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生配信8 余計なこと言わなければいいのに
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『遅刻か?』
『予定より15分経ちました!』
『滝、寝坊か?』
「あーあー、おまたせしました!」
『寝坊か?』
『寝坊じゃね』
『機材トラブルかも』
『そっちかもな』
現在13時15分と、15分遅れで昼配信を開始。コメント欄では俺が遅刻した理由を推測し、当てようとしている。
遅刻した理由は話すべきだろうか? いや、話すべきだろうな。
「どうも、滝です。ゲーム配信をする前に、ええ、すみません。遅刻しました!」
『何があった?』
『いいよ』
『そんな日もある』
素直に謝り、訳を説明する。
「実は今日、9時ぐらいから起きていたんですよ。もちろん、朝のね。でね、今日の配信は格ゲー、やるタイトルは『DOA6』なんですけど、少し練習してから配信に挑もうと思って、練習を今の今までやっていたんです。言いたいこと、分かるかな?」
『あーね』
『なるほど』
『つまり』
察しのいいリスナーさん達は、俺の状況を把握する。そうなのだ、
「練習に夢中になってて、時間見たら13時5分。配信予定の時間を過ぎていて、慌てて配信用意してたらこの時間になってしまいました」
配信時間を忘れ、ゲームに夢中になってしまっていたのだ。
「誠に申し訳ございません! 昼配信3回目にして、この体たらく。今後このようなことが無いように、励んでいきます」
『仕方ないよ』
『夢中になったなら仕方ない』
『配信始めようぜ』
ああ、なんて優しいリスナーさん達。コメント欄に『言い訳はいい』『誠意を込めて謝って!』なんて文字はあるが、俺には見えない。
大半が許してくれているようなので、配信を始めて行こうかと思う。
「はい。じゃあ、気を取り直して」
1つ深呼吸して、
「どうも、今日もゲーム配信! 配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です。早速、『DOA6』をやって行こうと思います!」
『待ってました!』
『888888』
『パチパチ』
先ほどまでやっていた、『DOA6』の画面を配信画面に出す。
「どうですか? 配信画面変わりました?」
『変わった!』
『音少し大きい!』
『マイクが大きいかも』
「マイクが大きい? ちょっとお待ちよ」
慌てて配信用意したせいで、マイクの音量調整が出来ていなかったようだ。少し音量を下げ、「あー、あー」と声を出し、調節する。
「これでどう? 大丈夫?」
『大丈夫!』
『丁度いい!』
『いい感じ』
リスナーさん達のオーケイが出たので、今日の配信内容を説明をしていく。
「前回、『スマブラ』配信をしたと思うのですが、今回は『DOA6』配信です。つまり、リスナー参加型対戦配信をして行こうと思ってます!」
『ピーチ姫ね』
『ああ、ピーチ姫』
『4連敗』
「誰もその話はしてませんよ。ピーチ姫って何? それ美味しいの?」
苦い記憶は犬の餌にするので、俺は全く覚えていない。ピンクのドレスを着た、キノピオを盾としか思わない女なんて俺は覚えていない!
「画面も音量も大丈夫なようなので配信を進めていきます。配信画面にも出ていると思いますが、ルームはもう作ってあります。ルームIDはこちら」
配信画面にルームIDを表示。
『今、DOA起動中』
『ちょっとお待ち』
『入って大丈夫?』
「はい、入ってきても構いません。起動中の方はね、そのまま頑張って起動させておいていください。じゃあ、格ゲー配信をするに当たっての注意事項を説明していきますね」
『スマブラ』配信同様、同じルールを言っていく。
「ルームの制限人数は15人。対戦は1回のみです。『DOA』は再戦機能があるのですが、再戦はしません」
『DOA6』のルールマッチは再戦機能があり、同じ相手と3戦出来る。でも、今回は多くの人と対戦していきたいので、再戦機能は使わない。
「一通り終わったら、15人の方はルーム出ていただいて、見る方に回ってください。対戦中、俺の悪口はコメント欄で呟いても構いません。しかし、相手側の悪口は一切認めません」
『了解』
『自分の悪口はいいんだ』
『ピーチに負けた滝!』
早速悪口を書き込んだ奴がいやがる。まあ、それは無視しよう。
「でね、今日は遅刻したお詫びに、配信時間を少し伸ばそうと思っていて、3時間から4時間に変更します。4時間付き合ってくれたら幸いです」
『おおおおお!』
『マジか』
『8888888』
配信が延びることを喜んでくれているコメントが流れる。中には、
「『いつも5分ぐらい遅刻してくれないかな』………何言っているんですかね、この人。今日はたまたま遅刻しただけです。わざと遅刻はしません」
延びて欲しいのだろうが、わざと遅刻はしない。信用度が落ちる、俺の。
