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159 ここは幸せの国
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食べ物は、たくさんある屋台で色々なものを買って、あちこちにあるベンチに座って食べた。
「すごい。漫画とかアニメに出てきそう」
「松島。そんな上品に食うな。こうやって、大口開けてだなあ」
大きな骨付き肉に感動した松島と安倍が、わしづかみにして食べている。遊園地のキャラクターが、こちらにかじりつくように大口を開けた形の総菜パンを持っていた岸田が、パンを一太に預けてスマホを構え、二人が大口を開けた瞬間を写真に収めた。
「その写真、欲しい」
「もちろん」
晃くんの、いつもと違う顔。それが、今だけでなくいつでも見られるなんて! 写真、いいなあ。スマホ、すごい!
普段から、スマホを大して手元に置かずに暮らしていた一太は、どうも鞄に片付けがちだ。新しいスマホを思い切って買ってから、様々な店のポイントカードや割引クーポンの配布されるアプリを提示するために取り出すことは増えたが、写真を撮ろうと思ってスマホを手にすることがなかった。誰かが撮っていると、あ、と思う。出遅れてしまっているが、今日は四人連れである。欲しい、と言ったら、すぐに送られてくるのだ。
スマホ、すごい。
送られてきた写真を見て、にまにましながら、面白い形の総菜パンを写真に収める。スーパーで買うよりずいぶん高かったが、その辺は覚悟の上である。かじりついたら、どこかでシャッター音がした。今日は、どんな写真も欲しいので、気にしないことにして、一太なりの大きな口で頬張った。
「美味しい!」
似たような味の総菜パンはそこら中にあるかもしれないが、今日食べたこれは、一太の人生で一番美味しかったと言っても過言ではないだろう。楽しくて美味しくて、ずっと気分がふわふわしている。
「いっちゃん、これも食べるでしょ。はい、あーん」
「あーん」
松島が差し出してくれる大きな骨付き肉も、もちろんかじった。かしゃ、とシャッター音がしたから、その写真も後でもらおう。
もちろん骨付き肉も、ほっぺたが落ちるくらい美味しかった。
昼を過ぎると、更にパーク内に人が増えてきた。もう一つ、人気なのだという、城の形の建物内を乗り物で巡る行列に並んで入り、空を飛んでいるかのような錯覚に陥る映像を堪能した。その後は、演劇を見せてくれる所で座って、大迫力の劇を見た。水があるところで、役者が高い場所から水に落ちたり、水上バイクで走り回ったり、すごかった。前の方に座ると水がかかると書いてあるのに、わざわざ前の方に座って、四人で水を引っかけられた。急流すべりの時に買ったビニール袋のような合羽が大活躍で、服はほどほどの濡れ具合で済んだから良かったが。
「すごかったー。すごかったー」
一太は、どきどきする胸を押さえて言った。
「最後に大きな戦闘機が突っ込んでくるの、びっくりしたよね」
「うん」
松島も胸を押さえているから、同じ気持ちらしい。本当にびっくりしたから。
「次は、どうする?」
マップを開いた安倍に岸田が答えた。
「パレードが見たい!」
こんなにたくさん楽しんだのに、まだまだ時間がたっぷりある。
まだまだ行っていないエリアがたくさんある。
一太は、幸せなため息を吐いて、松島を見上げた。
「こんな素敵な所に連れてきてくれて、ありがとう!」
「すごい。漫画とかアニメに出てきそう」
「松島。そんな上品に食うな。こうやって、大口開けてだなあ」
大きな骨付き肉に感動した松島と安倍が、わしづかみにして食べている。遊園地のキャラクターが、こちらにかじりつくように大口を開けた形の総菜パンを持っていた岸田が、パンを一太に預けてスマホを構え、二人が大口を開けた瞬間を写真に収めた。
「その写真、欲しい」
「もちろん」
晃くんの、いつもと違う顔。それが、今だけでなくいつでも見られるなんて! 写真、いいなあ。スマホ、すごい!
普段から、スマホを大して手元に置かずに暮らしていた一太は、どうも鞄に片付けがちだ。新しいスマホを思い切って買ってから、様々な店のポイントカードや割引クーポンの配布されるアプリを提示するために取り出すことは増えたが、写真を撮ろうと思ってスマホを手にすることがなかった。誰かが撮っていると、あ、と思う。出遅れてしまっているが、今日は四人連れである。欲しい、と言ったら、すぐに送られてくるのだ。
スマホ、すごい。
送られてきた写真を見て、にまにましながら、面白い形の総菜パンを写真に収める。スーパーで買うよりずいぶん高かったが、その辺は覚悟の上である。かじりついたら、どこかでシャッター音がした。今日は、どんな写真も欲しいので、気にしないことにして、一太なりの大きな口で頬張った。
「美味しい!」
似たような味の総菜パンはそこら中にあるかもしれないが、今日食べたこれは、一太の人生で一番美味しかったと言っても過言ではないだろう。楽しくて美味しくて、ずっと気分がふわふわしている。
「いっちゃん、これも食べるでしょ。はい、あーん」
「あーん」
松島が差し出してくれる大きな骨付き肉も、もちろんかじった。かしゃ、とシャッター音がしたから、その写真も後でもらおう。
もちろん骨付き肉も、ほっぺたが落ちるくらい美味しかった。
昼を過ぎると、更にパーク内に人が増えてきた。もう一つ、人気なのだという、城の形の建物内を乗り物で巡る行列に並んで入り、空を飛んでいるかのような錯覚に陥る映像を堪能した。その後は、演劇を見せてくれる所で座って、大迫力の劇を見た。水があるところで、役者が高い場所から水に落ちたり、水上バイクで走り回ったり、すごかった。前の方に座ると水がかかると書いてあるのに、わざわざ前の方に座って、四人で水を引っかけられた。急流すべりの時に買ったビニール袋のような合羽が大活躍で、服はほどほどの濡れ具合で済んだから良かったが。
「すごかったー。すごかったー」
一太は、どきどきする胸を押さえて言った。
「最後に大きな戦闘機が突っ込んでくるの、びっくりしたよね」
「うん」
松島も胸を押さえているから、同じ気持ちらしい。本当にびっくりしたから。
「次は、どうする?」
マップを開いた安倍に岸田が答えた。
「パレードが見たい!」
こんなにたくさん楽しんだのに、まだまだ時間がたっぷりある。
まだまだ行っていないエリアがたくさんある。
一太は、幸せなため息を吐いて、松島を見上げた。
「こんな素敵な所に連れてきてくれて、ありがとう!」
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