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生配信12 罰ゲームand提案

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「はい、どうも今日もゲーム配信! 配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です。と言っても、今は配信してませんので悪しからず」

 今、聡太さんとサキサキさんのコラボ配信に参加させてもらっている。

「今日はお招きありがとうございます、聡太さん」

 俺がこのコラボ配信に参加出来ているのは、聡太さんが招待してくれたからだ。

 そんな聡太さんにお礼を言うと、

「裏切ったにゃああああああ!」

 サキサキさんが猫語尾で叫ぶ。

「「うるさ」」

 俺と聡太さんは、音割れするほどの叫びに文句を言う。

 いやあ、流石にね、絵茶さんは朝方罰ゲームをしていたのに、サキサキさんだけしないのはズルじゃないですか。

 だから、していただきます。

 そんなことを思っていると、聡太さんがサキサキさんに言う。

「別に、ふふふ、裏切ってないよ。リスナーさん達が望むようなことをするのが、ふふ、配信者の使命でしょ。俺はその使命を全うしてるだけだから」

 笑いながら。

「このクソ野郎がぁあ!」

 癇に障ったのか、サキサキさんが棒立ちしている聡太さんを殴り倒す。

「ちょ、ちょっと! やめ、止めろ、死ぬ」

 今遊んでるゲーム——グラセフでサキサキさんが聡太さんを殺す。

「あああああああああ!」

「ふぅ、ふぅ」

 死んだか、聡太さん。

 まあこれで、怒りを収めていただければ、

「お前も聡太さんのところに行ってしまえにゃあああああ!」

 バン、バン、バン。

 このゲームは銃を撃つことや、爆弾を投げることができ、ゲーム内にいる人を殺すことができる。

 そして、今、俺も殺された。

「殺意高いですね、今日」

 リスポーンされた俺は、先程殺された場所に向かって走る。サキサキさんが動き回っていなかったおかげで、すぐに合流できた。

「今日の殺意は高いですね。で、2人ほど殺しましたけど、怒りの方は収まりましたか?」

 サキサキさんのキャラの前に立ち、訊く。

「そんっな」

 ボコッ。

「わけ」

 ボコッ。

「ないっでしょ!」

 ボコッ。

 どうやら怒りは収まっておらず、3回も殴られてしまった。あと1回殴られたりしたら、死んでしまうレベルのHPをしている。

 だが、俺は言う。殴られる覚悟を持ち、ちゃんと言う。

「ないでしょ、じゃなくて、『ないにゃぁあ!』じゃあないの?」

「………」

「………」

「ふんっ!」

 ボコッ。

 本日2度目の死。

 予想だとあと10回くらいは俺と聡太さんは死ぬんじゃないかな?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 再度リスポーンされた俺は、サキサキさんのいる場所に走って戻ると、1度死んでリスポーンした聡太さんも帰ってきていた。

「よし、滝も戻ってきたし、3人でミッションでもやるか」

 このゲームには、複数人で協力して行うミッションが存在する。ミッションをクリアするごとに報酬が貰え、ミッションにかける時間が少なければ少ないほど報酬の金額が上がっていくのだ。

「いいですよ。何やります? サキサキさんは何がやりたいですか?」

「…………」

 んんん?聞こえないのかな?

「サキサキさん、何かやりたいのあるなら言ってよ。滝も俺もやりたいのやらせてあげるからさ。なあ、滝?」

「はい、聡太さんの言う通り、何でもやらせてあげますよ。何かやりたいのありますか?」

「…………」

「…………」

「…………」

 3人の沈黙が続く。

 ってか、サキサキさん絶対喋らない気だろう! 猫語尾が嫌だからって、そこまでしなくてもいいのに。

 ………まあ、嫌でも絶対喋らせるんですけどね

「ええ、何も喋らないで配信する気ですか?」

「何か喋らなきゃいけないと思うぜ?」

「………」

 そう言って、サキサキさんを弄っていると、粘着爆弾を取り出す。

「待って、待って!」

「1回落ち着こう。なあ、なあ?」

 参加してからまだ5分も経つてないのに、3回死ぬのはちょっと嫌だ。

 なので、喋らすのではなく、喋らずにはいられない状況を作ることにする。

「分かりました。そのまま喋らなくてもいいです」

「ッ! おい、喋ってくれなきゃ面白味がなくな」

「まあ、まあ、聡太さん」

 分かっている、分かってるよ。最後まで言うな。俺に策がある。

 だんまり作戦が成功したと勘違いしているサキサキさんは嬉しそうな声色で「フン、フン」と喋りだす。

 ………嬉しがるのもここまでだ!

「でも意思疎通は大切です。だから、俺たちの問いかけにサキサキさんが沈黙した場合は、肯定の意味を持つ沈黙にしましょう」

「フン、フン………は?」

「ああ、それでいいか」

「ううん、ううん!」

 なるほど、「うん」と「ううん」は言えるんだ。

 これじゃあ、だめかな?