『確かに』や『配信伸びるのは嬉しい』などのコメントが目に入るが、残念ながらあまり延ばすことはしない。
「じゃあ、早速やっていきますか!」
ゲーム画面を見ると、すでに15人のリスナーさん達が待機中。それぞれが使うキャラも、見えている。
もちろん、俺のも。
『ティナか』
『ティナ好きなの?』
『巨乳好きか?』
『アメリカ生まれの金髪巨乳だもんな』
『なぜ、ティナ?』
俺が使うのはティナ。格闘スタイルがプロレスで、投げ技とホールドが強み。コメント欄にあるように、ティナはアメリカ生まれの金髪巨乳美女。
「ティナにした理由? んん、それは強いからだよ」
『はいはい、本音は?』
『それは建前』
『本音は』
「いいよね、金髪巨乳の美女とか。しかもプロレスだよ! 死んでもいいから、ティナの技受けてみたい」
建前と本音を答える。
男なら分かってくれるはずだ。金髪巨乳美女の良さを。
『まあ確かに』
『洋物か』
『洋物好きか』
「『洋物好き』? はて、この人達は何の話をしているのでしょうかね?」
何の話をしているのか分かってはいるが、とぼける。とぼけながら、1戦目の相手が使うキャラを見る。
「マリーか」
相手が選んだキャラは、マリー・ローズ。『DOA』で1番人気のあるキャラクターで、ゴスロリが似合う金髪ロリっ子。格闘スタイルは、ロシアの軍隊格闘術システマ。
このマリーは、使う人が上手ければめちゃくちゃ強いキャラだ。
最初の対戦キャラとしては、重い。
『マリー可愛い』
『マジ、天使』
『いや、小悪魔な』
マリーは小悪魔キャラとして、キャラ設定がされている。でも、
「天使っていう意見に賛成できちゃうほど、可愛いよね。マリー」
マリー、マジ天使。ティナとは違う方面の可愛さがある。
『ロリコン』
『通報しました』
『バンされろw』
「誰がロリコンじゃ! マリーを可愛いと思えない男は、アレを切り落とせ!」
1戦目、ティナ対マリーが戦いが始まる。お互いのキャラがステージに立ち、それぞれの台詞をいう。
『うわ』
『どっちとも課金コスw』
『全部集めた?』
リスナーさん達のコメント通り、俺のティナと相手のマリーのコスチュームは、課金によって手に入れたコスチュームだ。
現在、ティナは海賊の衣装。相手のマリーはウェディングドレス。
「うん、ティナのコスチュームはね、全部集めた。全部可愛かったから」
リスナーの質問にすぐさま答える。
お互いのキャラが台詞を言い終わり、戦いの合図が来る。
Get Ready
俺はマリーから少し距離を置く。マリーはパンチやキックの出だしが早いためだ。
「対戦中はコメント読めません。よろしく」
Fight
この言葉で戦いの火蓋が切られた。
初手、近づいてきたマリーにティナの上段蹴りが当たる。
マリーは身長が小さいため、射程距離が短い。対してティナの射程距離は中距離と、ある程度距離を取れば打撃が入る。
だが、打撃が入ったところで火力が弱いため、あまりダメージが入らない。そこで、打撃から派生する投げ技だ。
「どうだ、ロリっ子!」
技が上手く決まり、仰け反らせる。仰け反ったマリーに近づき、容赦なく投げ技をかけるティナ。
投げ技を2回食らったことにより、相手のHP3分の1を削る。
「よしゃ、このまま!」
優勢のまま対戦は続き、勝敗が決まる。
「おし、1戦目勝ち」
『勝ち!』
『勝ち!』
『勝ち!』
「次は誰じゃ!」
次の対戦相手の使うキャラの顔を見て、俺は絶句。
「レイファンかよ」
このレイファンというキャラは、相手の攻撃を捌き、いなして攻撃してくる。近接攻撃を得意とし、打撃系の派生がエグいほど多い。また攻撃コンボが始まってしまうと、HPの半分持っていかれる。
ちなみレイファンは、中国生まれの太極拳の使い手。編み込んだツインテールが特徴の美女。
『レイファンか』
『負けかな?』
『相手のプレイスキルによるな』
リスナーさん達もレイファンの強さを分かっているようで、相手のプレイスキル次第で勝敗が決まる。
「大丈夫。ティナなら勝てる!」
そう自分に言い聞かせるのだが、
「エグいエグい! 無理無理無理!」
相手のプレイスキルは相当なもので、瞬殺される。
打撃コンボでハメ殺し。何度かホールドでカウンターが決まったものの、投げ技まで繋ぐことができず、相手にほとんどダメージを与えることが出来なかった。
2戦目、ティナ対レイファン。惨敗。
「次行こう!」
気を取り直して、3戦目。
「おりゃ、食いたがれ!」
「どうしたんですかぁ? 当たってませんよ」
「うぐぅ、いいパンチ出すじゃねぇか」
3戦目は惜しくも負け、『煽ってるから負けんだぞ』とリスナーさんに言われる。
4戦目から8戦目までは楽々に勝つことができ、9戦目は惨敗。ひたすら対戦をし、15戦目。
「次は誰じゃ!」
相手が使うキャラは、1戦目で闘ったマリー・ローズ。
『マリーちゃん!』
『マリーちゃん、頑張れ』
『マリー、結婚して!』
おいおいおい。おかしいでしょ、リスナーさん達? ティナを応援しなさいよ!
