39 / 89
生配信16 まさかの展開
しおりを挟む
「はい、どうも。今日もゲーム配信、配信者はお馴染みTakiチャンネルの」
いつも見ているリスナーさん達からしたら、耳にタコが出来るほど聞かされた挨拶をするはずが、
「はい、こんにちは! 絵茶でーす」
絵茶さんによって妨害される。
「………ちょっと待って? え?」
「………」
「絵茶さん? 先に挨拶してるんだけど?」
「滝さん? おーい、聞こえてる?」
「聞こえてるけど、えっ、なになに?」
会話が噛み合わない。っていうか、こっちの声が絵茶さんに届いてない。
えっ、何で?
原因が不明で少しパニくる。さっきまでは普通に声届いてたのに。
頭にはてなが浮かんでいると、コメント欄から指摘を受ける。
『ミュートにしてね?』
『ミュートにしてるよ』
『これ始まってんの?』
『声が無いんだけど!』
どうやら、配信にも声が乗っていないようだ。
いや、んな馬鹿な! マイクは刺さってるし、設定でもミュートになってないぞ!
声がどこにも届いてない原因を探る。
周囲の機械の状態。設定の確認。配信サイトの設定などなど。
探ってみたは良いが、どこも異常がない。昨日の配信と同じ設定で、今も配信をしている。
「はああ? もしかしてPCが壊れたとか?」
マジかよ。もしそうだったとしたら、今日の配信は全て出来ないし、明日の配信できない可能性があるじゃん!
「いや、マジで最悪なんだけど。マジで音入ってないのかよ」
俺は自分のスマホから、自身の配信に飛ぶ。
すると、
「「ああああああああああ、あ! えっ? 普通に音入ってんじゃん! ミュートじゃ無いじゃん!」」
俺のスマホから、配信で喋った言葉が聞こえる。
「「えっ? なになに? ミュートじゃ無いじゃん。普通に聞こえるじゃん」」
うるさ、スマホの声。
スマホの電源ボタンを押し、スマホの電源と配信を切る。
『ミュートじゃ無いよ』
『さっきから全部聞こえるよ』
『騙されたな!』
『おもろすぎ』
ああ、なるほどね。リスナーさん達に騙されたのね。
「いや、マジで焦った。PC壊したかと思った。ってか、悪質すぎない、さっきのコメント。『ミュート』『ミュート』言ってた奴らの名前抑えよう」
マジで焦った。冷や汗が出るほど焦った。
配信にはちゃんと声が入っていると。じゃあ、絵茶さんに届いてないのは?
「………っふ」
絵茶さんの笑い声が聞こえた気がしたんだが。
少し嫌な予感がし、もう1度スマホを持ち、絵茶さんの配信に飛ぶ。
「「あああ、もしもし、絵茶さん聞こえてますか? って、配信に声入ってるやないかい!」」
「あははははははは! やばい、腹筋痛い。笑いすぎた」
さては、俺がミュートになっているか確認している間、絵茶さんはミュートにして笑ってたな。
挨拶を被せたのもワザとで、俺の言葉に反応しなかったのもワザとっと。
「覚えてろよ。仕返しは絶対してやるからな」
爆笑している絵茶さんに呟く。
「怒んない怒んない。滝さん、許してくださいな」
「嫌でーす! この怒りはいつか返します!」
リスナーさん達だって俺の挨拶を聞きたかったはずだ。それを邪魔したのだ。リスナーさん達だって怒ってるはず。
『滝、分かっているな』
『滝よ、分かってるな』
『分かってるよ、滝なら』
ほら見ろ。リスナーさん達もこう言っている。絵茶さんめ、馬鹿な行動をしたな。
『滝、分かってるよな』
『滝、分かってるよね?』
『分かってんだろ?』
ああ、分かってるって。何度も何度もコメントしなくたって分かってるよ。
『『『許せよ』』』
だよね。そう言うと思ってた。
「少しは俺の味方してくれない? リスナーさん達さ」
『何で?』
『何で』
『何で?』
『なんでですか』
『なぜに?』
うん、この配信にコメントしている時点で、俺のリスナーさんなんだよね。絵茶さんの方に行ってないとなると、俺の視点で見たいからいるんでしょ。ならさ、俺の味方になってくれても良いやん。
そう言いたい!
