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11 いつも通り手を繋いでいます
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無事にお金を払ってバスを降りた。一太以外は皆、カードをピッとして降りたので、おかしくないようにするにはやはりカードは持っていないといけないのかと思ってしまう。
チャージって先払いだよな。カードに入れたお金は取り出せるのかな。手持ちが足りなくなった時に取り出せるなら持っててもいいけど、でも、カード本体にお金はかからないのかな。カード自体は無料?
ぐるぐると余計なことばかり考えているうちに松島に手を引かれて、バス停の目の前の建物の中に入っていた。様々な店が入っている巨大なショッピングモール。迷うことなく進む女の子三人組の後ろに付いて一太たちも進む。
「松島くんと村瀬くんって仲良いよね」
「お前らだって腕組んで歩いてんじゃん」
一太が、くすくす笑いながら振り返る女の子たちに首を傾げていると、安部が呆れたように返事を返した。
お前らだって?
そこでようやく、松島と手を繋いでいることに気付く。あれ、いつから?
「こうしてると安心でしょ」
松島は、当然のように繋いだ手を持ち上げて言う。
「安心って何だよ」
「村瀬くん、ものすごい方向音痴なんだ」
「うえ?」
変な声が出た。
あはははは、と女の子らしい可愛い笑い声が響く。
「そうなの?」
「えー、だからいつも手を繋いで移動してるの?」
「男子の方向音痴って珍しくない?」
ぽんぽんと軽快に話が続いて、一つ一つの言葉が一太の頭に届く頃には次の話に移っている。
男子の方向音痴って珍しいのか? え? じゃあ女子にはいっぱいいるの?
いや、そんなことより、俺たちっていつも手を繋いで移動してたっけ? え? いつもっていつ? 学校? 学校だよな?
思い返せば確かに、手を繋いで移動していたような……。安心。そう、安心していた。安心して松島に手を引かれていたものだから、いまだに大学内の教室の配置を覚えきれていないのかもしれない。これは、よくない。今日は初めての場所だから仕方ないけれど、大学内くらいちゃんとしなければ。
一太は決意を新たに松島を見上げたが、にこりと笑い返されただけだった。
その顔を見て、ふと思う。
一太は自分が方向音痴だなんて松島に言ったことがあっただろうか。
「なんで、方向音痴って……」
「ん? 分かるでしょ」
「あ、う、そうなのか?」
そんなに分かりやすかったかな。
「俺は知らなかったけど?」
こちらもほとんど共に行動している安部が口を挟む。
うん?
「松島くんが村瀬くんのことをよく見てるってことよねえ」
「本当に仲良しねえ」
「え? 俺は?」
「えー? 安部くんは、何なのかなあ」
「え? 俺も友達だろ?」
「私たちに聞かれても」
「ねえ?」
「いや、俺も友達だよな?」
女の子たちとも松島とも上手に話している安部が、一太の空いている左手を持ち上げて掴む。
友達。
何とも嬉しい響きに否やは無かった。
「もちろん。これからもよろしく」
松島がにこにこと答える言葉に、一太も深く深く頷いた。
チャージって先払いだよな。カードに入れたお金は取り出せるのかな。手持ちが足りなくなった時に取り出せるなら持っててもいいけど、でも、カード本体にお金はかからないのかな。カード自体は無料?
ぐるぐると余計なことばかり考えているうちに松島に手を引かれて、バス停の目の前の建物の中に入っていた。様々な店が入っている巨大なショッピングモール。迷うことなく進む女の子三人組の後ろに付いて一太たちも進む。
「松島くんと村瀬くんって仲良いよね」
「お前らだって腕組んで歩いてんじゃん」
一太が、くすくす笑いながら振り返る女の子たちに首を傾げていると、安部が呆れたように返事を返した。
お前らだって?
そこでようやく、松島と手を繋いでいることに気付く。あれ、いつから?
「こうしてると安心でしょ」
松島は、当然のように繋いだ手を持ち上げて言う。
「安心って何だよ」
「村瀬くん、ものすごい方向音痴なんだ」
「うえ?」
変な声が出た。
あはははは、と女の子らしい可愛い笑い声が響く。
「そうなの?」
「えー、だからいつも手を繋いで移動してるの?」
「男子の方向音痴って珍しくない?」
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男子の方向音痴って珍しいのか? え? じゃあ女子にはいっぱいいるの?
いや、そんなことより、俺たちっていつも手を繋いで移動してたっけ? え? いつもっていつ? 学校? 学校だよな?
思い返せば確かに、手を繋いで移動していたような……。安心。そう、安心していた。安心して松島に手を引かれていたものだから、いまだに大学内の教室の配置を覚えきれていないのかもしれない。これは、よくない。今日は初めての場所だから仕方ないけれど、大学内くらいちゃんとしなければ。
一太は決意を新たに松島を見上げたが、にこりと笑い返されただけだった。
その顔を見て、ふと思う。
一太は自分が方向音痴だなんて松島に言ったことがあっただろうか。
「なんで、方向音痴って……」
「ん? 分かるでしょ」
「あ、う、そうなのか?」
そんなに分かりやすかったかな。
「俺は知らなかったけど?」
こちらもほとんど共に行動している安部が口を挟む。
うん?
「松島くんが村瀬くんのことをよく見てるってことよねえ」
「本当に仲良しねえ」
「え? 俺は?」
「えー? 安部くんは、何なのかなあ」
「え? 俺も友達だろ?」
「私たちに聞かれても」
「ねえ?」
「いや、俺も友達だよな?」
女の子たちとも松島とも上手に話している安部が、一太の空いている左手を持ち上げて掴む。
友達。
何とも嬉しい響きに否やは無かった。
「もちろん。これからもよろしく」
松島がにこにこと答える言葉に、一太も深く深く頷いた。
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