コメント欄にはティナのテ文字も出てこない。全部、マリー。
これは痛めつけなくちゃいけませんね。マリーファンには悪いが、ここで彼女は死ぬ。
あえてコメント欄には触れず、そのまま対戦へと進む。
Get Ready
さあ、血祭りの時間だ。
Fight
「これでも食らえ!」
開始早々、タックルからのジャイアントスイング。投げられたマリーはリングの壁に激突し、床に倒れ込む。
「そこだぁあ!」
床に倒れているマリー目掛けて、追撃のエルボードロップ。
「まだまだぁああ!」
無抵抗なマリーに、俺はどんどん技を掛けていく。
「どうしたよ、このままじゃあパーフェクト勝利決めちゃいますよ!」
いろんな技を掛けて、マリーをボコボコにする。そこであることに気づく。
こいつ、ワザと食らってねぇ?
嫌な予感がし、マリーのHPを速攻で削り、コメント欄を見る。すると、
『うわぁ』
『やってんな、こいつ』
『無抵抗な少女に』
『最低だなw』
案の定、俺に対して辛辣な言葉を浴びせてくるリスナーさん達。
確かに無抵抗な少女に、俺は多くの技を掛けた。でも、これは格ゲーだ。弱い奴は淘汰され、強いものだけが生き残れる。
そのことをリスナーさん達に伝えると、
『だからって、ボコボコにする?』
『滝の性癖ヤバ』
『リョ○か』
『キツい性癖してんなw』
変な性癖をつけられた。
「違うって言ってんじゃん! これは対戦だよ? 何もしないで棒立ちしてる奴が悪くない?」
『はいはい』
『通報しました』
『ロリコンでリョ○好きか』
『死ななきゃ治らなそう』
「クソぉ! 何言っても無駄か!」
訂正しようにも聞く耳持たないため、コメント欄を少し無視する。
15人目が終わり、次の対戦相手15人をルームに呼ぶ。
「はい、今の15人のリスナーさん達はすぐに抜けて、次の15人のリスナーさん達入ってきてください」
呼びかけをすると、15人が抜けた瞬間に次の15人が入ってくる。
「はい、15人のリスナーさん達、宜しくお願いします」
入ってきた15人のリスナーさん達。全員の使うキャラを見ると、
「ふふふふっ、そう来たか」
全員、マリー・ローズ。
『全員マリーw』
『ロリコン天国で草』
『クローンやん笑』
『草』『草』『草』『草』
いやぁ、まさか、すぐに対応してくるとは思っても見なかった。何人かはマリーにすると予想はできてたけど、全員とは。対応が早すぎ。
ところでなんだが、このマリー集団に1つ質問がある。
「ちなみに聞くけど、この全員マリー使えるんだよね? さっきみたいに棒立ちしてるマリーが、この中に2人でもいたらルーム変更して、次の人達に対戦権あげちゃうからね」
『まあ、そうだよな』
『対戦の意味ないしな』
『早く変わってくれ!』
『マリー変われ!』
さっきの棒立ちマリーは仕方がない。もしかしたら、回線の問題で動かなかったのかもしれないし、親とかに呼ばれて動けなかったのかもしれない。
しかし、この棒立ちマリーが2人3人と出てきたら、それはワザとと判断するしかない。多くの人と対戦したい俺からしたら、操作しないリスナーさんとは対戦したくない。
なので、予防策を設けといた。
「じゃあ、16人目の人、対戦しましょうか」
16戦目、ティナ対マリー。
Get Ready
お互いが距離を取る。
Fight
「よしゃ、いくぜ」
お互いが距離を取ったおかげで、ティナの走りながら使える蹴り技、アローキック(飛び蹴り)が出せる。
「食らえぇえええ!」
ティナを走らせ、蹴りのボタンを押す。アローキックがマリーを襲う。はずが、
ひょいっと、とマリーは言いながらアローキックをいとも簡単に避けてしまう。
「うそ、あれ?」
避けられ、隙を見せたティナに、容赦なく襲い掛かるマリー。
「あ、あ、あ! 待て待て、まだ行ける」
マリーの即死級コンボが入る前に、ガードで防ぐ。防いだのだが、ティナのHPは半分を切り、相手はまだ1ダメージも食らってない。
「ここからが勝負よ!」
そう息巻いたものの攻撃をするたびに、ひょいっと、と完璧に避けられ、HPを削ることができなかった。またしても惨敗。
『マリーの復讐』
『さっきのマリーの復讐だw』
『このマリーつよ!』
『全員強かったらどうする?』
「全員強かったら? そっちの方が面白くない? 俺はどこまで行けるのか知りたいじゃん!」
格ゲーの面白いところは、強いプレイヤーに自分がどこまで通用するか、だと思う。
だから、自分より強い人と対戦できたら嬉しい。まだ強くなれるから。
「次のマリー行こうか!」
本日4戦目の17人目の人と戦う。さっきの16戦目の人と違い、マリーの扱いには慣れてなさそうなプレイ。
うん、確実にノリだけで選んだな。
そんな人に情けをかけるほど甘くないので、速攻で終わらせる。
『このマリー弱弱』
『………マリー』
