は、ただただ怒涛の勢いで交わされる会話を聞いていた。松島の父は、とっくに玄関の奥へと入って行った。
「あー、じゃあさ、あれ、ポテト。ポテトある?」
「あるわよ。揚げるだけのポテト買ってきた。晃、好きだもんねえ」
「いっちゃんも好きだから、エビフライにも唐揚げにもポテト付けてよ」
「分かった! 任せて。そう、いっちゃんも好きなのね。覚えとく」
「いつも絶対いるって訳じゃないんだからな。あったら欲しいだけだから」
何故か松島は必死で念押ししている。大好きなんだから、いつも貰っておけばいいのに。
「はいはーい。お布団は夏と同じで晃の部屋に二つ敷いたからね。狭いけど、寝るだけだから大丈夫よね?」
「分かった。荷物置いてくる。いっちゃん、行こ」
そのまま、玄関から階段を登ろうとすると、更に声がかかる。
「温かい飲み物入れとくね。晃、コーヒー? いっちゃん、ミルクティでいい?」
「それでいい」
大きな声で返事をした松島が、一太を振り返った。
「ほんと、母さんがうるさくてごめん」
「ううん。陽子さん、晃くんが帰ってきて嬉しいんだね」
これが実家に帰るってことかあ。
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