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生配信19 配信に集中できない
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「はい、どうも。今日もゲーム配信、配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です!」
『こんばんは!』
『こんばんは』
『こん』
『こん!』
『こん!』
「皆さん、こん!」
この『こん』とは、『こんにちわ』と『こんばんは』の両方に使える便利な言葉、らしい。先程、絵茶さんのTwitterで、そんなことを言っていた。
つまり、『こん』とコメントしたリスナーさんは絵茶さんのTwitterをフォローしているわけで、もしかしたら、絵茶さんのリスナーさん達が見にきているかも。
そう考えると、登録者数増えているんじゃあ………。
最近、あんま見てなかったからな。
自分のチャンネルを表示して、登録者数を確認すると、
19.5万人。
………えっ、19.5万人?
「19.5万人も登録者数いたの! マジかよ!」
自分のチャンネルなのに知らなかったのかよ、とか言われてしまうかもしれないが、見ていなければ知らない。
最後に確認したのは、サキサキさんに誘われて、絵茶さんと初コラボのエーペックスのとき。その時は、18万人だった気がする。
あれから、1.5万人も増えたのか。絵茶さんとコラボしたおかげかもしれない。
ありがたや、ありがたや。
俺は両手を組み、絵茶さんを崇めるように感謝をする。
19.5万人いたことに驚いたのは、俺だけでなく、
『え、19万人も登録者数いたの?』
『滝なのに、19万人⁉︎』
『そんなバカな! 表示ミスじゃないのか?』
『俺はバグってるのかと思ってたよ』
アンチ寄りかもしれないリスナーさん達も驚いていた。
ってか、コメントに棘ありすぎない?
まあ、俺のリスナーさん達はね、素直に喜べないんですよ。どうせ、このコメントを打っているのは、古参のリスナーさん達でしょう。
長年付き合っているんだから、次、コメント欄に流れるコメントぐらい予想もつきます。
『『『『登録解除しとこう』』』』
だと、思っていたよ。
予想通り。んでもって、この人達は、
19.4万人。
コメントした通り、登録解除ボタンを押すんですよ。
「うちのリスナーさん達はさ、一緒に喜ぶって言葉知らないの? そこはさ、『あと少しで20万人ですね』とかさ、『19万人おめでとうございます』とかさ、お祝いの言葉を送ってくれても良いんだよ?」
なんて言ったりすると、
『? 日本語分かりません』
「絶対嘘。コメントが日本語だもの」
『お祝いって何? 日本語って難しいね』
「誕生日とか祝ったことないのかな? なら、仕方ないけど」
『おめでとうって日本語だっけ?』
「日本語以外で『おめでとう』ってあるなら、逆に教えて?」
『滝にお祝いの言葉言いたくない』
「お前、アンチだな」
本当に素直じゃないリスナーさん達は、一切お祝いの言葉をコメント欄に流さない。
素直なリスナーさん達は、お祝いの言葉を流してくれるので、
「お祝いの言葉を送ってくれているリスナーさん達、ありがとう。皆さんのコメントがやる気にもなるし、勇気をくれます。本当にありがとう」
感謝の言葉でお返しする。
さて、19.5万人のお祝いの言葉をもらったことだし、配信の内容に入っていこうと思う。
「今日はね、前も配信でやったと思うけど、DOA6をやっていこうと思います」
DOAという格闘ゲームをプレイしていく。
DOAを知らないリスナーさん達がいるかもしれないので、軽く簡単に説明していく。本当に軽く簡単にだ。
「DOAというゲームは、美少女のキャラクターが沢山いる格ゲー。もちろん、美男子のキャラもいるよ」
これで説明は終わり。
DOAのタイトル画面を配信画面に映し、まずはトレーニング。
トレーニングとは、動かない敵相手に操作方法やコマンドを確認するモード。
今回ももちろん、俺の好きなキャラを使っていく。
「ティナを選択して、敵は誰でも良いや」
敵役は適当に選択する。
「10分ぐらいトレーニングモードに篭って、あとは視聴者参加型にします」
10分しかないので、トレーニングモードが始まり次第、俺はコマンド確認をしていく。
もちろん、このトレーニングモード中は、リスナーさん達を置き去りにしないように、コメント欄を読みながらコマンドを確認するつもり。