『このマリーはノリだな』
「はい、対戦相手の悪口は言わないように」
弱いとかも、一応悪口と認識しているため、注意をする。でもまあ、
「この人の得意なキャラで勝負したかったな。使い慣れてないキャラじゃなくて」
少し残念だ。
次々にマリーと戦っていると、ほとんどの人がノリでマリーを選んでいたことが分かる。使い慣れているキャラとして選んでいたのは15人の内3人だけ。
3人の使うマリーは、マジで強かった。手も足も出ない感じ。再戦したい気持ちを抑えて、次の15人を呼ぶ。
「次の15人いらっしゃーい!」
早いもん順で、次の15人がルームへ入ってくる。
今度は、お巫山戯は無さそう。リスナーさん同士で被ったキャラはおらず、俺と31人目の対戦相手が被ったぐらい。
「ティナいるやん! いいセンスしてんね」
自分と同じキャラを使っているリスナーさんがいることに、少し親近感が湧いた。
『初ティナ!』
『ティナ対ティナ』
『他に好きなキャラは?』
『使うのティナだけ?』
ティナ対ティナの対戦が楽しみの中、コメント欄に俺に対する質問があったため、少し雑談タイムを取る。
「他に使うキャラ………こころちゃんくらい?」
『八極拳の』
『日本人だったよね』
『胸か』
『黒髪美人』
「そうそう、八極拳使いの日本人女性。確か、学生さんだよね?」
『学生兼舞妓さん』
『胸か、胸だろ?』
『おパイ好きめ』
「へぇ、舞妓なんだ。ってか、胸胸うるせぇな! おパイ好きだよ、悪いかよ」
男なんだから胸が好きなのは仕方ない。あればあるだけ良いんだから。まあ、無くても良いんだけどね、それはそれで。
『俺も胸好き』
『大きい派』
『小さいのは嫌いですか?』
『小さい派!』
「小ぶりなおパイも大好きです。手にちょうど収まるくらいが、なお良い」
堂々と配信に載せて言うことではないが、俺の名誉のために言っておく。だって、滝は巨乳好き、って偏見持たれるの嫌だし。
なんて胸について話していると、
『サキサキチャンネル : なんて話をしてるんだ』
サキサキさんに聞かれていた。
『サキサキさんw』
『サキサキさんじゃん!』
『聞かれてて草』
『怒ってるじゃん』
ええ、これ怒ってんの? ってか、サキサキさんはいつから見てたの?
どこから聞いていたのか、聞いてみると、
『サキサキチャンネル : マリーちゃん?を虐めてるところから』
ああ、そこから。じゃあ、最初の『洋物好き』とか『ロリコン』とかの件は知らない。それはそれで良かった。
「はい、サキサキさんが見ているので、対戦に入っていきたいと思い『サキサキチャンネル : 巨乳派? 貧乳派? どっち』うん、どっちもはいけない感じかな? サキサキさん」
『追求w』
『どっちかハッキリさせろ!』
『サキサキチャンネル : ハッキリしてくれないと、今後のコラボに支障が………』
うんん、マジか。これは言わなきゃいけないのね。でも、これ言ったらさ、サキサキさんの胸の大きさ言うことになるけど良いのかな? ………聞いてみるか。
「サキサキさん、これ言ったらサキサキさんの胸の大きさ言うことになるんですけど良いんですか?」
サキサキさんとは1度会ったことがあるため、シルエットを覚えている。
『サキサキチャンネル : 大丈夫。配信でも言ってるけど、私は貧乳に誇りを持ってるからw』
『俺、貧乳派に鞍替えするわ』
『俺は元より貧乳派』
『貧乳派に入りました』
どうやら彼女は貧乳であることを公開しているようだ。それにしても、リスナーの掌返し凄く早いな。
まあ、じゃあ、ご機嫌取りでもしときますかな。コラボに支障きたすって言ってるし。
「自分も貧乳派ですね」
俺がそう言うと思っての行動だろう。
『え? 配信の最初に金髪巨乳が良いって言ってたじゃん』
俺が言った途端に、1人のリスナーさんがコメントを送ってくる。
『そういえば言ってた』
『ティナの好きなところは、金髪巨乳だって』
『あっ、嘘ついた?』
『サキサキチャンネル : へぇ、嘘ついたんだ。本当は巨乳派と』
「違う違う! ああ、えっと」
どう言い訳をしようかと、言葉を探していると、
『サキサキチャンネル : 言い淀んでいる時点で終わり。もう説教だ』
話は、サキサキさんによって終わらせられる。
もう取りつく島がない。
『サキサキチャンネル : 貧乳の何がいいか、この配信後2時間かけて説教します。覚えといてください』
配信後2時間とか、長い長い。
「はあ、リスナーさん達のせいで説教じゃん」
本当に説教されるか怪しいが、リスナーさんのせいにしとく。
『頑張って』
『裏山』
『死んで』
多数のリスナーさんから嫉妬混じりのコメントが送られてくる。
リスナーさん達も余計なこと言わなければいいのに、とこの配信時間の間、ずっと思っているのであった。