だが、言ったら絶対『じゃあ、絵茶さんのところ行くわ』と、100人単位でごっそり消えていきそう。なので、心の中にしまっておく。
「よし、じゃあ、オープニングトークもした所だし『DbD』やっていきましょうか」
このまま行くと、俺が悪者扱いにされる危険性があるので、強制的にゲームを始めていく。
「滝さんが許してくれないんですけど? リスナーさん達も滝さんにお願いしてください!」
『たーき君? 許さないの?』
『滝、男だろ? な? なあ?』
『ちょっと裏で話でもしようや?』
『良いのかい? 本当に許さなくても?』
『道には気をつけな? 分かるだろ、言っていること』
「コメント欄にチンピラが湧いてます! 助けてお巡りさあああああああん」
「さて、滝さんは放って置いて、ゲームを始めますか」
放って置かないでください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『DbD』は前回配信でプレイしていたので、どう言うゲームか分かる人が多い。なので、ゲームの説明は省く。
開始早々、サバイバーとして、絵茶さんとマッチに潜る。マッチが開始するまでロビーで待つ。
「絵茶さんの配信のアーカイブ何個か見たけどさ、キラーばっかやってたよね? サバイバーはあまりやらないの?」
『DbD』の予習のために、絵茶さんの配信アーカイブを7本ぐらい見たけど、全てがキラーだった。
過去の配信全てを見たわけではないが、ここ数ヶ月は全てキラーだった。サバイバーとしての絵茶さんの経験はどれくらいのものか聞いてみる。
「そうですね。過去の、1年前の配信とかではサバイバーをちょくちょくやってた気がしたけど、ほとんどキラーですね」
ほう、やっていたんだ。でも、1年前となると、ブランクはありそうだな。
「でも、まあ、サバイバーは基本隠れて逃げての繰り返しなので、そこまで難しいくはないと思いますよ。個人的な意見ですが」
ほへー、難しくないと。俺はサバイバーの方が難しい気がするんだけどな。
「キラーの動きの方が難しいの?」
「そうですね、キラーはキラーの能力を把握してないとサバイバーを捕まえることができないので、キラーの方が難しいと思いますよ」
サバイバーにも、1人1人色々な能力があった気がするけど、それでもキラーの方が難しいんだ。
「慣れれば、サバイバーもキラーも同じ難易度だと思いますけどね」
「それはそうでしょ。どのゲームも慣れればある程度は動けるでしょ」
どのゲームも時間を掛ければ掛けるほど、上達はする。それはみんな分かっていることだ。
「それはそうなんですけどねぇ。それでもキラーは慣れるまで時間は掛かると思います。個人的な意見ですが」
そうなんだ。『DbD』上級者の絵茶さんがそう言うなら、そうなのかもしれない。
『DbDは、キラーの方が難しいんだ』
『サバイバーしかやってことがないからキラーは分からない』
『キラーはむずいよ。1人も捕まえられずに終わったことがあるから分かるわ』
『キャラを極めたキラー使いがいた場合は、マジでサバイバー側ムズイ』
絵茶さんの言葉に、同意や同調するリスナーさん達がいる。
コメント欄を少し読んでいると、ロビーの待機画面に野良の2人が入ってくる。
「そろそろ始まるのかな?」
「そうですね。キラーもいるし、準備完了ボタンを押せば始まりますよ」
俺は絵茶さんの言葉通り、準備完了を押す。
ロビーにいたサバイバー全員が準備完了を押したところで、配信1マッチ目が開始される。
「さて、始まりましたね」
「久々だな、サバイバー! 上手く逃げれるかなぁ?」
「あっ、ちなみに俺のリスナーさん達、絵茶さんのリスナーさん達も聞いて欲しいんだけど、この1マッチ目は絵茶さんのリハビリを兼ねてのプレイとなっています」
「そうだ、説明してなかった」
忘れちゃダメじゃないですか、絵茶さん。かく言う、俺も今思い出したんだけどね。
「そうなんですよ。私、サバイバー久しぶりで、上手く動けるかちょっと分からないので、1マッチ目はリハビリを兼ねて自由に行動するつもりです。滝さんに教えるのは、2マッチ目からとなります」
そうそう。今回は絵茶さんに教えを乞う配信ですので、絵茶さんには感覚を取り戻してもらわないと困るんですよね。
説明が終わると同時に、1マッチ目のマップに全サバイバーが降り立つ。
「ああ、このマップか」
1マッチ目のマップは、牧場みたいな場所。身長ぐらいある草が生い茂っている畑があり、オンボロの工場みたいな場所もある。
マップを覚えていない俺では、どこに発電機があるか分からない。ので、
「絵茶さんどこにいますか?」
ひとまず、頼りになりそうな絵茶さんを探す。
「滝さん、こっちこっち!」
絵茶さんから俺が見えていると言うことは、近くにいるんだな。
「発電機回しているので、音が聞こえる方に来てください!」
どうやら、絵茶さんの近くには発電機がありようで、それを修理しているらしい。
確かに、どこかでガシャガシャ鳴っている。こっちだろうか?
音になる方に歩いていくと、
「滝さん!」
絵茶さんが確かに発電機を修理していた。
「滝さん、早く回しちゃいましょう」
絵茶さんの周りには他のサバイバーがおらず、1人で修理をしていた。
「了解です!」
発電機は1人で修理することは出来るものの、複数人で修理をした方が早く終わらせることができる。なので、絵茶さんの横で修理を開始する。
「これ、修理中にゲージが出るじゃないですか?」
「うん、スキルチェックのことね」
あのゲージ、スキルチェックっていうのか。
「スキルチェック失敗しても許してくれますか?」
「は? いや、許さないけ」
バボーン!
あっやべっ、スキルチェックミスちゃった。
「………」
「………」
『ああ!』
『やっちゃった』
『どま』
『草』『草』『草』
いやぁ難しいね、スキルチェック。あの目印にタイミング良くボタン押すの無理じゃない?
「ちょっと何してんですか、滝さん⁉︎ なんでミスるんですか⁉︎」
「許せ、そして、さらば」
俺は絵茶さんをその場に残し、退散する。
ちなみに、このスキルチェックをミスると、キラーにどの位置の発電機が爆発したかがバレるぞ!
「逃げるなぁあ! って、キラーそこまで来てるじゃないですか!」
ええ、そうですとも。爆発させちゃった後、くるっと周囲を見回すと、後ろの方からキラーらしきシルエットが………だから逃げた。
君を囮にしてでも俺は逃げる!