『ティナってどういうキャラですか?』
『綺麗なキャラばかりだね』
『マジで美少女格ゲー!』
『ティナみたいな外国人がタイプですか?』
「ティナの格闘スタイルは、プロレスかな。投げ技が強みなんだよね。んで、DOAはマジで美キャラばっかだよ。コメント欄にあるように、美キャラ格ゲーって感じ。俺の好きな人のタイプは、優しい人かな」
とまあ、こんな風にコメント欄を横目で見て、数ある中から無作為に拾っていくわけだが、
『この洋物好きめ!』
『おっパイ星人、滝参上!』
『巨乳に目がない滝君です!』
『うわあ、卑猥星人が出たよ!』
のような、俺を貶めようとしてくるコメントも目に入るわけで、
「誰が、おっぱい星人で卑猥星人じゃあ! ティナはただ好きなだけ。金髪巨乳っていう点はいいな、とは思うけど、俺はティナっていうキャラが好きだから使ってんの」
もちろん、反論しますとも。俺のプライドが許せないので。
『なるほど、胸が好きなのね?』
『巨乳が好きと』
『じゃあ、巨乳は好きじゃないんですね?』
『俺はおっぱい星人だけど、滝は何星人なんですか?』
「俺だって男の子ですから、おっぱいは好きですよ。好きだけど、巨乳限定というわけではなくて。美乳も普乳も貧乳も微乳もどれも好きです。でも、ティナを欲望に塗れた目では見てません。あと、俺が何星人かって? 俺は尻派の人間です」
尻派なのに、おっぱい星人と言われたことにプライドが傷ついた。
巨乳だけ好きな男というレッテルを貼られたことにプライドが傷ついた。
ティナを欲望に塗れた目で見ていると思われたことにプライドが傷ついた。
だから、俺は反論する。
会話は下ネタばかりだが、一男として、格ゲーマーとして、譲れないので反論させていただく。
それに対してコメント欄は、
『なるほど、滝も尻派か。同胞よ』
『尻派の人間か、敵だな』
『足フェチの同胞はいるのか! 返事をしてくれ!』
『拙者は首筋派。首筋派はいるか!』
フェチの話に変わり、各々が自分のフェチについて書き込んでくる。
ふっ、俺のリスナーさん達って大半が男性なんだろうな。
コメント欄を見れば分かるし、多分、女性のリスナーさん達はこういう話をすると登録解除ボタンを押すんだろう。
コメント欄がフェチの話になる中、俺はあるコメントを見つける。
『サキサキチャンネル : ………お尻派ねぇ』というもの。
ま、まさか! ご本人なわけないですよね? だって、あっちだって配信中だろうし、自分が配信しているのに、他人の配信を見てるわけ………ないですよね?
手元にあるスマホからサキサキさんのテトリス配信の枠に飛び、恐る恐る確認する。すると、
『へぇ、滝君ってこんな人だったんだ。お尻派だって、リスナーさん』
バリバリ配信に乗っているではないか。
ま、不味い。これは不味いぞ。サキサキさんに知られたということは、これから『尻派』で色々弄られる。弱みを握られてしまった。
『サキサキさん、いるじゃん』
『ヤベ、コメント消しとこ』
『サキサキさん、この人は尻派の人間です』
『滝は胸も尻も大好きな人間です!』
サキサキさんがいることに気がついたリスナーさん達は、俺を売って、コメントを削除して逃げる。
「………終わった」
サキサキさんにバレたということは、みんなにバラされる。
バラされたらどうなるか?
そんなの弄り倒され………いや、弄り殺される。
ここは1つ。
「これを見ているサキサキさん。どうか絵茶さんにだけは言わないでください」
聡太さんにバレるのは、まあ大丈夫。あの人も男だから。しかし、絵茶さんにバレるのだけは避けたい。
だって、絵茶さんにもバレたら、俺を殺すまで弄ってくるもの。しかも、2人で。
お願いします、と言葉を続けて懇願する。が、
『絵茶チャンネル : 無駄だよ。最初っからいるしw』
………………完全に終わった。
スマホからサキサキさんの笑い声が聞こえる。何故か、聞こえるはずのない絵茶さんの笑い声も聞こえてくる。
ピコン、ピコン。
PCの通話アプリに着信。
「はい」
出ないで済むのなら出ないのだが、これは済まないので出る。
「もしもし、お尻派の滝さん!」
『絵茶さん!」
『絵茶さんだ!』
『絵茶さん』
『絵茶さん来た!』
着信相手は絵茶さん。ここに1人来たということは、
ピコン、ピコン。
もう1人も来るよね。
「えっちゃん、こん!」
「サキちゃん、こん!」
出たくないけど出たわけだが、いや、あんたは配信中でしょうが!