『予定より15分経ちました!』
『滝、寝坊か?』
「あーあー、おまたせしました!」
『寝坊か?』
『寝坊じゃね』
『機材トラブルかも』
『そっちかもな』
現在13時15分と、15分遅れで昼配信を開始。コメント欄では俺が遅刻した理由を推測し、当てようとしている。
遅刻した理由は話すべきだろうか? いや、話すべきだろうな。
「どうも、滝です。ゲーム配信をする前に、ええ、すみません。遅刻しました!」
『何があった?』
『いいよ』
『そんな日もある』
素直に謝り、訳を説明する。
「実は今日、9時ぐらいから起きていたんですよ。もちろん、朝のね。でね、今日の配信は格ゲー、やるタイトルは『DOA6』なんですけど、少し練習してから配信に挑もうと思って、練習を今の今までやっていたんです。言いたいこと、分かるかな?」
『あーね』
『なるほど』
『つまり』
察しのいいリスナーさん達は、俺の状況を把握する。そうなのだ、
「練習に夢中になってて、時間見たら13時5分。配信予定の時間を過ぎていて、慌てて配信用意してたらこの時間になってしまいました」
配信時間を忘れ、ゲームに夢中になってしまっていたのだ。
「誠に申し訳ございません! 昼配信3回目にして、この体たらく。今後このようなことが無いように、励んでいきます」
『仕方ないよ』
『夢中になったなら仕方ない』
『配信始めようぜ』
ああ、なんて優しいリスナーさん達。コメント欄に『言い訳はいい』『誠意を込めて謝って!』なんて文字はあるが、俺には見えない。
大半が許してくれているようなので、配信を始めて行こうかと思う。
「はい。じゃあ、気を取り直して」
1つ深呼吸して、
「どうも、今日もゲーム配信! 配信者はお馴染みTakiチャンネルの滝です。早速、『DOA6』をやって行こうと思います!」
『待ってました!』
『888888』
『パチパチ』
先ほどまでやっていた、『DOA6』の画面を配信画面に出す。
「どうですか? 配信画面変わりました?」
『変わった!』
『音少し大きい!』
『マイクが大きいかも』
「マイクが大きい? ちょっとお待ちよ」
慌てて配信用意したせいで、マイクの音量調整が出来ていなかったようだ。少し音量を下げ、「あー、あー」と声を出し、調節する。
「これでどう? 大丈夫?」
『大丈夫!』
『丁度いい!』
『いい感じ』
リスナーさん達のオーケイが出たので、今日の配信内容を説明をしていく。
「前回、『スマブラ』配信をしたと思うのですが、今回は『DOA6』配信です。つまり、リスナー参加型対戦配信をして行こうと思ってます!」
『ピーチ姫ね』
『ああ、ピーチ姫』
『4連敗』
「誰もその話はしてませんよ。ピーチ姫って何? それ美味しいの?」
苦い記憶は犬の餌にするので、俺は全く覚えていない。ピンクのドレスを着た、キノピオを盾としか思わない女なんて俺は覚えていない!
「画面も音量も大丈夫なようなので配信を進めていきます。配信画面にも出ていると思いますが、ルームはもう作ってあります。ルームIDはこちら」
配信画面にルームIDを表示。
『今、DOA起動中』
『ちょっとお待ち』
『入って大丈夫?』
「はい、入ってきても構いません。起動中の方はね、そのまま頑張って起動させておいていください。じゃあ、格ゲー配信をするに当たっての注意事項を説明していきますね」
『スマブラ』配信同様、同じルールを言っていく。
「ルームの制限人数は15人。対戦は1回のみです。『DOA』は再戦機能があるのですが、再戦はしません」
『DOA6』のルールマッチは再戦機能があり、同じ相手と3戦出来る。でも、今回は多くの人と対戦していきたいので、再戦機能は使わない。
「一通り終わったら、15人の方はルーム出ていただいて、見る方に回ってください。対戦中、俺の悪口はコメント欄で呟いても構いません。しかし、相手側の悪口は一切認めません」
『了解』
『自分の悪口はいいんだ』
『ピーチに負けた滝!』
早速悪口を書き込んだ奴がいやがる。まあ、それは無視しよう。
「でね、今日は遅刻したお詫びに、配信時間を少し伸ばそうと思っていて、3時間から4時間に変更します。4時間付き合ってくれたら幸いです」
『おおおおお!』
『マジか』
『8888888』
配信が延びることを喜んでくれているコメントが流れる。中には、
「『いつも5分ぐらい遅刻してくれないかな』………何言っているんですかね、この人。今日はたまたま遅刻しただけです。わざと遅刻はしません」
延びて欲しいのだろうが、わざと遅刻はしない。信用度が落ちる、俺の。
『確かに』や『配信伸びるのは嬉しい』などのコメントが目に入るが、残念ながらあまり延ばすことはしない。
「じゃあ、早速やっていきますか!」