キラーのシルエットからして、あれはナース服を着たキラーだった。
まあ、囮はあそこに置いてきたし、ある程度距離は稼げたので、俺のところに来ることはないでしょ。
「さあ、キラーよ。絵茶さんを吊ってしまいなさい」
ぶははははははは。頑張って逃げるんだな、絵茶さんよ。
俺は安全のために、さらに距離を稼ぐため走って逃げる。
「くそぉお、あの野郎! 私を囮にしやがって………って、あれ?」
ナース服のキラーが雄叫びを上げる。
どうやら、絵茶さんを見つけて喜んでいるみた、
グサッ。
い? えっ?
「いったぁあああああああ!」
えっ! なんで? なんで、俺が追いかけられてんの?
あんだけ距離稼いだはずなのに、なんで俺、ダメージ喰らってんの?
「ぶっ、あははははははは! 私を置いて逃げるからそうなるんですよ! ちなみに、そのキラー『ナース』って言って、瞬間移動みたいな能力があるんですよ」
へぇ、瞬間移動ね。だから、一瞬で距離詰められたのか。便利な能力。
って、感心してる場合じゃねぇ!
「なんで、なんで俺を追いかけてんの?」
絵茶さんがいたのに何で俺なの?
「いやぁ、発電機の側で蹲っていたら、バレませんでしたね。さあ、キラーよ。滝さんを吊ってしまいなさい!」
このキラー、絵茶さんを見逃しやがった!
「嫌だ! やめてください、痛いのだけは」
グサッ!
逃げる俺に2度目の攻撃をするキラー。これで俺は、ダウン状態になる。
しかも、ダウン状態になった場所が悪く、近くにフックがある。
「やめてよぉ。吊るさな」
「吊れ! 吊ってしまえ!」
『やってまえ!』
『絵茶さんを囮にした罰だ!』
『天罰だ!』
くそ、俺の配信には味方がいない!
キラーは容赦なく俺をフックに吊る。
「いったああああああああい!」
「痛くはないでしょ」
いや、痛い。伝わってくるんだ、あの痛さが。
『マジレスはやめてあげて』
『滝は可哀想な子なの』
『滝はちょっと阿、、、いや何でもない』
おい、言うならはっきり言いたまえ。阿保だろ、その続きは!
俺がコメント欄を読んでいると、先程修理していた発電機を絵茶さんが直す。
発電機の修理が終わると光が着くのだが、絵茶さんの他にもう2つほど発電機に光が灯る。
どうやら野良さん達が各々修理していたらしく、一気に3つ修理が終わる。
キェェエエエエエエエエエエ!
またナースが叫び出し、目の前から消えていく。
「ほう、これが瞬間移動か。このキラーなかなかやりおるわい」
「吊られた奴が、上から物を言ってるよ」
「マジレスはやめて。心にグサってくるから」
発電機が一気に3つ終わり、キラーは焦っているのか、こっそり近づいていた絵茶さんに気づかない。
「絵茶さんよ、助けてくれても良いのだよ? というか、今しかチャンスはない!」
助けを乞う俺。しかし、絵茶さんはというと、
「他のサバイバーさんはどうやら上級者のようだ」
そう呟き、近くにあった発電機を修理し出す。
ううん。どうやら気づいてないようだね、俺の存在。
「助けるなら今ですよー、絵茶さん!」
「ふんふんふん、ふふん、ふふふん」
「ちょっ、聞いてる、絵茶さん⁉︎ 鼻歌歌ってる場合じゃないよ! 俺死んじゃうよ!」
「………(チラッ)」
絵茶さんは修理途中の発電機から離れ、俺の方へ寄ってきてくれる。
流石に見殺しには出来ないようだ。
「ほれ、助けぇい!」
絵茶さんは吊られている俺を助けるべく、俺を持ち上げ、そして、
「ほい」
救助を諦める。
「えっ?」
絵茶さんは俺を持ち上げては、救助を止め、持ち上げては、救助を止める。
何度も何度も繰り返し繰り返し。
『遊ばれてんじゃんw』
『煽られてんじゃんw』
『助けてくれなくて草』
『死にそうで草』
『キラーがもう1人いるじゃんw』
笑ってる場合じゃないんですけどね、リスナーさん達。
どんな意図があって………いや、どんな意図もクソもないな、これは。絵茶さん、絶対楽しんでやってるよ。
証拠に、ほら。
「てってててて、てってててて、ててて、ててて」
暢気に鼻歌を歌いながら、俺を虐めてるもん。
「お願い、助けて! ってか、やめい! フックが刺さっては抜け、刺さっては抜けの繰り返しだから、めっちゃ痛いでしょ!」
これ実際にやられてたら、失神物だよ、激痛付きの。
「何、なんか恨みでもあるわけ? 思い当たる節が」
1、発電機のミス。
2、キラーの報告もせず、1人でその場から離脱。
3、ボイスはキラーに届いていないが、絵茶さんがいる場所を教えようとしていた。
「あるわ。思い当たる節が」
「ですよね、ありますよね? しかも、助けてもらう側なのに、あの上から目線の言い方。………ここで1回死んでみます?」
「嫌だああああああああああああ! じにだぐないいいいいいいいいい!」
「っふ! ゲホ、ゲホ………飲み物飲んでる時に、パッションで押してくるのやめてください!」
やめてくださいって言われてもね? 飲み物飲んでん知らんし、無理じゃね?