自分の配信に集中してくれよ。
「んで、お尻星人の滝君、こん!」
「一言多いような。まあ、こん」
お尻星人は余計だよ、余計。
「ってかさ、サキサキさん、配信中だよね? 自分の配信に集中したらどう?」
この通話から追い出したい俺は、追い出せそうな理由があるサキサキさんを、まずは標的にする。
「んん? まあ確かに配信中ですけど、それはそれ。これはこれという訳で、えっちゃんと一緒に弄らせていただきます」
「サキちゃんと一緒に弄らせていただきます」
「………今日の配信はこれで終わろうかな?」
めちゃくちゃ、この2人に弄られるのは嫌だ。屈辱でしかない。
「まあ、まあ! 配信に集中しようじゃないですか!」
「お前には言われたくない!」
本当にサキサキさんって言う人は。弱みを握ったら、死んでも離さないタイプですよ、この人。
「私は配信してないので、滝さんの弄りに集中させていただきます」
「いらんいらん! 絵茶さんも帰ってください」
「じゃあ、質問なんだけど、どんなお尻が好み?」
「え、無視ですか? 帰ってくださいって言ってるんですけど?」
ってか、どんな質問だよ! やめろよ、そんな黒歴史を生むような質問は。
「それは、私も気になる」
「気にならんで良い!」
『気になります』
『我々も気になる』
『気になって仕方がない』
『気になって眠くなってきた』
「リスナーさん達も黙ろうね。眠くなってきた人は、そこまで気になってないね、それ」
いや、もう本当に帰って欲しい。
配信中なのにそんな質問答えたら、社会的に死ぬ。
「ねぇ~、気になるよね、サキちゃん?」
「うん! おっぱいだったら、巨乳とか美乳とか貧乳とか種類あるけど、お尻って種類あんの?」
「あれじゃない? 美尻とか小尻とか、ボンキュボンの海外の人にありそうな大きなお尻とか」
「ああ、そういうことか。じゃあ、滝君はティナさんみたいな大きなお尻が好みなのかな?」
「ああ、だからそのキャラが好きなのか!」
キャッキャ、キャッキャと騒ぐ2人。
いや、もう本当に配信を閉じたい。そして、この2人と縁を切った方がいいような気さえしてきた。
「でも、日本人ってどちらかというと、美尻や小尻だよね? 美尻と小尻には興味ないの?」
「あの、サキサキさん。黙ってて貰えますか? マジで」
「だって、気になったんだもん」
なんで気にする? 男のフェチ気になるもんなのか、女性は?
「んで、どうなんですか? 滝さんは日本人のお尻と海外の人のお尻、どっちがタイプなんですか?」
追及してこないで欲しいんだが、絵茶さんよ。
言わない選択肢はあるにはあるのだが、
「言ったら出てってくれますか? 俺の配信から」
言わない選択肢を取ったら、一生ここに残っていそうなので、言ったら出て行ってくれと遠回しに言う。
しかし、絵茶さんは、
「嫌です」
この一言で終わらす。
「じゃあ、言わない」
お願いだから出て行ってくれ。これ以上、俺に恥を欠かせないでくれ。
心の底からお願いしたい。
「じゃあ良いですよ。勝手に私とサキちゃんで想像するので」
居座る気満々の絵茶さん。もちろん、サキサキさんも、
「配信のタイトル変えてくるね。『テトリス配信からの雑談』に」
居座る気満々。
もう諦めた。この人たちを追い出すことはもう諦める。
居座る気満々の彼女達を放置して、配信を進めていく。
「お待たせしました。10分以上経ってしまったんですが、これから対戦をしていきたいと思います」
今日の配信の主役は、雑談とかではなく、格ゲー。
なので、格ゲーをしていくつもり。
「格ゲーのルールは配信の概要欄に記載しているので、それを読んでから来てください」
『やっとか』
『起動してきます』
『起動中』
その間に、リスナーさん達が入れるルームを作っておく。
もちろん、その間もサキサキさんと絵茶さんは、
「多分、滝君はどんなお尻も好きだと思うんだよ。無類のお尻好きみたいな感じで」
「確かに」
何が「確かに」じゃあ!
………まあ、そうなんだけど。言い方があるでしょ。無類のお尻好きとか、これじゃあ俺、変態だよ。
2人の会話に入る気はないが、聞き耳だけは立てとく。
続々と対戦ルームに入ってくるリスナーさん達。入ってきた順に、対戦をしていくが、
「えっちゃんは、美尻? それとも小尻?」
「そう言う、サキちゃんはどうなのよ」
そう言った話は2人だけの時にしてくれ! 全然、配信に集中出来ないでしょう。
なんなの? テンション高くない? 深夜テンションなの?
1人目のリスナーさんと対戦中なのだが、あまり集中出来ず、1人目から負けてしまう。
今度こそは集中。
2人目のリスナーさんと対戦する。
「『お2人の自信のある場所はどこですか?』だって、えっちゃんはどこ?」
「私は、足かな? 友達から「足スラっとしてて綺麗」とか言われる。サキちゃんは?」
「ううん、私は手、とかかな? 私、指が細長いんだよね。ネイルサロンとか行くと店員さんにメッチャ羨ましがまれるの」
そういえば、サキサキさんとは1度だけ会ったが、手が綺麗だった、あっ! 待って、そのコンボは痛い!