ゲーム画面を見ると、すでに15人のリスナーさん達が待機中。それぞれが使うキャラも、見えている。
もちろん、俺のも。
『ティナか』
『ティナ好きなの?』
『巨乳好きか?』
『アメリカ生まれの金髪巨乳だもんな』
『なぜ、ティナ?』
俺が使うのはティナ。格闘スタイルがプロレスで、投げ技とホールドが強み。コメント欄にあるように、ティナはアメリカ生まれの金髪巨乳美女。
「ティナにした理由? んん、それは強いからだよ」
『はいはい、本音は?』
『それは建前』
『本音は』
「いいよね、金髪巨乳の美女とか。しかもプロレスだよ! 死んでもいいから、ティナの技受けてみたい」
建前と本音を答える。
男なら分かってくれるはずだ。金髪巨乳美女の良さを。
『まあ確かに』
『洋物か』
『洋物好きか』
「『洋物好き』? はて、この人達は何の話をしているのでしょうかね?」
何の話をしているのか分かってはいるが、とぼける。とぼけながら、1戦目の相手が使うキャラを見る。
「マリーか」
相手が選んだキャラは、マリー・ローズ。『DOA』で1番人気のあるキャラクターで、ゴスロリが似合う金髪ロリっ子。格闘スタイルは、ロシアの軍隊格闘術システマ。
このマリーは、使う人が上手ければめちゃくちゃ強いキャラだ。
最初の対戦キャラとしては、重い。
『マリー可愛い』
『マジ、天使』
『いや、小悪魔な』
マリーは小悪魔キャラとして、キャラ設定がされている。でも、
「天使っていう意見に賛成できちゃうほど、可愛いよね。マリー」
マリー、マジ天使。ティナとは違う方面の可愛さがある。
『ロリコン』
『通報しました』
『バンされろw』
「誰がロリコンじゃ! マリーを可愛いと思えない男は、アレを切り落とせ!」
1戦目、ティナ対マリーが戦いが始まる。お互いのキャラがステージに立ち、それぞれの台詞をいう。
『うわ』
『どっちとも課金コスw』
『全部集めた?』
リスナーさん達のコメント通り、俺のティナと相手のマリーのコスチュームは、課金によって手に入れたコスチュームだ。
現在、ティナは海賊の衣装。相手のマリーはウェディングドレス。
「うん、ティナのコスチュームはね、全部集めた。全部可愛かったから」
リスナーの質問にすぐさま答える。
お互いのキャラが台詞を言い終わり、戦いの合図が来る。
Get Ready
俺はマリーから少し距離を置く。マリーはパンチやキックの出だしが早いためだ。
「対戦中はコメント読めません。よろしく」
Fight
この言葉で戦いの火蓋が切られた。
初手、近づいてきたマリーにティナの上段蹴りが当たる。
マリーは身長が小さいため、射程距離が短い。対してティナの射程距離は中距離と、ある程度距離を取れば打撃が入る。
だが、打撃が入ったところで火力が弱いため、あまりダメージが入らない。そこで、打撃から派生する投げ技だ。
「どうだ、ロリっ子!」
技が上手く決まり、仰け反らせる。仰け反ったマリーに近づき、容赦なく投げ技をかけるティナ。
投げ技を2回食らったことにより、相手のHP3分の1を削る。
「よしゃ、このまま!」
優勢のまま対戦は続き、勝敗が決まる。
「おし、1戦目勝ち」
『勝ち!』
『勝ち!』
『勝ち!』
「次は誰じゃ!」
次の対戦相手の使うキャラの顔を見て、俺は絶句。
「レイファンかよ」
このレイファンというキャラは、相手の攻撃を捌き、いなして攻撃してくる。近接攻撃を得意とし、打撃系の派生がエグいほど多い。また攻撃コンボが始まってしまうと、HPの半分持っていかれる。
ちなみレイファンは、中国生まれの太極拳の使い手。編み込んだツインテールが特徴の美女。
『レイファンか』
『負けかな?』
『相手のプレイスキルによるな』
リスナーさん達もレイファンの強さを分かっているようで、相手のプレイスキル次第で勝敗が決まる。
「大丈夫。ティナなら勝てる!」
そう自分に言い聞かせるのだが、
「エグいエグい! 無理無理無理!」
相手のプレイスキルは相当なもので、瞬殺される。
打撃コンボでハメ殺し。何度かホールドでカウンターが決まったものの、投げ技まで繋ぐことができず、相手にほとんどダメージを与えることが出来なかった。
2戦目、ティナ対レイファン。惨敗。
「次行こう!」
気を取り直して、3戦目。
「おりゃ、食いたがれ!」
「どうしたんですかぁ? 当たってませんよ」
「うぐぅ、いいパンチ出すじゃねぇか」
3戦目は惜しくも負け、『煽ってるから負けんだぞ』とリスナーさんに言われる。
4戦目から8戦目までは楽々に勝つことができ、9戦目は惨敗。ひたすら対戦をし、15戦目。
「次は誰じゃ!」
相手が使うキャラは、1戦目で闘ったマリー・ローズ。
『マリーちゃん!』
『マリーちゃん、頑張れ』
『マリー、結婚して!』
おいおいおい。おかしいでしょ、リスナーさん達? ティナを応援しなさいよ!