絵茶さんは「もういいです!」っと言い放ち、俺を救助せず、近くの発電機を修理しに行ってしまった。
「………飲み物吹いて、怒っちゃったのかな?」
『多分』
『吹いちゃったんですね』
『ああ、マイクが』
『飲み物吹いちゃった』
『俺に吹いて欲しかった』
『俺に吹いて欲しかった』
変態がコメント欄に湧いているが………って2人も湧いてんじゃん! 気色悪いわぁ。
フックに吊るされ、プランプラン状態の俺。そんな俺は、発電機を修理している絵茶さん眺める。
「あと少しで………終わり!」
発電機が修理し終わり、終わった後すぐに、俺をフックから降ろしてくれる。
「あざます! この恩は一生返さないでおきます!」
「キラーさん! こいつ、今吊れば即死しますよ!」
「ちょ、やめてもろて。キラーが来たらどうす」
キェェエエエエエ!
「「きたあああああああああ」」
フックに吊るされたサバイバーを救助すると、キラー側に情報が行き、すぐ分かるようになっている。
「私が、囮になるんで逃げてください」
逃げるって言ったってどこに逃げれば。
そう思っていると、
ポォオオオオオ。
音が鳴り、気付けば修理する発電機が0個となっていた。
「じゃあ、あとはゲートを見つけて逃げるだけだ」
しかも、この『DbD』は優しいことに、指定された数の発電機を修理すると、一瞬だがゲートがどこにあるか強調表示してくれる。
その強調表示からすると、俺達のいるところからちょっと先にゲートがあった。
「ここは私がヘイトを稼ぐんで、先にゲートを開けて来てください」
「了解!」
俺は絵茶さんの指示に従い、絵茶さんをその場に残し、走ってゲートまで向かう。
ゲートまで向かうと、野良さんが既にゲートを開けようとしていた。
「ナイス! やるやん、この野良さん」
『ナイス』
『ナイス』
『ナイス』
『ナイス』
リスナーさん達も、君のこと褒めてるぞ、野良さん。
ゲートはすぐさま開き、開いたことを絵茶さんに知らせる。
「絵茶さん、もうゲート開いたから逃げて来ていいですよ!」
「了っ解っです! どうだ、このボケ! ザマぁあみろ、板に当たって痛いねぇ!」
ここでやっと絵茶さんらしい、ブラック絵茶さんが出てくる。
「よし、じゃあ逃げますよ!」
絵茶さんの指示に従い、他のサバイバーを待たずにゲートを潜り、見事にクリア。
「いやあ、野良さんが強くて勝てたって感じですね。滝さんは終始足引っ張ってましたけど」
「まあ、それが俺の役目って感じですし? 2マッチ目も多分やらかすでしょう」
『宣言すんなw』
『がんばれ』
『ないふぁい』
『GG』
『GG』
しょうがないやん、こちとら初心者だもん。足引っ張るのが初心者の仕事だもん!
それから2マッチ目、3マッチ目と宣言通り、味方の足を引っ張ってしまい、どうすれば足を引っ張らずにプレイ出来るか、絵茶さんに教えてもらう。
4マッチ目、5マッチ目以降は、教えを生かしながらプレイするも、味方に貢献出来ずに終わって行ってしまった。
そして、絵茶さんと『DbD』すること3時間。
「いやぁあ、なかなか上達はしませんでしたな。悔しい!」
「そうでもないですよ? いい感じでしたよ?」
絵茶さんに励ましの言葉をもらうも、至らない点ばかりが見えてしまっていて、本当に悔しい。
悔しいが、そろそろ配信を閉じる時間になったので、閉じていこうと思う。
「じゃあ、3時間経ちましたのでそろそろ配信を閉じよう」
と思います。
これが続くはずだった。しかし、
「ええ、30分休憩を挟み、『DbD』の練習の続きをして行こうと思ってます」
絵茶さんに再度邪魔され、聞いたことのない予定をぶっ込まれる。
『マジで!』
『練習続けるの?』
『16時以降22時前に配信するの初めてじゃね?』
『よしゃ、見よう』
見る気満々なリスナーさん達。
えっ? 俺の知らない間に予定が入っているんだが?
えっ? 絵茶さん、そんな話したっけ?
「えっ、絵茶さん?」
「ふふふふっ、練習は長時間続けてこそ練習。逃しませんよ」
ははぁ、なるほど。この娘、ワザと俺に教えなかったな。
「た・き・さ・ん」
ふっ、いいだろう! やってやろうじゃないか!
「30分後、また会おう!」
俺はこの言葉をリスナーさん達に残して、配信を閉じた。
いつも見ているリスナーさん達からしたら、耳にタコが出来るほど聞かされた挨拶をするはずが、
「はい、こんにちは! 絵茶でーす」
絵茶さんによって妨害される。
「………ちょっと待って? え?」
「………」
「絵茶さん? 先に挨拶してるんだけど?」
「滝さん? おーい、聞こえてる?」
「聞こえてるけど、えっ、なになに?」
会話が噛み合わない。っていうか、こっちの声が絵茶さんに届いてない。
えっ、何で?
原因が不明で少しパニくる。さっきまでは普通に声届いてたのに。
頭にはてなが浮かんでいると、コメント欄から指摘を受ける。
『ミュートにしてね?』
『ミュートにしてるよ』
『これ始まってんの?』
『声が無いんだけど!』
どうやら、配信にも声が乗っていないようだ。
いや、んな馬鹿な! マイクは刺さってるし、設定でもミュートになってないぞ!