 他の策を考えていると、聡太さんも気がついたのか、

「なんなら喋らなきゃ、全肯定でいいんじゃないか?」

 ナイスアシストをしてくれる。

「そこまでしますか⁉︎」

「「か?」」

「………」

 また沈黙してしまう。

 ふと、サキサキさんのコメント欄が気になり、サキサキさんの配信を付け、コメント欄を眺める。

『いいぞ、やれ2人とも』
『神回になる可能性がある』
『可哀想に………でも、仕方ない』
『あとで、高評価押しに行きます。聡太さんと滝さんのに』

 高評価もらえるなら、もっと追い込むか?

 欲望のためにサキサキさんを生贄にすることを決める。

 さあ、やるか!

 なんて思っていると、

「………やれ」

 んんん?

 今、サキサキさん何か言ってなかった?

「ふぅ………やればいいんでしょ、にゃぁ」

 取って付けたような猫語尾。しかも、段々と小声になる「にゃあ」。

 恥じらいかな? 恥じらいですかな?

「もう、いいです………にゃぁ。諦めます………にゃぁ」

 いや、諦めますって言うか。

「これ罰ゲームなんでやってもらわんと。絵茶さんだけやらせるのは可哀想と言うか」

「えっちゃんはいいの! えっちゃんは恥じらいがないから、そう言うの好き好んでやる人にゃぁ………の」

 確かに。あの配信見てたら、そう思うかも。

「ああああああああああああ、めっちゃ恥ずかしい! アーカイブに残すの止めていい?」

 別に構わないのだが、

「俺はアーカイブ残すぞ」

 ………ですよね、聡太さんは残しますよね。

 そしたら、サキサキさんがアーカイブ残す残さない関係なく、サキサキさん醜態は完全に残る。

「お願いしますにゃぁ。消してくださいにゃぁ」

 サキサキさんの願い。

 ですが、残念。

「残念なお知らせがあります。この罰ゲームは1週間続きます。このアーカイブ消した所で、あと1週間は猫語尾してもらいます」

『わああい』
『嬉しい』
『可愛いサキサキさん!』
『にゃあにゃあ、言ってほしい!』

 おお、コメント欄も嬉しがっておる。

「誰が『にゃあにゃあ』言うか! 嫌だ、嫌だ! やりたくないですぅ」

「言ってやれよ! にゃあにゃあって」

 からかって遊んでいる聡太さん。俺もからかおう、と思っていると、

 コメント欄に絵茶さんがいることに気づく。

『絵茶チャンネル : 私は変わり者か………覚えてろよ』

 このコメントだけ残して、それ以降出てきていない。

 まあ、いいっか。サキサキさん弄ろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そろそろ、終わりにしようかにゃ」

 最後になって、恥じらいを捨てたサキサキさん。

「ああ、オモロかった。こんなに弄れるなら今週ずっとコラボやる?」

「いや」

 即座に拒否する。

「まあ、だろうね。あんだけ弄ってたらそうなるわ」

 聡太さんの弄りは、控えめに言って引くほどだった。

 サキサキさんが語尾に「にゃあ」と付けるごとに、「にゃあにゃあうるせぇな」とか「猫が近くにいるのかな」とか「猫さんは静かにしようね」とか言って、かなり弄っていた。

「じゃあ、そろそろ落ちますか」

「そうですね、落ちますにゃ」

「了解。じゃあ!」

 サキサキさんと聡太さんは、配信しているため、最後まで付き合ってくれたリスナーさん達に挨拶をする。

 俺は配信していないので、これで終わろうかと思っていると、

「あ、えっちゃんが来た」

 サキサキさんの配信は、ミュートにしてコメント欄が見れるようにしている。

 どんなコメントしてるか気になり、サキサキさんのコメント欄から絵茶さんのコメントを探す。

 あった。ええっと、なになに、

『絵茶チャンネル : 罰ゲームをかけて勝負しよう。私とサキサキちゃん、もう1人助っ人を呼んで3人。そっちは滝さんと聡太さんと野良で3人。合計ダメージで』

 なんて言う旨みのない勝負だろう。

 俺達がやるメリットがない勝負だ。

『絵茶チャンネル : もし、私たちが負けたら、1週間はこのまま猫語尾、更にもう1週間は赤ちゃん言葉で、更に更にもう1週間はあざとい声で配信をする。勝った場合は猫語尾なし。そして、あなた達は1週間言うことを聞く』

 ふっ、残念だったね。俺はやる気はないよ、その勝負。

 しかも、負けた時の『なんでも言うことを聞く』って結構重くない? あれ、俺の感覚が間違ってるのかな?

 聡太さんだって同じ考えの、

「よし、やってやろう」

 あ、あれ? やるの?

「よし、やってやろう!」

 なんでそんなやる気なの? 俺全然やる気ないんだけど。

『絵茶チャンネル : 首を洗って待ってるといい。勝負は明日。これでどうだ』

「いいだろう、明日の13時から16時の間で1番いいダメージ量をスクショして、Twitterにあげる。これでどうだ」

『絵茶チャンネル : 合計ダメージ量で勝負。それならいい』

「オーケイ。それでじゃあ、腕を磨くんだな、今のうちにな」

『絵茶チャンネル : 恥かきたくなかったら、お前もな』

 こうして、当事者である俺とサキサキさんは置いて行かれた上、強制的に勝負する羽目になった。

 さて、嫌な予感がするのは俺だけなんだろうか。

 
 

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