コメント欄にはティナのテ文字も出てこない。全部、マリー。
これは痛めつけなくちゃいけませんね。マリーファンには悪いが、ここで彼女は死ぬ。
あえてコメント欄には触れず、そのまま対戦へと進む。
Get Ready
さあ、血祭りの時間だ。
Fight
「これでも食らえ!」
開始早々、タックルからのジャイアントスイング。投げられたマリーはリングの壁に激突し、床に倒れ込む。
「そこだぁあ!」
床に倒れているマリー目掛けて、追撃のエルボードロップ。
「まだまだぁああ!」
無抵抗なマリーに、俺はどんどん技を掛けていく。
「どうしたよ、このままじゃあパーフェクト勝利決めちゃいますよ!」
いろんな技を掛けて、マリーをボコボコにする。そこであることに気づく。
こいつ、ワザと食らってねぇ?
嫌な予感がし、マリーのHPを速攻で削り、コメント欄を見る。すると、
『うわぁ』
『やってんな、こいつ』
『無抵抗な少女に』
『最低だなw』
案の定、俺に対して辛辣な言葉を浴びせてくるリスナーさん達。
確かに無抵抗な少女に、俺は多くの技を掛けた。でも、これは格ゲーだ。弱い奴は淘汰され、強いものだけが生き残れる。
そのことをリスナーさん達に伝えると、
『だからって、ボコボコにする?』
『滝の性癖ヤバ』
『リョ○か』
『キツい性癖してんなw』
変な性癖をつけられた。
「違うって言ってんじゃん! これは対戦だよ? 何もしないで棒立ちしてる奴が悪くない?」
『はいはい』
『通報しました』
『ロリコンでリョ○好きか』
『死ななきゃ治らなそう』
「クソぉ! 何言っても無駄か!」
訂正しようにも聞く耳持たないため、コメント欄を少し無視する。
15人目が終わり、次の対戦相手15人をルームに呼ぶ。
「はい、今の15人のリスナーさん達はすぐに抜けて、次の15人のリスナーさん達入ってきてください」
呼びかけをすると、15人が抜けた瞬間に次の15人が入ってくる。
「はい、15人のリスナーさん達、宜しくお願いします」
入ってきた15人のリスナーさん達。全員の使うキャラを見ると、
「ふふふふっ、そう来たか」
全員、マリー・ローズ。
『全員マリーw』
『ロリコン天国で草』
『クローンやん笑』
『草』『草』『草』『草』
いやぁ、まさか、すぐに対応してくるとは思っても見なかった。何人かはマリーにすると予想はできてたけど、全員とは。対応が早すぎ。
ところでなんだが、このマリー集団に1つ質問がある。
「ちなみに聞くけど、この全員マリー使えるんだよね? さっきみたいに棒立ちしてるマリーが、この中に2人でもいたらルーム変更して、次の人達に対戦権あげちゃうからね」
『まあ、そうだよな』
『対戦の意味ないしな』
『早く変わってくれ!』
『マリー変われ!』
さっきの棒立ちマリーは仕方がない。もしかしたら、回線の問題で動かなかったのかもしれないし、親とかに呼ばれて動けなかったのかもしれない。
しかし、この棒立ちマリーが2人3人と出てきたら、それはワザとと判断するしかない。多くの人と対戦したい俺からしたら、操作しないリスナーさんとは対戦したくない。
なので、予防策を設けといた。
「じゃあ、16人目の人、対戦しましょうか」
16戦目、ティナ対マリー。
Get Ready
お互いが距離を取る。
Fight
「よしゃ、いくぜ」
お互いが距離を取ったおかげで、ティナの走りながら使える蹴り技、アローキック(飛び蹴り)が出せる。
「食らえぇえええ!」
ティナを走らせ、蹴りのボタンを押す。アローキックがマリーを襲う。はずが、
ひょいっと、とマリーは言いながらアローキックをいとも簡単に避けてしまう。
「うそ、あれ?」
避けられ、隙を見せたティナに、容赦なく襲い掛かるマリー。
「あ、あ、あ! 待て待て、まだ行ける」
マリーの即死級コンボが入る前に、ガードで防ぐ。防いだのだが、ティナのHPは半分を切り、相手はまだ1ダメージも食らってない。
「ここからが勝負よ!」
そう息巻いたものの攻撃をするたびに、ひょいっと、と完璧に避けられ、HPを削ることができなかった。またしても惨敗。
『マリーの復讐』
『さっきのマリーの復讐だw』
『このマリーつよ!』
『全員強かったらどうする?』
「全員強かったら? そっちの方が面白くない? 俺はどこまで行けるのか知りたいじゃん!」
格ゲーの面白いところは、強いプレイヤーに自分がどこまで通用するか、だと思う。
だから、自分より強い人と対戦できたら嬉しい。まだ強くなれるから。
「次のマリー行こうか!」
本日4戦目の17人目の人と戦う。さっきの16戦目の人と違い、マリーの扱いには慣れてなさそうなプレイ。
うん、確実にノリだけで選んだな。
そんな人に情けをかけるほど甘くないので、速攻で終わらせる。
『このマリー弱弱』
『………マリー』
『このマリーはノリだな』