声がどこにも届いてない原因を探る。
周囲の機械の状態。設定の確認。配信サイトの設定などなど。
探ってみたは良いが、どこも異常がない。昨日の配信と同じ設定で、今も配信をしている。
「はああ? もしかしてPCが壊れたとか?」
マジかよ。もしそうだったとしたら、今日の配信は全て出来ないし、明日の配信できない可能性があるじゃん!
「いや、マジで最悪なんだけど。マジで音入ってないのかよ」
俺は自分のスマホから、自身の配信に飛ぶ。
すると、
「「ああああああああああ、あ! えっ? 普通に音入ってんじゃん! ミュートじゃ無いじゃん!」」
俺のスマホから、配信で喋った言葉が聞こえる。
「「えっ? なになに? ミュートじゃ無いじゃん。普通に聞こえるじゃん」」
うるさ、スマホの声。
スマホの電源ボタンを押し、スマホの電源と配信を切る。
『ミュートじゃ無いよ』
『さっきから全部聞こえるよ』
『騙されたな!』
『おもろすぎ』
ああ、なるほどね。リスナーさん達に騙されたのね。
「いや、マジで焦った。PC壊したかと思った。ってか、悪質すぎない、さっきのコメント。『ミュート』『ミュート』言ってた奴らの名前抑えよう」
マジで焦った。冷や汗が出るほど焦った。
配信にはちゃんと声が入っていると。じゃあ、絵茶さんに届いてないのは?
「………っふ」
絵茶さんの笑い声が聞こえた気がしたんだが。
少し嫌な予感がし、もう1度スマホを持ち、絵茶さんの配信に飛ぶ。
「「あああ、もしもし、絵茶さん聞こえてますか? って、配信に声入ってるやないかい!」」
「あははははははは! やばい、腹筋痛い。笑いすぎた」
さては、俺がミュートになっているか確認している間、絵茶さんはミュートにして笑ってたな。
挨拶を被せたのもワザとで、俺の言葉に反応しなかったのもワザとっと。
「覚えてろよ。仕返しは絶対してやるからな」
爆笑している絵茶さんに呟く。
「怒んない怒んない。滝さん、許してくださいな」
「嫌でーす! この怒りはいつか返します!」
リスナーさん達だって俺の挨拶を聞きたかったはずだ。それを邪魔したのだ。リスナーさん達だって怒ってるはず。
『滝、分かっているな』
『滝よ、分かってるな』
『分かってるよ、滝なら』
ほら見ろ。リスナーさん達もこう言っている。絵茶さんめ、馬鹿な行動をしたな。
『滝、分かってるよな』
『滝、分かってるよね?』
『分かってんだろ?』
ああ、分かってるって。何度も何度もコメントしなくたって分かってるよ。
『『『許せよ』』』
だよね。そう言うと思ってた。
「少しは俺の味方してくれない? リスナーさん達さ」
『何で?』
『何で』
『何で?』
『なんでですか』
『なぜに?』
うん、この配信にコメントしている時点で、俺のリスナーさんなんだよね。絵茶さんの方に行ってないとなると、俺の視点で見たいからいるんでしょ。ならさ、俺の味方になってくれても良いやん。
そう言いたい!
だが、言ったら絶対『じゃあ、絵茶さんのところ行くわ』と、100人単位でごっそり消えていきそう。なので、心の中にしまっておく。
「よし、じゃあ、オープニングトークもした所だし『DbD』やっていきましょうか」
このまま行くと、俺が悪者扱いにされる危険性があるので、強制的にゲームを始めていく。
「滝さんが許してくれないんですけど? リスナーさん達も滝さんにお願いしてください!」
『たーき君? 許さないの?』
『滝、男だろ? な? なあ?』
『ちょっと裏で話でもしようや?』
『良いのかい? 本当に許さなくても?』
『道には気をつけな? 分かるだろ、言っていること』
「コメント欄にチンピラが湧いてます! 助けてお巡りさあああああああん」
「さて、滝さんは放って置いて、ゲームを始めますか」
放って置かないでください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『DbD』は前回配信でプレイしていたので、どう言うゲームか分かる人が多い。なので、ゲームの説明は省く。
開始早々、サバイバーとして、絵茶さんとマッチに潜る。マッチが開始するまでロビーで待つ。
「絵茶さんの配信のアーカイブ何個か見たけどさ、キラーばっかやってたよね? サバイバーはあまりやらないの?」
『DbD』の予習のために、絵茶さんの配信アーカイブを7本ぐらい見たけど、全てがキラーだった。
過去の配信全てを見たわけではないが、ここ数ヶ月は全てキラーだった。サバイバーとしての絵茶さんの経験はどれくらいのものか聞いてみる。
「そうですね。過去の、1年前の配信とかではサバイバーをちょくちょくやってた気がしたけど、ほとんどキラーですね」
ほう、やっていたんだ。でも、1年前となると、ブランクはありそうだな。
「でも、まあ、サバイバーは基本隠れて逃げての繰り返しなので、そこまで難しいくはないと思いますよ。個人的な意見ですが」
ほへー、難しくないと。俺はサバイバーの方が難しい気がするんだけどな。
「キラーの動きの方が難しいの?」