今度は何とか勝てた。
3人目のリスナーさんと対戦する前に、目に止まったコメントがあるので、それを伝える。
「『サキサキさんと絵茶さんに質問なんですが、男性のどういった点にドキッとしますか?』だってさ」
そういった質問をするのならば、サキサキさんの配信枠に行った方がいいのでは、と思うが、視聴者数がぐんっと減ってしまいそうなので、思うだけにしとく。
さて、3人目と対戦しますか。
「男性のドキッとした行動か仕草ってことだよね? 私は、ゲームばっかりしてたから、そういった経験ないな」
「「………」」
サキサキさんのコメントに、対戦中の俺も、話し相手の絵茶さんも、沈黙してしまう。
「そ、そうなんだ。わ、私もね、あんま経験ないからサキちゃんと一緒かな、うん」
これはサキサキさんに気を遣ったコメント。多分、あるだろうが、言わない選択肢を取ったな、絵茶さんは。
この話題中は、なぜか集中ができたため完勝することが出来た。
それからも2人の会話は続き、配信終盤まで雑談をしている。
配信中のコメント欄には、彼女達に対する質問が多く寄せられており、質問に対しては、俺の配信を見ている絵茶さんが対応する。
何度か、俺の配信だよね、とまるで他人の配信にお邪魔しているような感覚に陥ったが、『対戦ありがとうございました』というコメントを目にして、正気を保つことが出来た。
「あと5人くらいで終わりかな、時間的に」
そろそろ、配信時間が3時間経とうとしている。
何人のリスナーさんと対戦したのかあまり覚えていないが、結構な人数と対戦した気がする。
ラスト5人目の1人と対戦。
この人、なかなか手強いぞ。
格ゲーで大切なのは、キャラとキャラの間にできる空間の把握。ようは、間合いを読み切ることができるかが、重要になってくる。
間合いを見誤ると、先手を取られ、流れも取られる。そのため慎重に慎重を重ね、間合いの把握をする必要があるのだ。
今対戦している相手は、それを理解している。
自身のつかっているキャラの間合いとティナの間合い。この両方を理解しているため、俺がボロを出すまで焦らず、じっくりと待っている。
迂闊に動けないな。カウンター狙いで、ワンチャン………あるか?
こんな緊迫した対戦の中、
「そういえば、明日焼肉食べに行くけど、サキちゃんはどんな服装で行くの?」
「ラフな格好でいいかな、って思ってる。白色の服は着てかないけど」
「簡単に洗えるのがいいかな? ねぇ、どう思う滝さん?」
「明日、どこの焼肉屋さん行くの?」
「ちょ、話しかけないでもろて!」
このタイミングで、行けるか!
「あああああ!」
「っ!」
対戦相手の行動を予想して、勝負を仕掛けようとした途端に、サキサキさんの声。音割れしているほどの大声に気を取られ、隙を見せてしまう。
一瞬の隙だが、それを見逃さないのが今回の対戦相手。
動きの止まったティナに、怒涛のコンボラッシュからのワンテンポ置き、またコンボ。
逃げ出すためのカウンターを読んでいたかの投げ技でフィニッシュ。
「………くっ」
くっそそそそそそそ!
サキサキさんの声が無ければ、勝てたかもしれないのに。
悔しがる中、声を上げたサキサキさんは、
「テトリス、ミスった」
テトリスをミスって大声を上げたようだ。
「耳がキーンってなった。サキちゃん、うるさい!」
「ミスった、ミスった」
本当にこの人は。
人の配信に迷惑をかけるなんて………はあ、負けは負けか。
納得できない負けだが、事実は変わらない。
集中していれば、あんな大声に気を取られていなかったはずだ。
しゃあなし。
さて、
「絵茶さんは好きな服着てくればいいんじゃないの? サキサキさん、さてはラインのグループのチャット見てないでしょ。ちゃんと確認しといてね」
先程の問いに答えておく。
「え、送ってある?」
「ん、送ってあるでしょ?」
今、多分サキサキさんは確認しに行っている。俺も間違っていたら困るので、確認しに行く。
確認しに行くと、やはり記憶通り、集合場所と集合時間、食べに行く焼肉屋の情報を送っていた。
「「あっ、本当だ」」
2人の声が重なって聞こえる。どうやら、
「絵茶さんも確認しといてね」
絵茶さんも確認不足だったようだ。
「うぃ! しときました!」
ならば、よし。
焼肉の話が出てしまったせいか、コメント欄が早く流れ出した。
『焼肉⁉︎』
『ダメージ勝負の焼肉か!』
『サキサキさんと絵茶さんの服装の感想よろしく!』
『ずるいぞ、その2人と行くなんて!』
『滝、hwkjsjdjんwkdshdkdj!』
『感想をよろしく!』
『お持ち帰りするなよ』
「ちなみに、聡太さんとゼロスさんとワンスさんもいるからね?」
俺だけ責められるのは違うので、他の人を売っとく。
「服に感想、言わなくちゃいけなくなりましたね。明日、どんな感想が聞けるのかな、滝君に。ワクワク、ワクワク」
ワクワクすんなし、俺に何を求めているのやら。
「お持ち帰りって何? 弁当かなんかお持ち帰りすんの?」
答えづらい質問はしないで欲しい。
「リスナーさん方、発言には気をつけましょう」
あなた方も少し気をつけてください。
さて、あとラスト4人。
ちょっと………いや、かなり集中出来ない状況だが、集中して4戦4勝を目指そう。
「さあ、次! 対戦よろしく!」
気合を入れて挑んだ4戦だが、
「牛タン食べたい!」
「明日は楽しみだな! サキちゃん以外初めて会う人だし」
「牛タン、カルビ、ビービンバ!」
「何、その頭悪そうな歌。頭に残りそうだからやめてよ、サキちゃん」
「牛タン、ロース、ビービンバ!」
「やめて、本当におかしくなりそう! ああああああ!」
「「牛タン、ハラミ、ビービンバ!」」
結果はもちろん、4敗で終わった。
「本当、マジでうるさ」
『こんばんは!』
『こんばんは』
『こん』
『こん!』
『こん!』
「皆さん、こん!」
この『こん』とは、『こんにちわ』と『こんばんは』の両方に使える便利な言葉、らしい。先程、絵茶さんのTwitterで、そんなことを言っていた。
つまり、『こん』とコメントしたリスナーさんは絵茶さんのTwitterをフォローしているわけで、もしかしたら、絵茶さんのリスナーさん達が見にきているかも。
そう考えると、登録者数増えているんじゃあ………。
最近、あんま見てなかったからな。
自分のチャンネルを表示して、登録者数を確認すると、
19.5万人。
………えっ、19.5万人?