「はい、対戦相手の悪口は言わないように」
弱いとかも、一応悪口と認識しているため、注意をする。でもまあ、
「この人の得意なキャラで勝負したかったな。使い慣れてないキャラじゃなくて」
少し残念だ。
次々にマリーと戦っていると、ほとんどの人がノリでマリーを選んでいたことが分かる。使い慣れているキャラとして選んでいたのは15人の内3人だけ。
3人の使うマリーは、マジで強かった。手も足も出ない感じ。再戦したい気持ちを抑えて、次の15人を呼ぶ。
「次の15人いらっしゃーい!」
早いもん順で、次の15人がルームへ入ってくる。
今度は、お巫山戯は無さそう。リスナーさん同士で被ったキャラはおらず、俺と31人目の対戦相手が被ったぐらい。
「ティナいるやん! いいセンスしてんね」
自分と同じキャラを使っているリスナーさんがいることに、少し親近感が湧いた。
『初ティナ!』
『ティナ対ティナ』
『他に好きなキャラは?』
『使うのティナだけ?』
ティナ対ティナの対戦が楽しみの中、コメント欄に俺に対する質問があったため、少し雑談タイムを取る。
「他に使うキャラ………こころちゃんくらい?」
『八極拳の』
『日本人だったよね』
『胸か』
『黒髪美人』
「そうそう、八極拳使いの日本人女性。確か、学生さんだよね?」
『学生兼舞妓さん』
『胸か、胸だろ?』
『おパイ好きめ』
「へぇ、舞妓なんだ。ってか、胸胸うるせぇな! おパイ好きだよ、悪いかよ」
男なんだから胸が好きなのは仕方ない。あればあるだけ良いんだから。まあ、無くても良いんだけどね、それはそれで。
『俺も胸好き』
『大きい派』
『小さいのは嫌いですか?』
『小さい派!』
「小ぶりなおパイも大好きです。手にちょうど収まるくらいが、なお良い」
堂々と配信に載せて言うことではないが、俺の名誉のために言っておく。だって、滝は巨乳好き、って偏見持たれるの嫌だし。
なんて胸について話していると、
『サキサキチャンネル : なんて話をしてるんだ』
サキサキさんに聞かれていた。
『サキサキさんw』
『サキサキさんじゃん!』
『聞かれてて草』
『怒ってるじゃん』
ええ、これ怒ってんの? ってか、サキサキさんはいつから見てたの?
どこから聞いていたのか、聞いてみると、
『サキサキチャンネル : マリーちゃん?を虐めてるところから』
ああ、そこから。じゃあ、最初の『洋物好き』とか『ロリコン』とかの件は知らない。それはそれで良かった。
「はい、サキサキさんが見ているので、対戦に入っていきたいと思い『サキサキチャンネル : 巨乳派? 貧乳派? どっち』うん、どっちもはいけない感じかな? サキサキさん」
『追求w』
『どっちかハッキリさせろ!』
『サキサキチャンネル : ハッキリしてくれないと、今後のコラボに支障が………』
うんん、マジか。これは言わなきゃいけないのね。でも、これ言ったらさ、サキサキさんの胸の大きさ言うことになるけど良いのかな? ………聞いてみるか。
「サキサキさん、これ言ったらサキサキさんの胸の大きさ言うことになるんですけど良いんですか?」
サキサキさんとは1度会ったことがあるため、シルエットを覚えている。
『サキサキチャンネル : 大丈夫。配信でも言ってるけど、私は貧乳に誇りを持ってるからw』
『俺、貧乳派に鞍替えするわ』
『俺は元より貧乳派』
『貧乳派に入りました』
どうやら彼女は貧乳であることを公開しているようだ。それにしても、リスナーの掌返し凄く早いな。
まあ、じゃあ、ご機嫌取りでもしときますかな。コラボに支障きたすって言ってるし。
「自分も貧乳派ですね」
俺がそう言うと思っての行動だろう。
『え? 配信の最初に金髪巨乳が良いって言ってたじゃん』
俺が言った途端に、1人のリスナーさんがコメントを送ってくる。
『そういえば言ってた』
『ティナの好きなところは、金髪巨乳だって』
『あっ、嘘ついた?』
『サキサキチャンネル : へぇ、嘘ついたんだ。本当は巨乳派と』
「違う違う! ああ、えっと」
どう言い訳をしようかと、言葉を探していると、
『サキサキチャンネル : 言い淀んでいる時点で終わり。もう説教だ』
話は、サキサキさんによって終わらせられる。
もう取りつく島がない。
『サキサキチャンネル : 貧乳の何がいいか、この配信後2時間かけて説教します。覚えといてください』
配信後2時間とか、長い長い。
「はあ、リスナーさん達のせいで説教じゃん」
本当に説教されるか怪しいが、リスナーさんのせいにしとく。
『頑張って』
『裏山』
『死んで』
多数のリスナーさんから嫉妬混じりのコメントが送られてくる。
リスナーさん達も余計なこと言わなければいいのに、とこの配信時間の間、ずっと思っているのであった。
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