「そうですね、キラーはキラーの能力を把握してないとサバイバーを捕まえることができないので、キラーの方が難しいと思いますよ」
サバイバーにも、1人1人色々な能力があった気がするけど、それでもキラーの方が難しいんだ。
「慣れれば、サバイバーもキラーも同じ難易度だと思いますけどね」
「それはそうでしょ。どのゲームも慣れればある程度は動けるでしょ」
どのゲームも時間を掛ければ掛けるほど、上達はする。それはみんな分かっていることだ。
「それはそうなんですけどねぇ。それでもキラーは慣れるまで時間は掛かると思います。個人的な意見ですが」
そうなんだ。『DbD』上級者の絵茶さんがそう言うなら、そうなのかもしれない。
『DbDは、キラーの方が難しいんだ』
『サバイバーしかやってことがないからキラーは分からない』
『キラーはむずいよ。1人も捕まえられずに終わったことがあるから分かるわ』
『キャラを極めたキラー使いがいた場合は、マジでサバイバー側ムズイ』
絵茶さんの言葉に、同意や同調するリスナーさん達がいる。
コメント欄を少し読んでいると、ロビーの待機画面に野良の2人が入ってくる。
「そろそろ始まるのかな?」
「そうですね。キラーもいるし、準備完了ボタンを押せば始まりますよ」
俺は絵茶さんの言葉通り、準備完了を押す。
ロビーにいたサバイバー全員が準備完了を押したところで、配信1マッチ目が開始される。
「さて、始まりましたね」
「久々だな、サバイバー! 上手く逃げれるかなぁ?」
「あっ、ちなみに俺のリスナーさん達、絵茶さんのリスナーさん達も聞いて欲しいんだけど、この1マッチ目は絵茶さんのリハビリを兼ねてのプレイとなっています」
「そうだ、説明してなかった」
忘れちゃダメじゃないですか、絵茶さん。かく言う、俺も今思い出したんだけどね。
「そうなんですよ。私、サバイバー久しぶりで、上手く動けるかちょっと分からないので、1マッチ目はリハビリを兼ねて自由に行動するつもりです。滝さんに教えるのは、2マッチ目からとなります」
そうそう。今回は絵茶さんに教えを乞う配信ですので、絵茶さんには感覚を取り戻してもらわないと困るんですよね。
説明が終わると同時に、1マッチ目のマップに全サバイバーが降り立つ。
「ああ、このマップか」
1マッチ目のマップは、牧場みたいな場所。身長ぐらいある草が生い茂っている畑があり、オンボロの工場みたいな場所もある。
マップを覚えていない俺では、どこに発電機があるか分からない。ので、
「絵茶さんどこにいますか?」
ひとまず、頼りになりそうな絵茶さんを探す。
「滝さん、こっちこっち!」
絵茶さんから俺が見えていると言うことは、近くにいるんだな。
「発電機回しているので、音が聞こえる方に来てください!」
どうやら、絵茶さんの近くには発電機がありようで、それを修理しているらしい。
確かに、どこかでガシャガシャ鳴っている。こっちだろうか?
音になる方に歩いていくと、
「滝さん!」
絵茶さんが確かに発電機を修理していた。
「滝さん、早く回しちゃいましょう」
絵茶さんの周りには他のサバイバーがおらず、1人で修理をしていた。
「了解です!」
発電機は1人で修理することは出来るものの、複数人で修理をした方が早く終わらせることができる。なので、絵茶さんの横で修理を開始する。
「これ、修理中にゲージが出るじゃないですか?」
「うん、スキルチェックのことね」
あのゲージ、スキルチェックっていうのか。
「スキルチェック失敗しても許してくれますか?」
「は? いや、許さないけ」
バボーン!
あっやべっ、スキルチェックミスちゃった。
「………」
「………」
『ああ!』
『やっちゃった』
『どま』
『草』『草』『草』
いやぁ難しいね、スキルチェック。あの目印にタイミング良くボタン押すの無理じゃない?
「ちょっと何してんですか、滝さん⁉︎ なんでミスるんですか⁉︎」
「許せ、そして、さらば」
俺は絵茶さんをその場に残し、退散する。
ちなみに、このスキルチェックをミスると、キラーにどの位置の発電機が爆発したかがバレるぞ!
「逃げるなぁあ! って、キラーそこまで来てるじゃないですか!」
ええ、そうですとも。爆発させちゃった後、くるっと周囲を見回すと、後ろの方からキラーらしきシルエットが………だから逃げた。
君を囮にしてでも俺は逃げる!
キラーのシルエットからして、あれはナース服を着たキラーだった。
まあ、囮はあそこに置いてきたし、ある程度距離は稼げたので、俺のところに来ることはないでしょ。
「さあ、キラーよ。絵茶さんを吊ってしまいなさい」
ぶははははははは。頑張って逃げるんだな、絵茶さんよ。
俺は安全のために、さらに距離を稼ぐため走って逃げる。
「くそぉお、あの野郎! 私を囮にしやがって………って、あれ?」
ナース服のキラーが雄叫びを上げる。
どうやら、絵茶さんを見つけて喜んでいるみた、
グサッ。
い? えっ?
「いったぁあああああああ!」
えっ! なんで? なんで、俺が追いかけられてんの?
あんだけ距離稼いだはずなのに、なんで俺、ダメージ喰らってんの?