「19.5万人も登録者数いたの! マジかよ!」
自分のチャンネルなのに知らなかったのかよ、とか言われてしまうかもしれないが、見ていなければ知らない。
最後に確認したのは、サキサキさんに誘われて、絵茶さんと初コラボのエーペックスのとき。その時は、18万人だった気がする。
あれから、1.5万人も増えたのか。絵茶さんとコラボしたおかげかもしれない。
ありがたや、ありがたや。
俺は両手を組み、絵茶さんを崇めるように感謝をする。
19.5万人いたことに驚いたのは、俺だけでなく、
『え、19万人も登録者数いたの?』
『滝なのに、19万人⁉︎』
『そんなバカな! 表示ミスじゃないのか?』
『俺はバグってるのかと思ってたよ』
アンチ寄りかもしれないリスナーさん達も驚いていた。
ってか、コメントに棘ありすぎない?
まあ、俺のリスナーさん達はね、素直に喜べないんですよ。どうせ、このコメントを打っているのは、古参のリスナーさん達でしょう。
長年付き合っているんだから、次、コメント欄に流れるコメントぐらい予想もつきます。
『『『『登録解除しとこう』』』』
だと、思っていたよ。
予想通り。んでもって、この人達は、
19.4万人。
コメントした通り、登録解除ボタンを押すんですよ。
「うちのリスナーさん達はさ、一緒に喜ぶって言葉知らないの? そこはさ、『あと少しで20万人ですね』とかさ、『19万人おめでとうございます』とかさ、お祝いの言葉を送ってくれても良いんだよ?」
なんて言ったりすると、
『? 日本語分かりません』
「絶対嘘。コメントが日本語だもの」
『お祝いって何? 日本語って難しいね』
「誕生日とか祝ったことないのかな? なら、仕方ないけど」
『おめでとうって日本語だっけ?』
「日本語以外で『おめでとう』ってあるなら、逆に教えて?」
『滝にお祝いの言葉言いたくない』
「お前、アンチだな」
本当に素直じゃないリスナーさん達は、一切お祝いの言葉をコメント欄に流さない。
素直なリスナーさん達は、お祝いの言葉を流してくれるので、
「お祝いの言葉を送ってくれているリスナーさん達、ありがとう。皆さんのコメントがやる気にもなるし、勇気をくれます。本当にありがとう」
感謝の言葉でお返しする。
さて、19.5万人のお祝いの言葉をもらったことだし、配信の内容に入っていこうと思う。
「今日はね、前も配信でやったと思うけど、DOA6をやっていこうと思います」
DOAという格闘ゲームをプレイしていく。
DOAを知らないリスナーさん達がいるかもしれないので、軽く簡単に説明していく。本当に軽く簡単にだ。
「DOAというゲームは、美少女のキャラクターが沢山いる格ゲー。もちろん、美男子のキャラもいるよ」
これで説明は終わり。
DOAのタイトル画面を配信画面に映し、まずはトレーニング。
トレーニングとは、動かない敵相手に操作方法やコマンドを確認するモード。
今回ももちろん、俺の好きなキャラを使っていく。
「ティナを選択して、敵は誰でも良いや」
敵役は適当に選択する。
「10分ぐらいトレーニングモードに篭って、あとは視聴者参加型にします」
10分しかないので、トレーニングモードが始まり次第、俺はコマンド確認をしていく。
もちろん、このトレーニングモード中は、リスナーさん達を置き去りにしないように、コメント欄を読みながらコマンドを確認するつもり。
『ティナってどういうキャラですか?』
『綺麗なキャラばかりだね』
『マジで美少女格ゲー!』
『ティナみたいな外国人がタイプですか?』
「ティナの格闘スタイルは、プロレスかな。投げ技が強みなんだよね。んで、DOAはマジで美キャラばっかだよ。コメント欄にあるように、美キャラ格ゲーって感じ。俺の好きな人のタイプは、優しい人かな」
とまあ、こんな風にコメント欄を横目で見て、数ある中から無作為に拾っていくわけだが、
『この洋物好きめ!』
『おっパイ星人、滝参上!』
『巨乳に目がない滝君です!』
『うわあ、卑猥星人が出たよ!』
のような、俺を貶めようとしてくるコメントも目に入るわけで、
「誰が、おっぱい星人で卑猥星人じゃあ! ティナはただ好きなだけ。金髪巨乳っていう点はいいな、とは思うけど、俺はティナっていうキャラが好きだから使ってんの」
もちろん、反論しますとも。俺のプライドが許せないので。
『なるほど、胸が好きなのね?』
『巨乳が好きと』
『じゃあ、巨乳は好きじゃないんですね?』
『俺はおっぱい星人だけど、滝は何星人なんですか?』
「俺だって男の子ですから、おっぱいは好きですよ。好きだけど、巨乳限定というわけではなくて。美乳も普乳も貧乳も微乳もどれも好きです。でも、ティナを欲望に塗れた目では見てません。あと、俺が何星人かって? 俺は尻派の人間です」
尻派なのに、おっぱい星人と言われたことにプライドが傷ついた。
巨乳だけ好きな男というレッテルを貼られたことにプライドが傷ついた。
ティナを欲望に塗れた目で見ていると思われたことにプライドが傷ついた。
だから、俺は反論する。
会話は下ネタばかりだが、一男として、格ゲーマーとして、譲れないので反論させていただく。
それに対してコメント欄は、
『なるほど、滝も尻派か。同胞よ』
『尻派の人間か、敵だな』
『足フェチの同胞はいるのか! 返事をしてくれ!』
『拙者は首筋派。首筋派はいるか!』
フェチの話に変わり、各々が自分のフェチについて書き込んでくる。
ふっ、俺のリスナーさん達って大半が男性なんだろうな。
コメント欄を見れば分かるし、多分、女性のリスナーさん達はこういう話をすると登録解除ボタンを押すんだろう。
コメント欄がフェチの話になる中、俺はあるコメントを見つける。
『サキサキチャンネル : ………お尻派ねぇ』というもの。
ま、まさか! ご本人なわけないですよね? だって、あっちだって配信中だろうし、自分が配信しているのに、他人の配信を見てるわけ………ないですよね?
手元にあるスマホからサキサキさんのテトリス配信の枠に飛び、恐る恐る確認する。すると、
『へぇ、滝君ってこんな人だったんだ。お尻派だって、リスナーさん』
バリバリ配信に乗っているではないか。
ま、不味い。これは不味いぞ。サキサキさんに知られたということは、これから『尻派』で色々弄られる。弱みを握られてしまった。
『サキサキさん、いるじゃん』
『ヤベ、コメント消しとこ』
『サキサキさん、この人は尻派の人間です』
『滝は胸も尻も大好きな人間です!』
サキサキさんがいることに気がついたリスナーさん達は、俺を売って、コメントを削除して逃げる。
「………終わった」
サキサキさんにバレたということは、みんなにバラされる。
バラされたらどうなるか?
そんなの弄り倒され………いや、弄り殺される。
ここは1つ。
「これを見ているサキサキさん。どうか絵茶さんにだけは言わないでください」
聡太さんにバレるのは、まあ大丈夫。あの人も男だから。しかし、絵茶さんにバレるのだけは避けたい。
だって、絵茶さんにもバレたら、俺を殺すまで弄ってくるもの。しかも、2人で。
お願いします、と言葉を続けて懇願する。が、
『絵茶チャンネル : 無駄だよ。最初っからいるしw』
………………完全に終わった。
スマホからサキサキさんの笑い声が聞こえる。何故か、聞こえるはずのない絵茶さんの笑い声も聞こえてくる。
ピコン、ピコン。
PCの通話アプリに着信。
「はい」
出ないで済むのなら出ないのだが、これは済まないので出る。
「もしもし、お尻派の滝さん!」
『絵茶さん!」
『絵茶さんだ!』
『絵茶さん』
『絵茶さん来た!』
着信相手は絵茶さん。ここに1人来たということは、
ピコン、ピコン。
もう1人も来るよね。
「えっちゃん、こん!」
「サキちゃん、こん!」
出たくないけど出たわけだが、いや、あんたは配信中でしょうが!
自分の配信に集中してくれよ。
「んで、お尻星人の滝君、こん!」
「一言多いような。まあ、こん」
お尻星人は余計だよ、余計。
「ってかさ、サキサキさん、配信中だよね? 自分の配信に集中したらどう?」
この通話から追い出したい俺は、追い出せそうな理由があるサキサキさんを、まずは標的にする。
「んん? まあ確かに配信中ですけど、それはそれ。これはこれという訳で、えっちゃんと一緒に弄らせていただきます」
「サキちゃんと一緒に弄らせていただきます」
「………今日の配信はこれで終わろうかな?」
めちゃくちゃ、この2人に弄られるのは嫌だ。屈辱でしかない。
「まあ、まあ! 配信に集中しようじゃないですか!」
「お前には言われたくない!」
本当にサキサキさんって言う人は。弱みを握ったら、死んでも離さないタイプですよ、この人。
「私は配信してないので、滝さんの弄りに集中させていただきます」
「いらんいらん! 絵茶さんも帰ってください」
「じゃあ、質問なんだけど、どんなお尻が好み?」
「え、無視ですか? 帰ってくださいって言ってるんですけど?」
ってか、どんな質問だよ! やめろよ、そんな黒歴史を生むような質問は。
「それは、私も気になる」
「気にならんで良い!」
『気になります』
『我々も気になる』
『気になって仕方がない』
『気になって眠くなってきた』
「リスナーさん達も黙ろうね。眠くなってきた人は、そこまで気になってないね、それ」
いや、もう本当に帰って欲しい。
配信中なのにそんな質問答えたら、社会的に死ぬ。
「ねぇ~、気になるよね、サキちゃん?」
「うん! おっぱいだったら、巨乳とか美乳とか貧乳とか種類あるけど、お尻って種類あんの?」
「あれじゃない? 美尻とか小尻とか、ボンキュボンの海外の人にありそうな大きなお尻とか」
「ああ、そういうことか。じゃあ、滝君はティナさんみたいな大きなお尻が好みなのかな?」
「ああ、だからそのキャラが好きなのか!」
キャッキャ、キャッキャと騒ぐ2人。
いや、もう本当に配信を閉じたい。そして、この2人と縁を切った方がいいような気さえしてきた。
「でも、日本人ってどちらかというと、美尻や小尻だよね? 美尻と小尻には興味ないの?」
「あの、サキサキさん。黙ってて貰えますか? マジで」
「だって、気になったんだもん」
なんで気にする? 男のフェチ気になるもんなのか、女性は?
「んで、どうなんですか? 滝さんは日本人のお尻と海外の人のお尻、どっちがタイプなんですか?」
追及してこないで欲しいんだが、絵茶さんよ。
言わない選択肢はあるにはあるのだが、
「言ったら出てってくれますか? 俺の配信から」
言わない選択肢を取ったら、一生ここに残っていそうなので、言ったら出て行ってくれと遠回しに言う。
しかし、絵茶さんは、
「嫌です」
この一言で終わらす。
「じゃあ、言わない」
お願いだから出て行ってくれ。これ以上、俺に恥を欠かせないでくれ。
心の底からお願いしたい。
「じゃあ良いですよ。勝手に私とサキちゃんで想像するので」
居座る気満々の絵茶さん。もちろん、サキサキさんも、
「配信のタイトル変えてくるね。『テトリス配信からの雑談』に」
居座る気満々。
もう諦めた。この人たちを追い出すことはもう諦める。
居座る気満々の彼女達を放置して、配信を進めていく。
「お待たせしました。10分以上経ってしまったんですが、これから対戦をしていきたいと思います」
今日の配信の主役は、雑談とかではなく、格ゲー。
なので、格ゲーをしていくつもり。
「格ゲーのルールは配信の概要欄に記載しているので、それを読んでから来てください」
『やっとか』
『起動してきます』
『起動中』
その間に、リスナーさん達が入れるルームを作っておく。
もちろん、その間もサキサキさんと絵茶さんは、
「多分、滝君はどんなお尻も好きだと思うんだよ。無類のお尻好きみたいな感じで」
「確かに」
何が「確かに」じゃあ!
………まあ、そうなんだけど。言い方があるでしょ。無類のお尻好きとか、これじゃあ俺、変態だよ。
2人の会話に入る気はないが、聞き耳だけは立てとく。
続々と対戦ルームに入ってくるリスナーさん達。入ってきた順に、対戦をしていくが、
「えっちゃんは、美尻? それとも小尻?」
「そう言う、サキちゃんはどうなのよ」
そう言った話は2人だけの時にしてくれ! 全然、配信に集中出来ないでしょう。
なんなの? テンション高くない? 深夜テンションなの?
1人目のリスナーさんと対戦中なのだが、あまり集中出来ず、1人目から負けてしまう。
今度こそは集中。
2人目のリスナーさんと対戦する。
「『お2人の自信のある場所はどこですか?』だって、えっちゃんはどこ?」
「私は、足かな? 友達から「足スラっとしてて綺麗」とか言われる。サキちゃんは?」
「ううん、私は手、とかかな? 私、指が細長いんだよね。ネイルサロンとか行くと店員さんにメッチャ羨ましがまれるの」
そういえば、サキサキさんとは1度だけ会ったが、手が綺麗だった、あっ! 待って、そのコンボは痛い!
