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182 先のことなんて分からないけれども
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「ごちそうさまでした」
挨拶もしっかりすると、一太は満腹になったお腹をそっと撫でた。ちょっと食べ過ぎたかもしれない。
「いっちゃん、大丈夫? デザート多かったかな」
「ううん。美味しかった」
明日は、夕方から二人でバイトに行くだけだから、帰ってすぐに寝てしまってもいい。座って、レポートだけまとめて、あ、でもお風呂は入りたいな。
一太は、松島に笑いかける。食べ過ぎて腹痛をおこした姿を見せたことは、一度しかない。なのに、その後から、ずっとこうして心配してくるのだから、晃くんはずいぶんと心配症だ。
「誘ってくれてありがとう」
松島が財布を出しながら、賀川と北村にお終いの挨拶をした。一太も慌てて財布を手にする。
「いっちゃんの分はこれだけね」
松島は、スマホの計算機能を出して計算した数字を一太に見せてくれたので、一太はその分を財布から出して机に置いた。松島も自分の分を置く。
「あ、待って、松島くん」
「ん? なに?」
「紗良。ほら、言っておきなよ」
「あ……え、でも」
先ほどまで、一太と軽快に話していた北村が、別人のようにおずおずと口ごもる。
「こんな機会ないよ。他にも狙ってる人、たくさんいるんだからさ」
「ん」
一度うつむいた北村が、真剣な顔で松島の方を向いた。楽しそうだった松島の顔が、無表情になるのが見えた。
「あの、松島くん。私、松島くんの事が好きです」
「そうなんだ。ありがとう」
北村が言い終えるかどうかというタイミングで、松島が返事を返した。
「あ……あの、ピアノが上手な所も、いつも冷静な所も、その、格好良いなと思ってて……。その、顔も、格好良いし……」
「…………」
分かる。晃くんは格好良い。俺も、色々な時に、晃くん格好良いなって思ってるよ。いつも冷静、っていうのはちょっと違うと思うけど。
今も、俺に食べさせ過ぎたかもって、焦って心配してるもん。
一太は、北村が言い募る言葉を、うんうんと頷きながら聞いた。
「あの。あの、もし良ければ、その、私と」
「ごめんね。僕、好きな人がいるから、北村さんとは付き合えない」
「…………あ。あ、そうなんだ。分かった、ありがとう」
「うん」
あれ? これって、告白ってやつ、だったのかな? 俺、聞いちゃって良かったのかな。
「その、松島くんは、その好きな人って人と付き合ってるの?」
賀川が、うつむいてしまった北村の背中にそっと手を当てながら聞いてきた。
付き合ってる。
あ。
俺。
晃くんと付き合ってるのは、俺だ。
一太が松島を見上げると、視線に気付いた松島に、にこりと微笑まれた。
「うん。付き合ってるよ」
「そっか。そうなんだ。彼女いたんだ」
「…………」
「もし、その人と付き合ってなかったら、紗良のこと、考えてくれた?」
「ううん。その人のことすごく好きだから、他の人と付き合うなんて考えられない」
「でも、その相手の人が松島くんのこと好きじゃなくなったら、とか」
「好きじゃなくならないよ?」
一太は、思わず口を挟んだ。
そんな日がくると思ったことはない。一太は毎日、晃くんのこと好きだなあ、と思っている。まあ、先のことなんて誰にも分からないけれど、少なくとも今、ものすごく好きだ。
「え?」
「僕も、好きじゃなくならないと思う。そんな事、考えたくもないしね」
賀川は、一太と松島をまじまじと見比べた。
「え?」
「僕は今、好きな人と付き合ってて幸せだから、もし告白しようと考えている人がいたら、そう伝えておいてほしいな。じゃ、また。また学校で」
松島は、にっこりと笑顔を見せると、一太の手を繋いで席から立ち上がった。
挨拶もしっかりすると、一太は満腹になったお腹をそっと撫でた。ちょっと食べ過ぎたかもしれない。
「いっちゃん、大丈夫? デザート多かったかな」
「ううん。美味しかった」
明日は、夕方から二人でバイトに行くだけだから、帰ってすぐに寝てしまってもいい。座って、レポートだけまとめて、あ、でもお風呂は入りたいな。
一太は、松島に笑いかける。食べ過ぎて腹痛をおこした姿を見せたことは、一度しかない。なのに、その後から、ずっとこうして心配してくるのだから、晃くんはずいぶんと心配症だ。
「誘ってくれてありがとう」
松島が財布を出しながら、賀川と北村にお終いの挨拶をした。一太も慌てて財布を手にする。
「いっちゃんの分はこれだけね」
松島は、スマホの計算機能を出して計算した数字を一太に見せてくれたので、一太はその分を財布から出して机に置いた。松島も自分の分を置く。
「あ、待って、松島くん」
「ん? なに?」
「紗良。ほら、言っておきなよ」
「あ……え、でも」
先ほどまで、一太と軽快に話していた北村が、別人のようにおずおずと口ごもる。
「こんな機会ないよ。他にも狙ってる人、たくさんいるんだからさ」
「ん」
一度うつむいた北村が、真剣な顔で松島の方を向いた。楽しそうだった松島の顔が、無表情になるのが見えた。
「あの、松島くん。私、松島くんの事が好きです」
「そうなんだ。ありがとう」
北村が言い終えるかどうかというタイミングで、松島が返事を返した。
「あ……あの、ピアノが上手な所も、いつも冷静な所も、その、格好良いなと思ってて……。その、顔も、格好良いし……」
「…………」
分かる。晃くんは格好良い。俺も、色々な時に、晃くん格好良いなって思ってるよ。いつも冷静、っていうのはちょっと違うと思うけど。
今も、俺に食べさせ過ぎたかもって、焦って心配してるもん。
一太は、北村が言い募る言葉を、うんうんと頷きながら聞いた。
「あの。あの、もし良ければ、その、私と」
「ごめんね。僕、好きな人がいるから、北村さんとは付き合えない」
「…………あ。あ、そうなんだ。分かった、ありがとう」
「うん」
あれ? これって、告白ってやつ、だったのかな? 俺、聞いちゃって良かったのかな。
「その、松島くんは、その好きな人って人と付き合ってるの?」
賀川が、うつむいてしまった北村の背中にそっと手を当てながら聞いてきた。
付き合ってる。
あ。
俺。
晃くんと付き合ってるのは、俺だ。
一太が松島を見上げると、視線に気付いた松島に、にこりと微笑まれた。
「うん。付き合ってるよ」
「そっか。そうなんだ。彼女いたんだ」
「…………」
「もし、その人と付き合ってなかったら、紗良のこと、考えてくれた?」
「ううん。その人のことすごく好きだから、他の人と付き合うなんて考えられない」
「でも、その相手の人が松島くんのこと好きじゃなくなったら、とか」
「好きじゃなくならないよ?」
一太は、思わず口を挟んだ。
そんな日がくると思ったことはない。一太は毎日、晃くんのこと好きだなあ、と思っている。まあ、先のことなんて誰にも分からないけれど、少なくとも今、ものすごく好きだ。
「え?」
「僕も、好きじゃなくならないと思う。そんな事、考えたくもないしね」
賀川は、一太と松島をまじまじと見比べた。
「え?」
「僕は今、好きな人と付き合ってて幸せだから、もし告白しようと考えている人がいたら、そう伝えておいてほしいな。じゃ、また。また学校で」
松島は、にっこりと笑顔を見せると、一太の手を繋いで席から立ち上がった。
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