「ぶっ、あははははははは! 私を置いて逃げるからそうなるんですよ! ちなみに、そのキラー『ナース』って言って、瞬間移動みたいな能力があるんですよ」
へぇ、瞬間移動ね。だから、一瞬で距離詰められたのか。便利な能力。
って、感心してる場合じゃねぇ!
「なんで、なんで俺を追いかけてんの?」
絵茶さんがいたのに何で俺なの?
「いやぁ、発電機の側で蹲っていたら、バレませんでしたね。さあ、キラーよ。滝さんを吊ってしまいなさい!」
このキラー、絵茶さんを見逃しやがった!
「嫌だ! やめてください、痛いのだけは」
グサッ!
逃げる俺に2度目の攻撃をするキラー。これで俺は、ダウン状態になる。
しかも、ダウン状態になった場所が悪く、近くにフックがある。
「やめてよぉ。吊るさな」
「吊れ! 吊ってしまえ!」
『やってまえ!』
『絵茶さんを囮にした罰だ!』
『天罰だ!』
くそ、俺の配信には味方がいない!
キラーは容赦なく俺をフックに吊る。
「いったああああああああい!」
「痛くはないでしょ」
いや、痛い。伝わってくるんだ、あの痛さが。
『マジレスはやめてあげて』
『滝は可哀想な子なの』
『滝はちょっと阿、、、いや何でもない』
おい、言うならはっきり言いたまえ。阿保だろ、その続きは!
俺がコメント欄を読んでいると、先程修理していた発電機を絵茶さんが直す。
発電機の修理が終わると光が着くのだが、絵茶さんの他にもう2つほど発電機に光が灯る。
どうやら野良さん達が各々修理していたらしく、一気に3つ修理が終わる。
キェェエエエエエエエエエエ!
またナースが叫び出し、目の前から消えていく。
「ほう、これが瞬間移動か。このキラーなかなかやりおるわい」
「吊られた奴が、上から物を言ってるよ」
「マジレスはやめて。心にグサってくるから」
発電機が一気に3つ終わり、キラーは焦っているのか、こっそり近づいていた絵茶さんに気づかない。
「絵茶さんよ、助けてくれても良いのだよ? というか、今しかチャンスはない!」
助けを乞う俺。しかし、絵茶さんはというと、
「他のサバイバーさんはどうやら上級者のようだ」
そう呟き、近くにあった発電機を修理し出す。
ううん。どうやら気づいてないようだね、俺の存在。
「助けるなら今ですよー、絵茶さん!」
「ふんふんふん、ふふん、ふふふん」
「ちょっ、聞いてる、絵茶さん⁉︎ 鼻歌歌ってる場合じゃないよ! 俺死んじゃうよ!」
「………(チラッ)」
絵茶さんは修理途中の発電機から離れ、俺の方へ寄ってきてくれる。
流石に見殺しには出来ないようだ。
「ほれ、助けぇい!」
絵茶さんは吊られている俺を助けるべく、俺を持ち上げ、そして、
「ほい」
救助を諦める。
「えっ?」
絵茶さんは俺を持ち上げては、救助を止め、持ち上げては、救助を止める。
何度も何度も繰り返し繰り返し。
『遊ばれてんじゃんw』
『煽られてんじゃんw』
『助けてくれなくて草』
『死にそうで草』
『キラーがもう1人いるじゃんw』
笑ってる場合じゃないんですけどね、リスナーさん達。
どんな意図があって………いや、どんな意図もクソもないな、これは。絵茶さん、絶対楽しんでやってるよ。
証拠に、ほら。
「てってててて、てってててて、ててて、ててて」
暢気に鼻歌を歌いながら、俺を虐めてるもん。
「お願い、助けて! ってか、やめい! フックが刺さっては抜け、刺さっては抜けの繰り返しだから、めっちゃ痛いでしょ!」
これ実際にやられてたら、失神物だよ、激痛付きの。
「何、なんか恨みでもあるわけ? 思い当たる節が」
1、発電機のミス。
2、キラーの報告もせず、1人でその場から離脱。
3、ボイスはキラーに届いていないが、絵茶さんがいる場所を教えようとしていた。
「あるわ。思い当たる節が」
「ですよね、ありますよね? しかも、助けてもらう側なのに、あの上から目線の言い方。………ここで1回死んでみます?」
「嫌だああああああああああああ! じにだぐないいいいいいいいいい!」
「っふ! ゲホ、ゲホ………飲み物飲んでる時に、パッションで押してくるのやめてください!」
やめてくださいって言われてもね? 飲み物飲んでん知らんし、無理じゃね?
絵茶さんは「もういいです!」っと言い放ち、俺を救助せず、近くの発電機を修理しに行ってしまった。
「………飲み物吹いて、怒っちゃったのかな?」
『多分』
『吹いちゃったんですね』
『ああ、マイクが』
『飲み物吹いちゃった』
『俺に吹いて欲しかった』
『俺に吹いて欲しかった』
変態がコメント欄に湧いているが………って2人も湧いてんじゃん! 気色悪いわぁ。
フックに吊るされ、プランプラン状態の俺。そんな俺は、発電機を修理している絵茶さん眺める。
「あと少しで………終わり!」
発電機が修理し終わり、終わった後すぐに、俺をフックから降ろしてくれる。
「あざます! この恩は一生返さないでおきます!」
「キラーさん! こいつ、今吊れば即死しますよ!」
「ちょ、やめてもろて。キラーが来たらどうす」
キェェエエエエエ!