今度は何とか勝てた。
3人目のリスナーさんと対戦する前に、目に止まったコメントがあるので、それを伝える。
「『サキサキさんと絵茶さんに質問なんですが、男性のどういった点にドキッとしますか?』だってさ」
そういった質問をするのならば、サキサキさんの配信枠に行った方がいいのでは、と思うが、視聴者数がぐんっと減ってしまいそうなので、思うだけにしとく。
さて、3人目と対戦しますか。
「男性のドキッとした行動か仕草ってことだよね? 私は、ゲームばっかりしてたから、そういった経験ないな」
「「………」」
サキサキさんのコメントに、対戦中の俺も、話し相手の絵茶さんも、沈黙してしまう。
「そ、そうなんだ。わ、私もね、あんま経験ないからサキちゃんと一緒かな、うん」
これはサキサキさんに気を遣ったコメント。多分、あるだろうが、言わない選択肢を取ったな、絵茶さんは。
この話題中は、なぜか集中ができたため完勝することが出来た。
それからも2人の会話は続き、配信終盤まで雑談をしている。
配信中のコメント欄には、彼女達に対する質問が多く寄せられており、質問に対しては、俺の配信を見ている絵茶さんが対応する。
何度か、俺の配信だよね、とまるで他人の配信にお邪魔しているような感覚に陥ったが、『対戦ありがとうございました』というコメントを目にして、正気を保つことが出来た。
「あと5人くらいで終わりかな、時間的に」
そろそろ、配信時間が3時間経とうとしている。
何人のリスナーさんと対戦したのかあまり覚えていないが、結構な人数と対戦した気がする。
ラスト5人目の1人と対戦。
この人、なかなか手強いぞ。
格ゲーで大切なのは、キャラとキャラの間にできる空間の把握。ようは、間合いを読み切ることができるかが、重要になってくる。
間合いを見誤ると、先手を取られ、流れも取られる。そのため慎重に慎重を重ね、間合いの把握をする必要があるのだ。
今対戦している相手は、それを理解している。
自身のつかっているキャラの間合いとティナの間合い。この両方を理解しているため、俺がボロを出すまで焦らず、じっくりと待っている。
迂闊に動けないな。カウンター狙いで、ワンチャン………あるか?
こんな緊迫した対戦の中、
「そういえば、明日焼肉食べに行くけど、サキちゃんはどんな服装で行くの?」
「ラフな格好でいいかな、って思ってる。白色の服は着てかないけど」
「簡単に洗えるのがいいかな? ねぇ、どう思う滝さん?」
「明日、どこの焼肉屋さん行くの?」
「ちょ、話しかけないでもろて!」
このタイミングで、行けるか!
「あああああ!」
「っ!」
対戦相手の行動を予想して、勝負を仕掛けようとした途端に、サキサキさんの声。音割れしているほどの大声に気を取られ、隙を見せてしまう。
一瞬の隙だが、それを見逃さないのが今回の対戦相手。
動きの止まったティナに、怒涛のコンボラッシュからのワンテンポ置き、またコンボ。
逃げ出すためのカウンターを読んでいたかの投げ技でフィニッシュ。
「………くっ」
くっそそそそそそそ!
サキサキさんの声が無ければ、勝てたかもしれないのに。
悔しがる中、声を上げたサキサキさんは、
「テトリス、ミスった」
テトリスをミスって大声を上げたようだ。
「耳がキーンってなった。サキちゃん、うるさい!」
「ミスった、ミスった」
本当にこの人は。
人の配信に迷惑をかけるなんて………はあ、負けは負けか。
納得できない負けだが、事実は変わらない。
集中していれば、あんな大声に気を取られていなかったはずだ。
しゃあなし。
さて、
「絵茶さんは好きな服着てくればいいんじゃないの? サキサキさん、さてはラインのグループのチャット見てないでしょ。ちゃんと確認しといてね」
先程の問いに答えておく。
「え、送ってある?」
「ん、送ってあるでしょ?」
今、多分サキサキさんは確認しに行っている。俺も間違っていたら困るので、確認しに行く。
確認しに行くと、やはり記憶通り、集合場所と集合時間、食べに行く焼肉屋の情報を送っていた。
「「あっ、本当だ」」
2人の声が重なって聞こえる。どうやら、
「絵茶さんも確認しといてね」
絵茶さんも確認不足だったようだ。
「うぃ! しときました!」
ならば、よし。
焼肉の話が出てしまったせいか、コメント欄が早く流れ出した。
『焼肉⁉︎』
『ダメージ勝負の焼肉か!』
『サキサキさんと絵茶さんの服装の感想よろしく!』
『ずるいぞ、その2人と行くなんて!』
『滝、hwkjsjdjんwkdshdkdj!』
『感想をよろしく!』
『お持ち帰りするなよ』
「ちなみに、聡太さんとゼロスさんとワンスさんもいるからね?」
俺だけ責められるのは違うので、他の人を売っとく。
「服に感想、言わなくちゃいけなくなりましたね。明日、どんな感想が聞けるのかな、滝君に。ワクワク、ワクワク」
ワクワクすんなし、俺に何を求めているのやら。
「お持ち帰りって何? 弁当かなんかお持ち帰りすんの?」
答えづらい質問はしないで欲しい。
「リスナーさん方、発言には気をつけましょう」
あなた方も少し気をつけてください。
さて、あとラスト4人。
ちょっと………いや、かなり集中出来ない状況だが、集中して4戦4勝を目指そう。
「さあ、次! 対戦よろしく!」
気合を入れて挑んだ4戦だが、
「牛タン食べたい!」
「明日は楽しみだな! サキちゃん以外初めて会う人だし」
「牛タン、カルビ、ビービンバ!」
「何、その頭悪そうな歌。頭に残りそうだからやめてよ、サキちゃん」
「牛タン、ロース、ビービンバ!」
「やめて、本当におかしくなりそう! ああああああ!」
「「牛タン、ハラミ、ビービンバ!」」
結果はもちろん、4敗で終わった。
「本当、マジでうるさ」
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