「「きたあああああああああ」」
フックに吊るされたサバイバーを救助すると、キラー側に情報が行き、すぐ分かるようになっている。
「私が、囮になるんで逃げてください」
逃げるって言ったってどこに逃げれば。
そう思っていると、
ポォオオオオオ。
音が鳴り、気付けば修理する発電機が0個となっていた。
「じゃあ、あとはゲートを見つけて逃げるだけだ」
しかも、この『DbD』は優しいことに、指定された数の発電機を修理すると、一瞬だがゲートがどこにあるか強調表示してくれる。
その強調表示からすると、俺達のいるところからちょっと先にゲートがあった。
「ここは私がヘイトを稼ぐんで、先にゲートを開けて来てください」
「了解!」
俺は絵茶さんの指示に従い、絵茶さんをその場に残し、走ってゲートまで向かう。
ゲートまで向かうと、野良さんが既にゲートを開けようとしていた。
「ナイス! やるやん、この野良さん」
『ナイス』
『ナイス』
『ナイス』
『ナイス』
リスナーさん達も、君のこと褒めてるぞ、野良さん。
ゲートはすぐさま開き、開いたことを絵茶さんに知らせる。
「絵茶さん、もうゲート開いたから逃げて来ていいですよ!」
「了っ解っです! どうだ、このボケ! ザマぁあみろ、板に当たって痛いねぇ!」
ここでやっと絵茶さんらしい、ブラック絵茶さんが出てくる。
「よし、じゃあ逃げますよ!」
絵茶さんの指示に従い、他のサバイバーを待たずにゲートを潜り、見事にクリア。
「いやあ、野良さんが強くて勝てたって感じですね。滝さんは終始足引っ張ってましたけど」
「まあ、それが俺の役目って感じですし? 2マッチ目も多分やらかすでしょう」
『宣言すんなw』
『がんばれ』
『ないふぁい』
『GG』
『GG』
しょうがないやん、こちとら初心者だもん。足引っ張るのが初心者の仕事だもん!
それから2マッチ目、3マッチ目と宣言通り、味方の足を引っ張ってしまい、どうすれば足を引っ張らずにプレイ出来るか、絵茶さんに教えてもらう。
4マッチ目、5マッチ目以降は、教えを生かしながらプレイするも、味方に貢献出来ずに終わって行ってしまった。
そして、絵茶さんと『DbD』すること3時間。
「いやぁあ、なかなか上達はしませんでしたな。悔しい!」
「そうでもないですよ? いい感じでしたよ?」
絵茶さんに励ましの言葉をもらうも、至らない点ばかりが見えてしまっていて、本当に悔しい。
悔しいが、そろそろ配信を閉じる時間になったので、閉じていこうと思う。
「じゃあ、3時間経ちましたのでそろそろ配信を閉じよう」
と思います。
これが続くはずだった。しかし、
「ええ、30分休憩を挟み、『DbD』の練習の続きをして行こうと思ってます」
絵茶さんに再度邪魔され、聞いたことのない予定をぶっ込まれる。
『マジで!』
『練習続けるの?』
『16時以降22時前に配信するの初めてじゃね?』
『よしゃ、見よう』
見る気満々なリスナーさん達。
えっ? 俺の知らない間に予定が入っているんだが?
えっ? 絵茶さん、そんな話したっけ?
「えっ、絵茶さん?」
「ふふふふっ、練習は長時間続けてこそ練習。逃しませんよ」
ははぁ、なるほど。この娘、ワザと俺に教えなかったな。
「た・き・さ・ん」
ふっ、いいだろう! やってやろうじゃないか!
「30分後、また会おう!」
俺はこの言葉をリスナーさん達に残して、配信を閉じた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼馴染に毎日召喚されてます
涼月
青春
高校二年生の森川真礼(もりかわまひろ)は、幼馴染の南雲日奈子(なぐもひなこ)にじゃんけんで勝った事が無い。
それをいい事に、日奈子は理不尽(真礼的には)な提案をしてきた。
じゃんけんで負けたら、召喚獣のように従順に、勝った方の願いを聞くこと。
真礼の受難!? の日々が始まった。
全12話
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イルカノスミカ
よん
青春
2014年、神奈川県立小田原東高二年の瀬戸入果は競泳バタフライの選手。
弱小水泳部ながらインターハイ出場を決めるも関東大会で傷めた水泳肩により現在はリハビリ中。
敬老の日の晩に、両親からダブル不倫の末に離婚という衝撃の宣告を受けた入果は行き場を失ってしまう。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
転校してきた美少女に僕はヒトメボレ、でも彼女って実はサキュバスらしい!?
釈 余白(しやく)
青春
吉田一(よしだ かず)はこの春二年生になった、自称硬派な高校球児だ。鋭い変化球と抜群の制球で入部後すぐにエースとなり、今年も多くの期待を背負って練習に精を出す野球一筋の少年である。
かたや蓮根咲(はすね さき)は新学期に転校してきたばかりの、謎めいてクールな美少女だ。大きな瞳、黒く艶やかな髪、凛とした立ち姿は、高潔さを感じるも少々近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
そんな純情スポ根系野球部男子が、魅惑的小悪魔系女子へ一目惚れをしたことから、ちょっとエッチで少し不思議な青春恋愛ストーリーが始まったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる